ニュース解説 グローバル規模の量子暗号通信の実現に向けた「大規模量子鍵配送ネットワーク制御技術」と「量子鍵配送高速化技術」を開発

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.108 No.2 (2025/2) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


最近の新聞等で報道された技術情報を深める ニュース解説

グローバル規模の量子暗号通信の実現に向けた「大規模量子鍵配送ネットワーク制御技術」と「量子鍵配送高速化技術」を開発

 量子鍵配送(QKD: Quantum Key Distribution)は光子の量子力学的な性質を利用することで,物理学的に可能なあらゆる攻撃に対して安全な鍵共有を実現する技術である.本技術は,将来にわたり安全な暗号通信を実現するものとして注目を浴びているが,2拠点間でしか鍵共有ができない,鍵共有可能な距離が限られる,といった技術的な制約が存在している.この制約を克服するための一つの方策が,多拠点間をQKDリンクで結ぶ,QKDのネットワーク化である(図1).QKDネットワークでは,暗号鍵をQKDリンクで生成した暗号鍵で暗号化しながらネットワーク上を転送する,いわゆる「鍵リレー」により,1対のQKDリンクのみでは不可能な距離での鍵共有が可能になる.

図1 量子鍵配送(QKD)ネットワークの概念

 QKDを,医療・金融・政府機関・通信インフラといったより幅広い分野で活用していくためには,ネットワークの大規模化が必須である.東芝は,大規模QKDネットワークにおける鍵共有を効率化する技術として,「大規模量子鍵配送ネットワーク技術」と「量子鍵配送高速化技術」を開発した.

 図2(a)に「大規模量子鍵配送ネットワーク技術」の概要を示す.この技術は,自律分散制御の手法と集中管理の技術を組み合わせることで,QKDネットワークの制御を効率化する技術である.拠点間で鍵を共有する際,各拠点がもつ鍵が枯渇して鍵共有が断絶しないよう,最適な鍵リレー経路を自律分散的に決定するアルゴリズムを,インターネットで従来から利用されてきたアルゴリズムに基づき開発した.一方,適切な鍵共有先拠点と鍵共有量の算出には集中管理手法を用いた.「集中管理サーバ」を導入し,QKDネットワーク上の各拠点の鍵の要求量,使用履歴といった情報を収集し,それらに基づいて各拠点の鍵の交換相手拠点や交換量を最適化する.以上の技術により,ネットワークのスケーラビリティを確保しつつ各リンクにおける鍵量の減少や変動にも対応可能なネットワーク制御が可能となる.同社は,16拠点の模擬的なQKDネットワークにおいて,本技術の基本機能を実証した.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。