小特集 1. マイクロ波・ミリ波フォトニクス技術の最新動向

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マイクロ波・ミリ波フォトニクス技術の新展開

小特集 1.

マイクロ波・ミリ波フォトニクス技術の最新動向

Role of Microwave Photonics in Future Sensing and Mobile Services

川西哲也

川西哲也 正員 早稲田大学基幹理工学部電子物理システム学科

Tetsuya KAWANISHI, Member (Faculty of Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, 169-8555 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.2 pp.131-137 2018年2月

©電子情報通信学会2018

abstract

 光技術により電波の発生・検波を行うマイクロ波・ミリ波フォトニクス技術は,通信の分野ではシステム構築の柔軟性や簡素化など,計測の分野では広帯域性や低じょう乱性などの利点があり,現在,国内外で活発に研究開発が進められている.次世代移動通信システムにおいて,ネットワーク接続された多数の基地局から成る構成が検討されており,光ファイバ通信と無線通信の更なる融合が期待されている.本稿ではこのような光と無線の融合領域の開発の方向性を議論し,マイクロ波・ミリ波フォトニクス技術の動向を紹介する.

キーワード:ファイバ無線,移動通信,5G,センシング

1.マイクロ波フォトニクス的な考え方

 マイクロ波フォトニクス(MWP: Microwave Photonics)は光技術により高い周波数の信号波形の処理・伝送・発生・検出などを実現するための技術分野を指す.非常に狭義に解釈すると,マイクロ波(3~30GHz)の電波に相当するアナログ波形を光で取り扱うための技術ということになるが,マイクロ波が波長の短い波,送受信機デバイス内部でも波動性が顕著となる波長帯を意味するとすれば,ミリ波帯,テラヘルツ帯に至る高い周波数の無線波形のためのフォトニクス全般を含むものと言える.電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティにはこの分野をカバーする研究専門委員会があるが,新たな波長帯域への展開を明確にするためにその正式名称を「マイクロ波・ミリ波フォトニクス研究専門委員会」としている.

 無線信号を発生,検出するために不可欠なデバイスはもちろん高速の電子デバイスである.マイクロ波・ミリ波帯,更にはテラヘルツ帯の信号に対応した発振器,検波器,アンテナなどが最重要であることは言うまでもない.これに対して,不可欠な要素技術に見えないマイクロ波フォトニクスの役割は何であろうかという問いは何度となく繰り返されている.もちろん,学術分野の意義を問うことは議論を深める上で最も大切なプロセスの一つである.マイクロ波フォトニクス技術を使った方がよいのか,それとも,使わない方がよいのかという問いには定性的な答えを与えることはできない.マイクロ波フォトニクス技術の有用性は,システム構成,想定されるデバイスコストによって確定するものであり,定量的な議論が必須であるというのが特徴である.

 マイクロ波フォトニクス的な考え方とは,光技術を是が非でも無線技術に導入しようとするものではなく,必要があれば光技術を使うこともいとわず,より広い視野で無線サービスのための高い周波数帯域の波形を操るための最適化を目指すというものである.詳細は後述するが,携帯電話サービスのための無線波形を光ファイバ通信で伝送するという技術が,幅広く用いられている.最新のシステムでは光ファイバ通信の高速性を生かし,波形をディジタイズして,伝送するという手法がとられている.しかし,ディジタル伝送技術の高速化,低コスト化が進展する以前は,地下街などへの電波の再放射にはアナログ波形を光ファイバで伝送するという技術が用いられていた.より広帯域の波形の転送が必要となる第5世代携帯電話システム,いわゆる5Gにおいて,全て波形をディジタイズして,単純にディジタルで伝送するということは可能であろうか.これまでの方式をそのまま拡大すると,必要となる伝送速度がばく大となるため,今のところ,明確な答えは出ていないというのが実情であろう.波形そのものを伝送するのではなく,機能分界点を調整し,所要容量を抑えながら,システムの最適化を目指す取組みがなされてるが,マイクロ波フォトニクス的な考え方も重要であろう.5Gをはじめとする有線と無線の融合が必須のシステムが求められていることから,無線と光の境界領域をカバーするマイクロ波フォトニクス分野への注目は高まりつつある.


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