記念特集 1-1-2 2050年の世界と日本

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Vol.100 No.10 (2017/10) 目次へ

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原 丈人 アライアンス・フォーラム財団

George HARA, Nonmember(Alliance Forum Foundation, Tokyo, 103-0023 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.10 pp.1023-1027 2017年10月

©電子情報通信学会2017

1.は じ め に

 2050年頃までに,医学の進歩によって“天寿を全うする最後の日まで元気でいる”ことは現実のものとなろう.更に,2030年代前半には公益資本主義が主導する中間層の厚い経済基盤が地球上に広がり,科学技術の進歩が新しい政治形態を生み出していることだろう.その結果,新しい民主主義の時代が根付くのが2050年頃となる.一方で今ブームの人工知能は放棄され,英語が世界語としての役割を終える.

2.天寿を全うするまで元気な社会を実現する

 ES細胞,間葉系幹細胞,iPS幹細胞などに代表される再生医療革命と遺伝子治療,細胞治療などの先端医療,抗体医薬のみならず低分子化合物の進化,これらを組み合わせたペプチドなど中分子創薬などの先端医療の進化は,バイオインフォマティクスの技術を支える情報通信技術の進歩によって融合し進化は加速する.これによって心臓病,脳疾患,がんなどの病気を人類は克服できる.更に長寿によって増えてきたアルツハイマー病,パーキンソン病などの中枢神経疾患系の病気に対しても明快な治療方法がおおよそ2030年までには生まれてくるであろう.iPS分野での臨床応用の実例としては理化学研究所多細胞システム形成研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクトの高橋政代プロジェクトリーダーによる世界初の網膜の再生手術が2年前に行われ,2017年には世界初のiPS細胞由来心筋シートの実用化を目指すベンチャーが阪大医学部の澤芳樹教授とデフタ・パートナーズによって誕生した.失明した人が再び見えるようになったり,重篤な心不全でも心臓移植が不要になる時代が現実になるのだ.

 これらの世界初の先進医療分野の事業化で日本から世界に貢献できる時代がやってくる.このためには,日本は革新的な医療技術の世界の中心地となるような国家戦略を立てねばならない.2014年11月に薬事法が改正され新しくできた薬機法では,治験で有効性と安全性がある程度確認できれば,条件付き,期限付きで承認を行い早期の段階で市販開始できるようになった.この結果,市販を行いながら有効性や安全性の追求といったことを行うことができるので,必要な患者に対する治療が柔軟で迅速的にできる.この法律は健康医療戦略担当閣僚が甘利大臣のときに出来上がり,当時筆者も内閣府参与の立場で,阪大澤教授,慶大岡野教授らの革新的な医療を世界に先駆けて実用化できる国づくりのために関係閣僚に説明した.これと同様の法改正を6,500種類あると言われる難病に対して適用することを日本で実現したい.難病とは現在の医療技術では治療方法がなく,本人や家族の肉体的・精神的・経済的負担が大きい病気のことである.2015年にはこの難病のうち22種類をアライアンス・フォーラム財団先端技術部門で選別し,三井住友銀行の協力を得て試算したところ,何と海外から治療を受けるために毎年60万人以上の患者が訪日することが分かった.欧米は新薬許認可のルールに関しては,日本で2014年に生まれた薬機法のような画期的な制度がないので,患者は使いたくても使えないのだ.更に欧米にとどまっていては10年間は掛かる三層の治験を終えてからでないと新薬の認可を受けることができないので,欧米薬品メーカは,日本に本社や研究所を移すことになろう.このことは聞き取り調査からも判明している.一旦日本で治療が始まり,研究者も,医療従事者も患者と一緒に日本に住み出すと,先端医療に関するジェノミックス,細胞,組織などのあらゆるデータが集中するこれらのバイオデータの機密保持と日本国内に集積する制度改革もここで必要となるが,これらを実行していくことを政府内で推し進めたい.これによって6,500種類の難病分野においては,米国人もドイツ人も英国人も中国人も,自国で治療困難な病気の治療は日本に来れば一縷の望みがあるという,日本を先進医療特区のような存在にするのだ.世界中の独裁者にも自分の治療のために必要な国として日本を認識してもらえるようになると,それこそ究極の安全保障とも言えるだろう.

 このような医療技術の進化を,科学者や医者が発案発明し企業が事業化する.この流れに弾みをつけられるような制度改革を政府で進めていくには,エコシステムを作る必要がある.エコシステムの実例となるべく,2013年秋にサンフランシスコで日本政府と国連経済社会理事会の特別協議資格を持つアライアンス・フォーラム財団が共同で,ワールド・アライアンス・フォーラムinサンフランシスコを発足させた.既に我が国は米国に橋頭堡を作り,欧米日の研究者,企業家,ポリシーメーカが集まり役割分担を議論しエコシステムを作り上げる流れを作っているのでこのカウンターパートとなる仕組みを日本に作る必要はあるが,やればこれはすぐにでもできる.

3.公益資本主義
――新しい資本主義の仕組みとは――

 生命科学と情報科学が絡み合って医療技術や電子情報技術へと進化し,実用化に向けて企業が取り組むとすれば,このために使われるお金は短期の見返りを要求する質のものであってはいけないのは自明のことだ.科学技術を実用化するイノベーションサイクルは時間が掛かりしかも成功を保証されたものではないが,人類の進歩に必要なのだ.したがってイノベーションはリスクを取ることができる中長期の資金を必要としているのだ.しかし広く世界に目を向けると,リスクを取れる中長期資金は枯渇している.この理由は「会社は株主のものだ.」という間違った考え方を,戦後の米国ビジネス界がグローバル化の流れを作る上で広めてしまったからだ.もし会社が株主のものだということが,仮に正しいとすると,会社の所有者である株主は,同じ金額のリターンを上げるのならばできるだけ短期で上げるように要求する.このためにIRR(インターナルレートオブリターン)という投資効果を測る基準まで編み出しているのだ.メーカがIRRを用いて新技術の実用化を図ればこの会社は間違いなく破滅する.しかも上げた利益の100%以上を株主だけが取っていくのが当たり前のようになっているのが米国の上場企業の一般的な姿だ.ヒューレットパッカードを例に挙げると税引き後利益の167%を株主還元に充てている.マイクロソフトは119%,ファイザーは137%,IBMでも113%なのだ.会社の成功は社員,取引先,社会のおかげでもってなし得るもので,株主だけがこの利益を総取りするというのがおかしいと思う人の方がまともである.100%以上の株主還元をする会社は,税引き後の利益を全部使っても足りないので内部留保を取り崩したり,外部から借り入れてきた資金を株主に配るのだ.このような事態を,企業統治の番人と言える社外取締役は何の批判もしない状態に米国は成り下がってしまったのだ.このように株主万能の資本主義を「株主資本主義」と呼ぶ.これに対して,上げた利益を会社を成功に導くことに貢献した社員,取引先,社会,株主などの社中全体に対して公正に分配し,しかも中長期にこの分配がなされることを実現するために未来への投資と経営を行うことが必要だ.中長期に会社が発展するためには新しい分野に対して果敢に挑戦しなければ先細りになるのは明らかだ.母屋が潰れて社員が路頭に迷うようなリスクを取ってはいけないが,取り得る限りのリスクを取って新規の事業を作り上げる責務を経営者は負う.このように社中分配,中長期経営,企業家精神の三要素から成る企業経営を「公益資本主義」経営と呼ぶ.「公益」とは,私たち及び私たちの子孫の経済的そして精神的な豊かさを指す.公益資本主義に基づく経営の目的は「公益」を実現するためにある.正に自由闊達に企業を経営しても社会に貢献し社員を豊かにする経営理念を実現できるのだ.米国流の株主資本主義を突き進めると10年よりは5年,5年よりは1年,1年よりは1か月でリターンを上げることが優れた経営者として認知されることになるので,時間の掛かる自社研究開発よりはM & A,製造は全て外注というビジネスモデルになってしまう.シリコンバレーのベンチャービジネスは,ほかの企業がイノベーションで作り上げた成果物だけを組み合わせてサービスビジネス化するという,寄生虫のようなモデルがもてはやされるようになってしまったので残念だ.彼らは科学技術のイノベーションには貢献せずに,上澄み液だけを上手にかすめ取るビジネスモデルを完成したにすぎない.お金はもうかるのでウォールストリートや飼われたメディアがはやし立てるけれども人々は惑わされてはいけない.

 米国が自ら築いた制度設計で進歩できないのならば,何とかしなければならない.ちょうどその時期に,公益資本主義の流れを日本で進めるために2013年経済財政諮問会議で専門調査会を設け目指すべき市場経済システムの在り方についての提言をまとめることになった.ここでは社中という言葉は使われていないが,会社の成功に寄与したメンバー全体への分配や中長期投資へ比重を移すことの重要性が記されている.しかし不思議なことに,同じ時期に政府でまとめたコーポレートガバナンスコードには経済財政諮問会議でまとめた基本理念は明示されているのに,実際の現場では,株主資本主義を日本企業に対して促す結果になってしまった.その結果,税引き利益の100%以上を株主還元に回す会社も現れ出したのだ.この状態が続けば日本企業はやがて劣化し,同じ土俵の上であれば米国企業に劣る存在となり,現在では米国に勝るイノベーションの成果も出なくなっていくのは確実である.そこでアライアンス・フォーラム財団公益資本主義部門が日本企業の経営者を短期主義の呪縛から解きほぐす作業に取り掛かり,この提言を,内閣官房,未来投資会議の構造改革集中徹底委会合で強く推し進めた結果,2017年2月には公開企業は決算短信の業績予想欄がなくなることになったのだ.欄がなくなるということは基本的に3か月おきの利益や売上高などの短期的な予想をする必要性がなくなり,短期主義から企業経営者を解き放ち,より自由闊達に経営ができる道筋ができた.3,600社ある全ての公開企業が受けるインパクトは大きく,大手監査法人の試算では残業時間は2億時間,使わなくても済む経費8,000億円の削減が見込まれる.ここで生まれた時間を社員は取り戻せるし,生まれた原資を使って給与を上げることにすれば中間層はより豊かになる.2030年までには公益資本主義を土台にした経済財政政策が日本で定着し,英国を除く欧州には広がりを見せているだろう.

 基本的に公益資本主義は,各国の中間層を豊かにし中長期的には繁栄するシステムであるので,途上国のリーダーたちにとっても,貧困から来る政治の不安定に付け込んだテロリストによって政権が覆されることを恐れるが余り,公益資本主義先進国の日本を範にすることになるであろう.英米の2か国は株主資本主義を更に短期にした金融資本主義で稼ぐ方法をあと10年くらいは模索するであろう.既得権益を持った金融資本主義の力が余りにも強いので簡単にはモメンタムを変えられないのだ.投機がもたらす2008年レベルの金融危機は,2009年以降も何度も起きたが,既得権益層が損をしないようなセイフティーネットは巧みに作られたので顕在化しにくい.しかし投機は必ず制御不能なバブルを生み出し,バブルは必ず崩壊するので最終的には金融資本主義は立ち行かなくなるのだ.投機はゼロサムゲームでもあるので,富の一極集中が一握りの超富裕層と大多数の貧困層を作り出す.

 最後に今はやりの人工知能についての見解を述べたい.「ブームは,あくまで流行であって続きはしない.」という言葉こそ,人工知能ブームを的確に表すものはない.まず人工知能と呼ばれるものの多くは実際にはビジネスインテリジェンスと呼ぶべきであってアーティフィシアルインテリジェンス(AI)と呼ぶべきではない.米国の代表的なAIであっても2030年頃までには消えるであろう.これらを動かすためのエネルギー使用量の大きさが限界を作るからだ.米国のAI専門家によると人間と同等以上のAIを作り動かすには,周辺装置も入れると25万kWいるというのだ.これは福島原発の1基に相当する100万kWの四分の一という大きさだ.4個の人間並みAIを動かすのに,原子力発電所が1基いることになる.2040年頃,必要なIoTにつながるAIの数は,全世界がメッシュ状のネットワークでつながる頃,4億個ではきかないだろう.科学技術の進歩の結果,省電力で動くようになるので,仮にAI 1個につき電力が1万分の一の25kWとしても100億kWが必要になる.世界的な反原発の流れの中で4,000基もの原発を2030年頃までに完成するのは非現実的だし,効率の悪い再生エネルギーでは追い付かない.一方,“人間の脳”はどのくらいのエネルギーを使うのかというと,それは20W強にすぎない.人間は脳を動かすのに電気を食べる必要はない.食べ物で十分なのだ.思い返してみるとディジタル革命で,それまでアナログが中心であった放送・通信技術とディジタル中心のコンピュータが融合し,1990年代には全てはディジタルの世界になりICT産業が生まれた.アナログは古いと言われたが,実際には,アナログの技術を使った方がはるかに優れた応用もたくさんある.ただしアナログの最大の欠点はディスクリートな制御がしにくい.「1980年前後から2015年は主としてパソコンを中心としたディジタルICTの時代,2015年から2040年くらいまでが対話通信機能(Pervasive Ubiquitous Communication)中心のディジタルICTの時代が続く.」と1990年に創設した財団法人原総合知的通信システム基金(現在公益財団法人)の設立趣意書に記載したがそのとおりになった(図1).2015年前後からパソコンは,デスクトップから消え始め,スマホやタブレットといったPUC中心の機器に主役は移り,カメラやそのほかのコミュニケーション機能が,相互通信端末(スマートフォン)に集約されていく様を記している.この変化が起きることは2007年に平凡社から発行された「21世紀の国富論」に書かれている.時代を予測したのではなくて,技術の進歩を論理的に推し進めた結果,なるべくしてなる未来を描いたのだ.しかし2030年頃には,ライフサイエンスとコンピュータサイエンスの融合が始まり再びアナログの時代が来る.アナログの制御技術は情報通信分野の研究では解明できていないが,ライフサイエンス分野では1980年代に解明の鍵となる制御メカニズムが,ノーベル賞科学者(医学生理学賞)のアーサー・コーンバーグスタンフォード大学教授によって示されている.彼や人工知能の父とも言えるファイゲンバウム教授らの話を,スタンフォード在学中に学ぶ機会があり自分の持つ仮説とも合致したので,1990年に父と原財団を創る頃には確信を持つようになっていた.

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4.英語は使われなくなる時代の到来

 なぜ英語が世界語でなくなるのかについて述べよう.英語は米国によるグローバル化の象徴であるが,今世紀半ばまでにその時代が終わるからだ.世界は今世紀,ますます多様化する.世界中で自国の伝統,歴史,慣習,文化を伝え残していくために自国語が見直される時代に入るのだ.この流れの中で,文化の伝承は言葉でしかできない.言葉は文化そのものなのだから当然と言えば当然だ.振り返ってみればグローバル化は,英仏独西葡伯伊といった西欧列強がアフリカ,アジア,中南米を分割支配し搾植した植民地開拓の帝国主義の時代から始まった.圧倒的に差のある経済力,軍事力を使い,相手国に対して自国の文化や商習慣を押し付けて隷属させるような状況を作ることで富を収奪した.そのために教育制度や医療制度,法律,言語を押し付け,反発する人には憧れさせるか,排除し,知識人には称号や学位を与え懐柔し支配してきたのだ.ロック音楽にしてもジーンズにしてもハンバーガーにしても別に米国の文化は高尚ではないが,豊かな国から流れてくる文化に貧しい国々の人びとは憧れ,一旦入り込んだらグローバル化は成功とみなされる.1990年のソ連の崩壊で米国一極となってからは,グローバリズムはアメリカ化と同義語になった.しかし21世紀に入ると,もはやアメリカ経済は途上国と比べて圧倒的に大きな差があるとは言えない国になった.軍事力にしても同様だ.私が1976年に北京を訪問したときには,パスポートコントロールすらない北京空港,舗装道路もなく電気の光もなくもちろん高層ビルもないその中国が,もうすぐGDP世界第1位の経済大国になる.地方都市でさえ大阪よりも数多い高層ビル群があるのだ.今世紀,30億人の人口が増えると予想されるアフリカの主要都市の現在の状況は,はるかに豊かで1976年当時の米中間の国力の違いを感ずることはない.アフリカを中心にアジア,中南米といった途上世界は今世紀人口を増やし国力は強まる.一方,主要先進国G7の独仏英伊加日は人口が減り国力も落ちる.移民政策を制限すれば米国も人口減に転じるのだ.時代の風に逆らって米国が世界をアメリカ化するためにグローバリズムを振りかざしても,もはや全てを押さえ付けるだけの圧倒的な経済的,政治的,軍事的資源を持っていないのだ.力で抑えれば抑えるほど,世界各地で政治の安定性が崩れISのような存在が次々と生まれる.植民地時代に西欧によって定められた国境は再定義され,民族,部族が自らの持つ伝統,歴史観,宗教,文化を取り戻す流れが既に起き始めている.これに伴って,言語を取り戻す流れが起きている.なぜならば,言葉は文化であり,言葉をなくした民族は,文化の継承ができなくなり滅びるからである.このようなうねりの中で情報通信技術が発展し翻訳や通訳は,実用化に向けてまっしぐらなのだが,携帯電話に常備されるような完全な自動通訳機が完成し,世界193か国に散らばる主要民族のどの言語を話してもどの言語にも変換されていくような状況になるのは,PUC中心のICT時代に移行するまで待たなければならない.その中の一つであるIFX(インデックスファブリック)技術の実用化は中でも期待が大きい.イスラエルで開発されたこの技術はビッグデータの時代には必要欠くべからざる要素技術の一つになる.この一つの応用例がリアルタイム自動通訳翻訳分野だ.自動通訳デバイスがスマートフォンに組み込まれ,見知らぬ国でネットの環境が使えないような場合でも大したコンピューティングパワーを使わずとも自国語が何語にでもなるのだ.病気になったとき,けがをしたとき,犯罪に巻き込まれたときには,ことに有り難みを感じるであろうが,もちろん国連,あらゆる分野での多国間会議で,英語ならばある程度までしか表現できないと感じている人たちが自国語であるがゆえにニュアンスや比喩も含め説得力のある議論を展開したいときにも有効である.技術は進化し,それによって社会がどんどん変わっていくことを考えるのは面白い.

5.最  後  に

 米国の株主資本主義を世界に布教するためのビジネススクールもスタンフォードやハーバードをはじめ何百と世界に整備されこの流れは加速したが,問題はこれを推し進めると格差が広がり,2017年1月7日にダボス会議で発表されたように,今では世界のトップのたった8名の富豪が,世界人口の半分の36億人の資産の総和に匹敵するというのだ.途上国の国当りのGDPは大きく発展しても,国民間の経済格差はますます広がるのだ.既に英米をはじめとする先進国では株主資本主義とこの流れをますます短くした投機的な金融資本主義で中間層は浸食されてきたことは周知の事実だ.この結果,中間所得層が厚みを持っていてこそ機能する民主主義は,機能不全になり始め,2016年には米国大統領選挙や,英国国民投票にその傾向が見られ始めている.英米では貧富の経済格差はますますひどくなっていくことが予想できるのに株主資本主義を信じているがゆえに誰も止められないのだ.2030年までにはこの流れを調整し自律作用が働き,中間層を豊かにできる新しい資本主義である「公益資本主義」が広く行き渡っているであろう.更に2040年以降はネオアナログ革命を経て本格的なPUCの時代になる.この技術革新によって政治形態は,生まれ変わる.各国民が,自国語を使いながらも自由に深いコミュニケーションをとることができ,中間層の厚い状況を生み出した上で平和で安定した発展ができる地球世界を作っていこうではないか?

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(はら) (じょう)()

 公益財団法人原総合知的通信システム基金会長.内閣府本府参与,阪大大学院医学系研究科招へい教授.1952大阪生まれ.欧米を拠点にする事業経営者.慶大・法卒後,中央アメリカの考古学研究に従事する.考古学資金作りのためビジネスの仕方を学ぶために1979スタンフォード大経営大学院MBA課程に進む.国連フェローを経て,1981同大学工学部大学院了(工学修士).在学中に光ファイバディスプレイ装置開発メーカを起業して成功.その後,世界初のインターネットTCP/IP通信ソフト開発メーカTWGへ出資し,取締役・副会長などを歴任し成功に導く.同時に,兄弟でデータ・コントロール社を創業し日本での普及に取り組んだ.1984デフタ・パートナーズを創業.情報通信技術分野のベンチャー企業への出資と経営に携わり,1990年代にマイクロソフトと覇を競ったボーランド,ピクチャーテル,SCO,ユニファイ,トレイデックスなど10数社を会長,社外取締役として経営し世界的な企業へと成功に導いた.スタンフォードのアーサー・コーンバーグ教授(ノーベル賞受賞者)の指導と影響を受け,世界最初の遺伝子治療ベンチャーのバイアジーン,世界最初のバイオインフォマティクスベンチャーのアリスファーマスーティカル,世界初のアンチセンス創薬のアイシスほか幾つものライフサイエンスベンチャーにも出資し新技術の実用化に寄与した.この時期には,当時全米第2位のVCのアクセル・パートナーズのパートナー(共同経営者)にも就任し1990年代のシリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストの一人となった.1990には郵政省の認可を得て,ライフサイエンス分野と情報通信ICTサイエンス分野の未来の融合領域の研究に着目して若手研究者の海外渡航資金を助成する(財)原総合知的通信システム基金を原信太郎初代理事長の下で設立し,現在までに500名近い助成を行った.2000からは,米国のみならず英国,イスラエルへも進出しオープラス・テクノロジー(2005インテルと合併)やブロードウェア(2007シスコと合併),フォーティネット(2009ナスダックへ公開)の会長,社外取締役としてポストコンピュータ分野の世界事業展開を切り開いた.2013からは再生医療分野の日米トップが集まり基礎科学の事業化を促進する目的を持ったワールド・アライアンス・フォーラム,サンフランシスコ会議(日本政府,国連経済社会理事会特別諮問資格を持つアライアンス・フォーラム財団共催)を主導し,山中伸弥教授,澤芳樹教授,岡野栄之教授,高橋政代博士,中内啓光教授らと米欧のノーベル賞級を含むトップサイエンティストや大企業,政府関係者,ベンチャー企業家らが集まり新しい事業を創造するエコシステムを作り上げた.同時に,米国先端基礎医学研究機関のソーク研究所の国際アドバイザリー・ボードや,世界経済フォーラム(ダボス会議)メタ・カウンシル,GACメンバーなどを歴任した.米国,英国,香港,イスラエル,日本で,情報通信分野とライフサイエンス分野の新しい事業に出資し世界的な企業へと成長させるのみならず,これらの新産業を興すための制度改革,人材の育成を行うことを目指すデフタ・パートナーズをグループ会長として率いる.


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