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ブロックチェーンは,インターネットに次ぐ革命と呼ばれているが,その活用例は,ICO(Initial Coin Offering,新規暗号資産発行による資金調達),DeFi(Decentralized Finance,分散型金融),NFT(Non-Fungible Token,非代替性トークン)など,市場の流れに合わせて進化してきた.その中でも新たに登場したDAO(Decentralized Autonomous Organization,分散型自律組織)は,暗号資産マーケットの枠を越えて,従来の組織の在り方を変革すると同時に,新たな社会システムの形成の可能性を切り開く手法として注目を集めている.本稿では,筆者の所属するフレームダブルオー株式会社が開発をリードする,DAOを構築するためのミドルウェアプロトコル「DEVプロトコル」と,DEVプロトコルが支援するトークン経済圏フレームワークについて解説するとともに,DAOがもたらす未来について探求する.
DAOとトークン経済圏の関係性は密接である.トークン経済圏とは,ブロックチェーン上でトークン(暗号資産)を用いて構築される経済的なエコシステムを指す.一方で,DAOとはそのトークン経済圏の形成において,運営方針の意思決定などのガバナンス(用語)を分散的に行う仕組みである.
トークン経済圏は,円やドルといった法定通貨ではなくトークンを用いて経済が循環し,プロジェクト(特定の目的,思想,商品やサービス)に価値を認めている人々のグループによって成立する.トークンは,そのグループの参加者が行う活動や貢献に応じた報酬として使用される.これにより,プロジェクトのユーザや投資家はそのプロジェクトに参加し,成果に応じてトークンを得ることができる.
一方,DAOはそのトークン経済圏の形成において役割を持つ.通常,DAOのガバナンスはトークン保有者に対して開かれており,トークンを保有する参加者はプロジェクトの運営方針や投票などの意思決定に参加できる.DAOはスマートコントラクト(用語)によって運営され,管理者が介在する必要や地理的な制約もなく,世界各地からトークン保有者が参加可能にプログラムされている.
昨今,DAOはプロジェクトの組織運営や意思決定の新しい方法として注目を集めているが,以前から近い組織形態として存在していたのがOSS(オープンソースソフトウェア)(用語)である.
OSSの場合,特定のソフトウェアを維持・発展するという共通の目的の下,ユーザや開発者が自発的に集まり,GitHubなどのコード管理プラットホーム上でコードを提出したり,翻訳やドキュメンテーションに貢献するなど,ソフトウェアを中心としたコミュニティが生まれている.共通の目的の下で,世界各地から参加者が集まるという点では,DAOと共通しているが,DAOとOSSの決定的な違いは組み込まれたインセンティブメカニズムの有無である.
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