巻頭言 学会のグローバル化に

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Vol.100 No.3 (2017/3) 目次へ

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 産業界から「企業活動のグローバル化の必要性」が盛んに発信されたことは記憶に新しいところですが,今,1周遅れで,国立大学に対して様々な改革が要求されています.最近の文部科学省の資料を見ても,大学運営ではなく,大学経営という言葉が使われ,世界トップクラスの大学に伍するグローバルな大学になるために,財務基盤を強じんにすること,経営のガバナンスを確立することが要請されています.ガバナンス強化は国立大学の法人化当初から言われてきたことですが,法人化後2期の中期目標期間を経て第3期目に入った今,本来の意味での法人化がいよいよ本格化してきたと言えます.

 さて,学会はどうなるのでしょうか.どうなるべきでしょうか.2周遅れで,企業や大学のような,あるいは米国の学会のような経営的視点に立ったグローバル化が必要でしょうか.本会でも,公的には「グローバル化(あるいは国際化)が必要,そのために様々な方策を採っている」としていますが,それらの方策が本当にグローバル化につながっているのか疑問に思うこともしばしばです.もちろん私も人に聞かれれば,学会のグローバル化は大事と申し上げています.しかし,例えば,学会の公式言語を全て英語にするといったことは並大抵の努力では実現できないことは明らかです.そもそも,この文章も日本語で書くことが許されています.学会が目指しているグローバル化と現実には大きなかい離があります.

 一方で,日本の多くの学会が内向きになっている,ガラパゴス化が進んでいるという指摘があり,これは事実のように思われます.最近の若い人たちは国内志向で,留学や海外勤務を好まないという批判をよく聞きますが,しかし,それを若い人たちの志向の問題に帰すると問題の本質を見誤ってしまいます.内向きになっているのは若い人だけではありません.日本の学会においては,日本国内のマーケット,すなわち,会員数が中途半端に大きく,大会の開催や論文誌発行なども含めて,国内だけでも学会事業が成立していることが,そのグローバル化の最大の障壁になっていることは間違いありません.もちろん,海外でも活躍している研究者や技術者は数多くいますが,日本の研究者にとって,日本の学会に参画するだけで学会活動に貢献したと言える環境があること,安住の地になっていることは大いに問題だと思います.

 私が一番申し上げたいこと,それは,学会のグローバル化に対する公的表明と現実のかい離を少しでもなくすこと,そのために現実的方策として選択的集中的に事業を推進すべきであるということです.本会に今求められる最も大事な機能,それは優秀な若手人材の育成だと思います.そのために,研究会や大会は,将来世界で活躍する研究者や技術者の発表練習の場であってよいと思います.有益なアドバイスを得て研究を完成させ,著名な国際会議で発表すればよいと思います.大会などにおける英語発表のセッションも発表練習の場として,また,留学生との交流の場として活用できればよいと思います.一方,疑問に思うこと,それは例えば,発展途上国で開催する研究会や国際会議です.そのような交流ももちろん大事なことですが,単なる研究交流ではなく相手側も含めた人材育成という視点が必要だと思います.これらにとどまらず,今必要なことは諸事業を人材育成の視点から見直していくことです.IEEEなどと競争しながらあくまでナンバーワンを目指すのか,あるいは現実的な視点に立ってオンリーワンを目指すのか,議論を始めるときが来ていると思います.


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