解説 超伝導技術に基づく超省エネルギーコンピューティング

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解説

超伝導技術に基づく超省エネルギーコンピューティング

Extremely Energy-efficient Computing Based on Superconductor

田中雅光

田中雅光 正員 名古屋大学大学院工学研究科電子工学専攻

Masamitsu TANAKA, Member (Graduate School of Engineering, Nagoya University, Nagoya-shi, 464-8603 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.12 pp.1207-1211 2018年12月

©電子情報通信学会2018

abstract

 近年,データセンターやスーパコンピュータの消費電力が爆発的に増大しており,大きな社会問題になっている.本稿では超伝導技術に基づく超省エネルギーコンピューティング技術の最近の研究開発動向について紹介する.単一磁束量子(SFQ)回路の原理と研究動向,汎用マイクロプロセッサ応用に向けた研究状況,並びに,超伝導量子ビットを用いた量子アニーリング技術などとの融合の可能性などについて解説する.

キーワード:超伝導エレクトロニクス,単一磁束量子回路,極低温コンピュータ,ポストムーア

1.ま え が き

 半導体CMOS集積回路は,18~24か月ごとにチップに集積できるトランジスタが倍増するという,いわゆるムーアの法則に従い発展を遂げてきた.多数のトランジスタを活用し,大容量キャッシュメモリやスーパスカラ,マルチコアなど,高度な性能向上手法を駆使したマイクロプロセッサが情報化社会の基盤を支えている.しかし,集積化が進むにつれ,チップの消費電力の増大の問題が深刻化し,主に電力制約によりマイクロプロセッサの動作速度は数GHzで頭打ちとなって久しい.スーパコンピュータやデータセンターのようなハイパフォーマンスコンピューティングの分野においても,エネルギー効率,すなわち性能と消費電力の両立が課題となっている.更に,デバイスの加工寸法はナノメートルに迫っており,2025~2030年頃には技術的,あるいは経済的な理由により,微細化に基づくムーアの法則が終えんを迎えると予測されている.ムーアの法則が適用できなくなった後の時代,すなわち,ポストムーア時代の情報化社会の持続的な発達を見据え,活発な議論がなされるようになってきている.

 高速性と低消費電力性を併せ持つ回路技術として,超伝導を用いた単一磁束量子(SFQ: Single Flux Quantum)回路の研究が進められている.SFQ回路は,超伝導ループ中の磁束量子を情報担体とし,そのループ間の移動をジョセフソン接合(JJ: Josephson Junction)で制御する.電力消費は,原理的には磁束量子がループ間を移動する際に生じるパルス状の電圧でのみ発生し,スイッチング時の消費エネルギーはCMOS回路に比べ格段に小さい.また,低損失な超伝導伝送路配線を用いて,電圧パルスを用いた高速・高スループット・低エネルギーな長距離信号伝送も可能である.SFQ回路を用いれば,極めて省エネルギー性に優れた高性能コンピュータを実現できる可能性がある.

 近年では,よりエネルギー効率の高い回路方式が次々と提案され,冷却のハンディキャップを加味しても,既存のシステムに対して圧倒的な優位性が見込めるようになった.更に,磁性体材料の導入により,従来の課題であったメモリなどで新たな進展が可能になったことから,日米を中心に研究プロジェクトが活発である.本稿では,ポストムーア時代の集積回路技術として期待される,SFQ回路に基づく超伝導コンピューティング技術の最近の研究開発動向について紹介する.SFQ回路の原理と研究動向,マイクロプロセッサ応用に向けた研究状況,並びに,超伝導量子ビットを用いた量子アニーリング技術などとの融合の可能性などについて解説する.

2.単一磁束量子回路の原理と技術動向

2.1 動作原理


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