特集 2-7 遠隔会議で高臨場感を実現するAV及びネットワーク処理技術

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2. 働き方改革を支えるICT 
【生産性向上を支えるICT】

特集 2-7

遠隔会議で高臨場感を実現するAV及びネットワーク処理技術

Audio, Video and Network Processing Technologies for Immersive Video Conference

熊澤雅之 増田博茂 角野眞也

熊澤雅之 パナソニック株式会社メディアエンターテインメント事業部

増田博茂 パナソニック株式会社メディアエンターテインメント事業部

角野眞也 パナソニック株式会社メディアエンターテインメント事業部

Masayuki KUMAZAWA, Hiroshige MASUDA, and Shinya KADONO, Nonmembers (Media Entertainment Business Division, Panasonic Corporation, Fukuoka-shi, 812-8531 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.5 pp.492-497 2018年5月

©電子情報通信学会2018

abstract

 昨今,働き方改革の取組みが求められる中,ビデオ会議の導入が増えている.これは,ビデオ会議の大幅な品質向上に加え,広帯域インターネット接続サービスが普及し,通信料を気にせず安価に利用できるようになったことが大きい.しかし,一般に安価な接続サービスは帯域保証のないベストエフォート形であるため,ネットワーク混雑時には音切れや映像の乱れが発生するという課題があった.本稿では,ベストエフォート形のインターネットにおいても,高い臨場感を実現するための音声,映像及びネットワーク処理技術について解説する.

キーワード:テレビ会議,エコーキャンセラ,コーデック,帯域推定,QoS

1.は じ め に

 働き方改革の一環として,会議や出張を見直し在宅勤務やテレワークを取り入れる動きに伴い,遠隔地とのコミュニケーションにビデオ会議の導入が増えている.

 ところが,安価で帯域保証のないインターネットを用いると,データ損失によりビデオ会議の映像音声が乱れる課題があった.これに対し,回線状況に応じて動的に映像音声の符号化・通信制御を行うことで,臨場感のある自然な会話が可能になっている.本稿では,この安定したビデオ会議を支える技術について解説する.

2.ビデオ会議とWeb会議

 ビデオ会議には,PCなどをクラウド経由で接続するWeb会議と,ビデオ会議専用端末を用いるものがある.前者は自席や外出先から一人で手軽に参加できるのに対し,後者は何人かで部屋に集まり遠隔地と臨場感を共有できる.

 パナソニックでは後者として,高いAV品質,安定した通信,簡単な接続を特徴とした「HD映像コミュニケーションユニット(HDコム)」を市場展開しており,モバイル無線網(WiMAXやLTE)利用時でも安定した通信を実現している.

 以下では,本システムに搭載している技術を中心に,ビデオ会議で必要なキー技術について紹介する.

3.音 響 技 術

 臨場感のある遠隔コミュニケーションを実現する上で重要な音響技術として,音響エコーキャンセラと音声コーデックがある.以下,本技術について紹介する.

3.1 音響エコーキャンセラ

 音声通話システムを構成するには,双方の地点で,音声を伝えるためのマイクと,相手地点からの音声を聞くためのスピーカが必要である.しかし,このようにマイクとスピーカを設置すると,一方の音声が相手地点のスピーカで拡声され,その音をマイクで集音し,元の地点のスピーカで拡声されることになる(山彦現象).このようにスピーカ音をマイクで集音した音声を音響エコーと呼び,コミュニケーションの阻害要因となる(図1(a)).この音響エコーを除去する技術を音響エコーキャンセラと呼び(図1(b)),これまでに数多くの研究がなされている(1)


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