小特集 テラヘルツデバイスの新潮流 編集にあたって

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Vol.101 No.6 (2018/6) 目次へ

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小特集

テラヘルツデバイスの新潮流

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 鈴木左文

 テラヘルツ帯はおよそ0.1~10THzの周波数帯を指し,電波と光の中間の特性を持ちイメージング・分光分析・無線通信などの応用が期待されています.今までに,フェムト秒パルスレーザを用いた広帯域テラヘルツパルス発生・検出や非線形光学素子を用いたパラメトリック発生などの光学的な技術によってテラヘルツ技術は開拓され,その功績は計り知れないものですが,残念ながらまだテラヘルツ技術の普及には至っていません.ただ,近年のテラヘルツに関する論文発表はエレクトロニクスやナノテクノロジー等の分野のものが増加し,簡便なデバイスによるテラヘルツ発生・増幅が徐々に現実のものになっており,応用普及への土台ができてきたと思われます.そのため,今回の小特集では,それら特に近年ホットと思われるテラヘルツデバイスと関連技術・応用についてまとめ,新たなテラヘルツ技術の潮流を感じ,テラヘルツ応用の将来展望を俯瞰できるようなものを目指しました.

 まず,第1章ですが,各デバイスの紹介に行く前の前座として,「新世代テラヘルツ技術」と題し,近年の新たなテラヘルツ技術の動向について,力不足とは思いますが私の方で執筆させて頂きました.網羅しているとはとても言えませんが,ここ数年の間で特に発展のある目新しい技術について取り上げ,新たなテラヘルツ技術の鼓動を感じられるようになっていれば幸いです.

 第2章では,「化合物半導体を用いたテラヘルツモノリシック集積回路技術」として,富士通研究所の川野氏と日本電信電話の濱田氏に執筆頂きました.化合物半導体のトランジスタは高周波用途として従来から用いられてきましたが,特に近年,加速的に動作周波数は向上し,最大発振周波数は1THzを超え,それらを用いたモノリシック集積回路の開発が盛んに行われています.国内では300GHz帯の無線通信に向けた集積回路の開発が集中的に行われ,その中心で携わったお二人に回路設計の妙についてまとめて頂きました.

 第3章では,「テラヘルツ通信で新しい応用を開くシリコン集積回路」として,広島大学の藤島先生に執筆頂きました.シリコン系トランジスタの動作周波数はその微細化によって年々増加しており,テラヘルツ帯での動作が可能になってきています.これらを受けて,集積回路の開発が世界的に活発になってきているため,本稿では,回路開発におけるキーポイントについて紹介頂くとともに,それらを用いた無線通信について応用先や周波数割当などの将来的な展望も含めて解説頂きました.

 第4章では,「テラヘルツ帯進行波管増幅器」として,NECネットワーク・センサの増田氏,情報通信研究機構の関根氏,菅野氏に執筆頂きました.現在までに真空管デバイスはトランジスタ等のデバイスによって置き換えられてきましたが,テラヘルツは波長が短くサイズが小さくて済むためMEMS技術を用いて精度良く作製が可能となり,更に半導体デバイスには難しい高出力動作が可能なことから,また新たに脚光を浴び開発が進んでいます.本稿では,小形の進行波管テラヘルツ電力増幅モジュールについて,開発のポイントを解説頂きました.

 最後に,第5章では,「テラヘルツ差周波量子カスケードレーザ光源の現状と展望」として,浜松ホトニクスの藤田氏に執筆頂きました.テラヘルツ帯の量子カスケードレーザは現在までに精力的に研究が行われてきましたが室温動作には至っていません.それに対し,中赤外量子カスケードレーザを二つ集積し,非線形性を利用してテラヘルツ帯の差周波を取り出す方式が提案され,室温動作や高出力動作が現在可能となっています.これら新たな量子カスケードレーザの展開について高効率化や高出力化の方法と課題を紹介頂きました.

 以上,本小特集において幅広い分野で執筆頂いた執筆者の皆様と,本小特集の実現に御協力頂いた編集チームメンバーの皆様に心から感謝致します.

小特集編集チーム

 鈴木 左文  宮本 智之  狐塚 正樹  幸丸 竜太  堤  卓也  宮嶋 茂之 


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