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量子鍵配送(QKD: Quantum Key Distribution)は光子の量子力学的な性質を利用することで,物理学的に可能なあらゆる攻撃に対して安全な鍵共有を実現する技術である.本技術は,将来にわたり安全な暗号通信を実現するものとして注目を浴びているが,2拠点間でしか鍵共有ができない,鍵共有可能な距離が限られる,といった技術的な制約が存在している.この制約を克服するための一つの方策が,多拠点間をQKDリンクで結ぶ,QKDのネットワーク化である(図1).QKDネットワークでは,暗号鍵をQKDリンクで生成した暗号鍵で暗号化しながらネットワーク上を転送する,いわゆる「鍵リレー」により,1対のQKDリンクのみでは不可能な距離での鍵共有が可能になる.
QKDを,医療・金融・政府機関・通信インフラといったより幅広い分野で活用していくためには,ネットワークの大規模化が必須である.東芝は,大規模QKDネットワークにおける鍵共有を効率化する技術として,「大規模量子鍵配送ネットワーク技術」と「量子鍵配送高速化技術」を開発した.
図2(a)に「大規模量子鍵配送ネットワーク技術」の概要を示す.この技術は,自律分散制御の手法と集中管理の技術を組み合わせることで,QKDネットワークの制御を効率化する技術である.拠点間で鍵を共有する際,各拠点がもつ鍵が枯渇して鍵共有が断絶しないよう,最適な鍵リレー経路を自律分散的に決定するアルゴリズムを,インターネットで従来から利用されてきたアルゴリズムに基づき開発した.一方,適切な鍵共有先拠点と鍵共有量の算出には集中管理手法を用いた.「集中管理サーバ」を導入し,QKDネットワーク上の各拠点の鍵の要求量,使用履歴といった情報を収集し,それらに基づいて各拠点の鍵の交換相手拠点や交換量を最適化する.以上の技術により,ネットワークのスケーラビリティを確保しつつ各リンクにおける鍵量の減少や変動にも対応可能なネットワーク制御が可能となる.同社は,16拠点の模擬的なQKDネットワークにおいて,本技術の基本機能を実証した.
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