小特集 5. これからのネットワークセキュリティ

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Vol.100 No.3 (2017/3) 目次へ

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ネットワークセキュリティの最新動向

小特集 5.

これからのネットワークセキュリティ

Network Security in the Future

吉岡克成

吉岡克成 正員 横浜国立大学大学院環境情報研究院社会環境と情報部門

Katsunari YOSHIOKA, Member (Graduate School of Environment and Information Sciences, Yokohama National University, Yokohama-shi, 240-8501 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.3 pp.208-213 2017年3月

©電子情報通信学会2017

abstract

 ネットワークを通じて様々な‘もの’が接続し,それらから得られる情報が新たな価値を生み出す新しい情報社会の形としてIoT(Internet of Things)という概念が注目されている.一方,これまでのインターネットの発展とそれに伴うサイバー攻撃の増大の歴史が示すとおり,高い価値の創出は,それを奪取したり,操作したり,破壊しようとする不正な試みを誘引する.本稿では,IoTの発展がもたらすセキュリティ上の脅威と,このような脅威に対してネットワークセキュリティ技術が果たすべき役割とは何かを考察する.まず,これまでに発生しているインシデントの事例や先端研究により明らかとなったぜい弱性について解説するとともに,今後発生し得る脅威について考察する.更に,これらの事例等から今後ネットワークセキュリティ技術に求められる役割について考える.

キーワード:IoT,自動車セキュリティ,ICSセキュリティ

1.は じ め に

 ネットワークを通じて様々な‘もの’が接続し,それらから得られる情報が新たな価値を生み出す新しい情報社会の形としてIoT(Internet of Things)という概念が注目されている.既に,時計や眼鏡といったウェアラブル機器,情報家電やスマートメータ,ビル制御システム,自動車や交通インフラ,各種センサ,監視カメラ,工業制御システム,医療機器,放送システム,衛星,その他多種多様な機器やインフラがネットワーク接続されており,いわばIoTのれい明期とも言える状況となっている.これまで,インターネットの発展は,その中で扱われる情報の価値を増大させ,一方で,それを奪取したり,操作したり,破壊しようとする不正な試み,すなわちサイバー攻撃を誘引してきた.今後,IoTが生み出す新たな価値が高まるにつれて,このような脅威は更に増大していくと予想される.

 本稿では,まずIoTの現状と今後について述べ,IoTの発展がもたらすセキュリティ上の脅威と,このような脅威に対してネットワークセキュリティ技術が果たすべき役割とは何かを考察する.まず,IoTにおける様々なインシデント事例,ぜい弱性報告,先端研究について解説する.そして,これらの事例から将来のネットワークセキュリティ技術に求められる役割を考察する.

2.IoTの現状とこれから

 IHS社の試算(1)では2015年の時点でインターネットにつながる‘もの’(IoT機器)の数は既に約154億個であり,2025年までに約754億個まで増大すると推定されている.一方,シスコ社(2)によると99%以上の‘もの’はいまだにインターネットに接続されていないとされており,IoTの潜在的な裾野の広さを示している.

 その膨大な数だけでなく,時計からビル制御システムまで多様な機器やシステムがネットワーク接続し,様々なサービスを提供する点がIoTの本質と言える.例えば,製造業等の産業分野では生産ラインにおける各機器からのログ収集分析による効率化が進んでおり,特にドイツにおいてはIndustrie4.0戦略と称して官民連携のプロジェクトが推進されている(3).また,エネルギー,交通,物流等の社会インフラ分野でもセンサやモニタによる施設管理(4),物流管理(5),故障予測(6)などが行われている.個人向けのIoT製品としても,スマートフォン等による照明の操作(7),火災報知器(8)や情報家電との連動から,歯磨き(9)からのデータ収集を行うものまで広く実用化されており,コンタクトレンズから血糖値を測定するものまで開発が進められている(10).これらの機器が連動することにより利便性の向上や省エネ,災害検知を実現するスマートホーム(11),(12),社会インフラとも連携したスマートシティ構想などが世界中で進められている(13),(14).


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