小特集 1.状態依存形の待ち行列モデルとサービスシステムへの応用

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数理的手法の多様化・深化による通信システムへの新たなアプローチ

小特集 1.

状態依存形の待ち行列モデルとサービスシステムへの応用

State-dependent Queueing Models and Their Applications to Service Systems

河西憲一

河西憲一 正員 群馬大学大学院理工学府電子情報部門

Ken’ichi KAWANISHI, Member (Graduate School of Science and Technology, Gunma University, Kiryu-shi, 376-8515 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.4 pp.253-258 2017年4月

©電子情報通信学会2017

abstract

 トラヒック理論を源流とした待ち行列理論は,通信やコンピュータシステムの性能評価を行う際の数理的な基盤として広く用いられてきた.コールセンターやデータセンターは,待ち行列が長くなるほど離脱客が増えるといった状態依存形の待ち行列でモデル化できることが多い.本稿では状態依存形の待ち行列,特に状態依存形の準出生死滅過程でモデル化される待ち行列に焦点を当て,コールセンターやデータセンターの適用事例を通じて,その概略と課題を紹介する.

キーワード:状態依存形待ち行列,準出生死滅過程,コールセンター,データセンター

1.は じ め に

 今日の社会活動や日常生活において,私たちは情報通信技術がもたらす様々なサービスを幅広く享受している.例えば電子メールや動画像配信サービスなどの通信サービスをはじめ,企業と顧客との間の取引であるネットショッピングなどの電子商取引サービスが思い浮かぶであろう.それらのサービスは情報を扱う(情報を通知する,表示する等)ための様々な個々の要素技術によって実現されている.情報を通知する簡易な手段としては電子メールが考えられるし,商品を表示する手段としてはWeb技術が想定できるであろう.更には,顧客の情報を管理するためにはデータベースの技術が欠かせない.Webやデータベースのみならず,それらを結合する通信機器が必要である.もちろん顧客との情報交換には情報通信ネットワークが必要である.

 このように,サービスを提供するためには個々の要素技術が有機的に結合した複合体(システム)として機能することが重要である.システムとしての機能が十分に発揮されるためには,システムを適切に設計する必要がある.そのための手助けとして,システムをモデル化し定量的に評価する手法が検討されてきた.本稿で紹介する待ち行列理論の手法も,そのための方法論の一つとして位置付けることが可能である.本稿では通信トラヒック理論を源流とする待ち行列理論で培われてきた手法を,現代のサービスシステムに応用するときの捉え方について,その概略と最近の成果を紹介する.

2.待ち行列モデルと出生死滅過程

 待ち行列理論では対象となる待ち行列システムをA/S/math(math)という記法で表現し,待ち行列モデルを記述する(1).ここで,Aは待ち行列システムに到着する客の到着過程を,Sは客のサービス時間を表す記号である.例えば,AにMという記号が当てられれば,客がポアソン過程に従って到着することを意味する.同じ記号であるMをSに当てると,客のサービス時間が指数分布に従うことを意味する.更にmathmathは,それぞれ待ち行列システムの窓口の数と客が待ち行列システムで待機できる待ち室の数を表す.例えば,客がポアソン過程に従って到着し,サービス時間が指数分布に従い,単一の窓口と待ち室に制限がない場合は,M/M/1(math)と表記される.待ち室の数が無限大である場合は省略されるのが通例である.よって,M/M/1(math)は通常M/M/1と記される.M/M/1は待ち行列理論や情報ネットワークを扱った多くの教科書に紹介される待ち行列モデルである.


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