記念特集 2-2-28 分野横断の減災技術の確立に向けて 今後の展望

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Vol.100 No.10 (2017/10) 目次へ

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井ノ口宗成 正員 静岡大学情報学部行動情報学科

野田五十樹 正員 国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センター

Munenari INOGUCHI, Member (Faculty of Informatics, Shizuoka University, Hamamatsu-shi, 432-8011 Japan) and Itsuki NODA, Member (Artificial Intelligence Research Center, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tsukuba-shi, 305-8560 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.10 p.1099 2017年10月

©電子情報通信学会2017

1.学際的な場の創出

 近年では「デザイン学」が注目を浴びている.これは,社会で発生する様々な課題に対して,情報技術や知識,能力等を効果的に連携させ,課題解決を行うための設計図をどのように描くかを追求している.防災・減災という分野を考えれば,より時間的切迫性は高く,課題の種類も多く,また,新しい課題も複雑に発生することが災害対応現場であり,この現場をいかに打破するかが求められる.すなわち,「人と情報を連携させ,防災・減災に真に寄与するデザイン」を追求することは,我々研究者のみならず,社会全体が望む一つの目標である.

 災害現場を真に支援するには,先進的な技術と,それを現場で適用するためのマネジメントの両立が求められる.前者は工学的要素が強く,後者は社会科学的要素が強い.それぞれに研究領域が存在し,多くの研究者が日々研究成果を発信している.加えて,現場で活動する実務者,社会で安定的なサービス供給を行う民間企業の協力も欠かせない.このように,分野横断での研究成果の融合と,産官学連携による体制の確立こそが,災害対応現場において真に役立つ研究及び社会実装に欠かせない要素となる.

 これまで,研究会の多くは科学的研究の発表の場となり,実務者が経験した事実や学んだ教訓,現場で実装した取組みの社会発信などについては,その対象とならず,実務者の参画が難しい.そのため,多くの「現場の声」が社会に流布していない実状も否めない.本研専では,様々な視点・立場の方々と交流を深め,現場目線での議論を重ねることを可能とし,学際的な場の創出を推進してきた.

2.今後の活動展開

 平成28年を振り返ると,4月の熊本地震では2回の震度7を経験するという過去に例を見ない地震災害が発生した.8月には,台風10号により岩手県内で多くの土砂災害が発生し,岩泉町では高齢者施設が濁流に飲まれ9名の犠牲者が出た.12月には,糸魚川市駅北で発生した火災が強風により147棟を全焼する被害が出た.この1年だけでも,様々な種類の災害が多発し,その被害状況も激化している.

 本稿執筆現在,防災・減災に関わる研究者並びに実務者にとって最大の脅威は,近い将来に発生が想定されている,南海トラフ巨大地震や首都直下地震である.南海トラフを例にとれば,その経済被害総額は220兆円になり,死者数は32万3千人,避難者数は950万人と想定されており,現状のままでは,我が国の存続の危機に立たされるといっても過言ではない.この巨大地震の場合,各個人が防災・減災力を向上し,災害発生直後の適切な初動をとることで,飛躍的に被害量を軽減できるとも推察されている.研究組織がこれまでに得た様々な先進的取組みを効果的に連携させ,新たな防災・減災サービスとして社会発信するための「場」として,本研専は活動を続ける.

 来たるべき大規模・複合災害を想定し,理学・工学・社会科学が有機的に連携した分野横断の体制を確立するとともに,それぞれの専門性を効果的に機能させるための「防災・減災のためのデザイン」を追求しながら,社会の防災・減災力の向上に寄与することを目指し続ける.そのためには,研究者のみならず,官民を含めた協働体制を整備し,日々発生する様々な災害において,社会実装から得られる実のある研究・実務成果を基に,よりレジリエントな社会づくりを支える研究会となることを目指す.

(平成29年5月17日受付)

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