小特集 5. フォトニクスが開くテラヘルツ技術

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マイクロ波・ミリ波フォトニクス技術の新展開

小特集 5.

フォトニクスが開くテラヘルツ技術

Terahertz Technologies Created by Photonics

永妻忠夫

永妻忠夫 正員:フェロー 大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻

Tadao NAGATSUMA, Fellow (Graduate School of Engineering Science, Osaka University, Toyonaka-shi, 560-8531 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.2 pp.159-165 2018年2月

©電子情報通信学会2018

abstract

 21世紀に残された最後の周波数帯のフロンティアとして,テラヘルツ波の様々な応用に向けた研究開発が国内外で活発になってきた.テラヘルツ波の発生・検波はデバイス性能の限界から従来は困難であったが,フォトニクス技術の利用により,広帯域かつ高出力・高感度のシステム構築が可能になった.本稿では,フォトニクス技術によるテラヘルツ無線及びテラヘルツ計測を取り上げ,最新の研究開発状況や,今後の課題について言及する.

キーワード:テラヘルツ,フォトニクス,無線通信,計測

1.は じ め に

 マイクロ波フォトニクスと呼ばれる学際分野の始まりは,無線通信と光ファイバ通信をそれぞれ支える電波と光技術の融合による,新たな情報通信サービスや,計測・センシング分野への応用を目指してスタートした1990年代の初頭から半ばに遡る(1).当時は,携帯電話の不感地帯の解消という大きなニーズがあり,そのソリューションとしての光ファイバ無線(RoF: Radio over Fiber)が,マイクロ波フォトニクスのメインテーマであった.筆者は,当時,光通信用の高速半導体デバイスや集積回路の評価・テスト技術に対するニーズを背景に,フォトニクス技術を利用した高周波電気信号計測の研究を行っており,以来,国内外のマイクロ波フォトニクスのコミュニティに関わってきた.

 上記の計測技術の基礎になったのは,1980年代の初頭から半ばに提案された,電気光学サンプリング(EOS: Electrooptic Sampling)と呼ばれる技術(2)で,フェムト秒パルスレーザ技術と電気光学(EO: Electrooptic)結晶を組み合わせたものである.筆者らは,既に1980年代後半に,1THzの帯域を有する電気信号測定が可能なシステム「テラヘルツプローバ」の開発に成功していた(3),(4)

 一方,1990年代に入り,マイクロ波フォトニクスとは別のコミュニティの中で,フェムト秒パルスレーザと光伝導アンテナあるいは電気光学結晶を用いたテラヘルツ波パルスの発生と検出技術を,分光(5)やイメージング(6)に応用できることが報告され,それぞれ「テラヘルツ時間領域分光」,「T-rayイメージング」と命名されるや否や,テラヘルツ技術の研究が世界中でブレークした.2000年代になると,分光装置やイメージング装置の商品化が始まり,2010年代には,国内外で10数社を超えている.

 さて筆者は,上述の1THzもの帯域を有する電気信号計測技術を使って,様々な高速半導体デバイスや回路を評価する中で,導波路形フォトダイオード(7)や単一走行キャリヤフォトダイオード(UTC-PD: Uni-traveling-carrier Photodiode)(8)に出会う機会を得ることができた.これらはいずれも当時100GHzを超える世界最高の帯域を有することが示され,特に,UTC-PDは,広帯域性に加えて,出力電流の飽和レベルが高い,すなわち発生電力が高いという特長が革新的であった.これを基に,1990年代の後半,光技術による電磁波の発生と検出を用いた,連続ミリ波の発生と検出システムコンセプト(図1)を提案,実証し(9),その後今日に至るまでの,ミリ波・テラヘルツ波通信や計測システムへの応用展開の先駆けとなった(10)(14)


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