解説 動的地理情報共有のためのアプリケーションプラットホームとしてのダイナミックマップの役割

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解説

動的地理情報共有のためのアプリケーションプラットホームとしてのダイナミックマップの役割

Dynamic Map as Common Application Platform for Dynamic Geographic Information Management

佐藤健哉 渡辺陽介 高田広章

佐藤健哉 正員 同志社大学モビリティ研究センター

渡辺陽介 正員 名古屋大学未来社会創造機構モビリティ領域

高田広章 正員 名古屋大学未来社会創造機構モビリティ領域

Kenya SATO, Member (Mobility Research Center, Doshisha University, Kyotanabe-shi, 610-0321 Japan), Yousuke WATANABE, and Hiroaki TAKADA, Members (Institute of Innovation for Future Society, Nagoya University, Nagoya-shi, 464-8601 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.1 pp.85-90 2018年1月

©電子情報通信学会2018

abstract

 現在,複数のセンサを車両に搭載した自動運転の研究が活発に行われているが,これら車載センサのみでは見通せない範囲の危険事象は検知できないという問題がある.これに対応するため,他車両や路側機のセンサ情報を共有し,更に渋滞情報,路面状況,信号状態などを地図情報を基に統合して管理することで多様な用途に応用可能なダイナミックマップが検討されている.本稿では,ダイナミックマップの役割,位置付け,定義,及び,アプリケーションプラットホームとしての応用例を示し,国内外の具体的な取組みを紹介するとともに今後の展開についても述べる.

キーワード:ダイナミックマップ,LDM,プラットホーム,地図,自動運転

1.は じ め に

 現在,車両に搭載されたカメラやレーダなどのセンサにより自車両の前方や周辺を監視することで,先行車の追随走行や障害物認識による衝突被害軽減などの運転支援を行うシステムが発売されている.更に,高度なセンサ技術を利用し高速で高精度な計算を行うことで,ドライバの操作が不要な自動運転の研究も活発に行われている.

 しかし,車両に搭載されたセンサからでは,見通せる範囲の対象物は検知できても,見通せない範囲は検知できない.例えば,見通しの悪い交差点における出会い頭の衝突や,物陰からの急な飛び出しには対応が困難という問題がある.また,センサの検知可能距離を100mと想定した場合,時速100kmの高速走行での到達時間は3.6秒となり,障害物を発見してから停止あるいは回避するまでにほとんど余裕がない状況となる.更に,大型車の陰を走行する二輪車などの危険性も想定される.これらの状況に対応するため,無線通信技術を利用して,走行中の車両間,あるいは,車両と路側機の間で相互に情報交換することにより,安全性向上を目指した協調型ITS(Intelligent Transport System)の研究が行われている.

 協調型ITSの応用例(アプリケーション)として,交差点衝突回避,交通弱者(歩行者・自転車・シニアカーなど)保護以外にも,渋滞や路面状況,信号状態の情報提供など,多様な応用が検討されている.現在は,アプリケーションごとにそれぞれの情報が個別に管理・処理されているが,ダイナミックマップ(1)として,それぞれの情報を基盤となる地図情報を基に統合的に管理することで,効率的にアプリケーションが実現可能となる.一般的に認知されているダイナミックマップの構成を図1に示す.情報の更新頻度に応じて,静的な道路地図の上に動的情報が階層化された構成となっている.


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