小特集 1. 新世代テラヘルツ技術

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Vol.101 No.6 (2018/6) 目次へ

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テラヘルツデバイスの新潮流

小特集 1.

新世代テラヘルツ技術

New Generation of Terahertz Technologies

鈴木左文

鈴木左文 正員 東京工業大学工学院電気電子系

Safumi SUZUKI, Member (School of Engineering, Tokyo Institute of Technology, Tokyo, 152-8552 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.6 pp.541-545 2018年6月

©電子情報通信学会2018

abstract

 従来,テラヘルツ(THz)技術は主にフェムト秒パルスレーザを用いたTHz時間領域分光法やTHzパラメトリック発生装置などによって開拓されてきたが,近年の革新的な半導体技術の進展により真にコンパクトな光源が実現されつつあり,より現実的なTHz応用に向け現在新しい展開を見せてきている.そこで,本稿では他の技術では難しいTHz帯の特徴を生かした応用に触れるとともに,光源に主眼を置いてコンパクトTHzデバイスの進展状況について報告する.

キーワード:テラヘルツ波,テラヘルツ応用,テラヘルツデバイス

1.は じ め に

 テラヘルツ(THz)波は電波と光の中間に位置する約0.1~10THzの周波数帯の電磁波のことを指し,電波側から見ると,波長が短いため高い分解能を有し,高周波であるため帯域が広く,光波側から見ると,散乱されにくく透過性が高く,また,分子固有の吸収スペクトルも現れてくるなどの特徴を有している.そのため,これらの特徴を生かした,イメージング,分光分析,無線通信等の応用が期待され研究が行われてきた(1)(3).しかしながら,電波から見ると非常に高周波帯であるため,動作する電子デバイスがなく,光から見ると長波長でエネルギーが小さいため,これもまたTHz光を直接発生可能な光デバイスは存在しなかった.そこで,フェムト秒パルスレーザを光伝導アンテナ若しくは非線形光学結晶に照射しTHzパルスを放射する方法や,非線形光学結晶に近赤外パルス光を入射し波長変換によりTHz光を発生させる方法(パラメトリック発生)などが考案され,先に述べた応用の端緒が開かれるとともに,現在ではより発展した応用へ変遷している.

 このように,THz帯ならではのオリジナリティあふれるデバイス・システムが従来からTHz研究を主導してきたが,現在,急速な半導体デバイス技術の進展とともに,非常にコンパクトで簡便なTHzデバイスが出現してきている.そのため,本稿では,他の技術では困難なTHz帯の特徴を生かした応用について,最近の事例も踏まえ簡単に紹介するとともに,光源に主眼を置いて真にコンパクトなデバイス・システムについてまとめ,THz技術の将来を予想する.

2.特徴を生かしたテラヘルツ応用

 近年,安心・安全な社会を目指し,テロ等防止に向けた衣服下等に隠蔽された爆発物や凶器の特定や,プラスチック,ゴム,食品等内の異物や欠陥を特定するための透過イメージングが重要となっている.X線は空港等のボディスキャナとしては被ばくの危険性のため適さず,また,プラスチック等のソフトマテリアルを透過するためそれらの分別が難しい.ミリ波などのスキャナは,既に空港への導入がなされているが,十分な空間分解能が得られないため,小さな混入物を特定するのは困難であり,ここにTHz波特有の強みが生きてくると考えられる.最近の例では,タイヤに使われる黒色合成ゴム中のミリメートルオーダの欠陥や破損,及び,その原因となるひずみについてTHz波を用いた計測例が報告されている(4)


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