
* 何も媒介するものがないように見える空間を通じて何かを伝える,その魅力に早くからとりつかれたのは,1874年にイタリアに生まれたグリエルモ・マルコーニでした.彼は幼少の頃から電気に興味を持ち,自宅の屋根裏で,無線電信の実験を繰り返したそうです.やがて屋外での無線通信に成功すると,1901年には数千キロに及ぶ大西洋横断無線通信を成功させ,一躍無線通信のパイオニアとなりました.それから100年余り経った今では,あらゆる通信が無線伝送の恩恵を受けていると言っても,さほど過言ではないでしょう.
* 長らくの間,無線で伝送するのは通信の内容,つまり情報だけでした.しかし,ケーブルに拘束されないことで大きく世界が広がるのは情報通信だけではありません.固定電話のメタルケーブルは給電と通信の二役を担っていましたが,ワイヤレスでの電力伝送も大きな可能性を秘めています.ケーブルが邪魔になるセンサやIoTデバイスなどへの給電はワイヤレスならではの領域です.端末機器が断線や接触不良の心配から解放されるのも大きな長所です.モビリティや宇宙など,かつては困難と考えられていた大電力・長距離の領域も,最近の技術の進歩により射程に捉えられつつあるようです.
* 今月号の小特集では,空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムを取り上げました.6月の梅雨空の下,電車のパンタグラフと架線の間のスパークを見る機会が心なしか多い気がします.今から100年後には,あらゆるものが無線給電の恩恵を受けているでしょうか.
(編集理事 柏野邦夫)
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