小特集 4. テラヘルツ帯進行波管増幅器

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テラヘルツデバイスの新潮流

小特集 4.

テラヘルツ帯進行波管増幅器

Terahertz Power Amplifier Using Traveling Wave Tubes

増田則夫 関根徳彦 菅野敦史

増田則夫 正員 NECネットワーク・センサ株式会社マイクロ波管本部

関根徳彦 正員 国立研究開発法人情報通信研究機構未来ICT研究所

菅野敦史 正員 国立研究開発法人情報通信研究機構ネットワークシステム研究所

Norio MASUDA, Member (Microwave Tubes Division, NEC Network and Sensor Systems, Ltd., Sagamihara-shi, 252-5298 Japan), Norihiko SEKINE, Member (Advanced ICT Research Institute, National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, 184-8795 Japan), and Atsushi KANNO, Member (Network Research System Institute, National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, 184-8795 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.6 pp.561-566 2018年6月

©電子情報通信学会2018

abstract

 ミリ波帯と赤外線領域の中間領域に位置するテラヘルツ波帯には,「テラヘルツギャップ」と呼ばれる有用な通信用増幅デバイスがない周波数帯が存在し,電力発生・増幅技術の開発が重要な課題の一つである.このテラヘルツ波帯では,マイクロ波帯からミリ波帯において使われている進行波管が高出力な増幅器を実現するための増幅デバイスの候補として期待されている.この進行波管の動作周波数を高めるためには増幅素子(遅波回路)の微細化が必要となる.本稿では進行波管の遅波回路をマイクロマシン技術を使って微細化した300GHz帯進行波管及び可搬形電力モジュールの開発状況を含めて報告する.

キーワード:進行波管,テラヘルツ波,マイクロマシン,遅波回路

1.は じ め に

1.1 背景

 無線通信システムでは高速・大容量化が大きなテーマとなっている.そのため多値化・帯域圧縮化が行われており,送信機の高出力化と低ひずみ化が必要とされる.

 マイクロ波帯からミリ波帯にかけては最終段の増幅デバイスとして化合物半導体素子があり,高出力化のための研究開発が行われているが,テラヘルツ波帯(本稿では0.1~3THzとする)では十分な出力を確保することが難しくなってきている.一方,衛星通信,レーダなどでは合成せずに1素子で高出力が得られる増幅デバイスとして,MVED(マイクロ波真空デバイス:Microwave Vacuum Electronic Device)と呼ばれる真空デバイスが活躍しており,テラヘルツ波帯においても増幅が可能である.

 本稿では,テラヘルツ波帯で利用されるMVEDの一つであるTWT(進行波管(用語):Traveling Wave Tube)の開発とそれを使ったテラヘルツ波帯電力モジュール(Terahertz Wave Power Module)について解説する.

1.2 高周波化の動向

 電波資源は有限であることから,これまで種々の無線システムの用途に割り当てられて周波数がひっ迫しているマイクロ波帯から,ひっ迫の程度が低いミリ波帯を利用する技術開発が行われてきている.既に北米を中心にKaバンド(用語)(主として30GHz帯)の利用が加速している.しかしながら,将来,日常的に取り扱うデータ量が増大,情報端末とネットワークを利用した情報流通自体が巨大市場を形成すると予測されており,情報端末への瞬時転送を実現するための超広帯域・近距離無線通信が普及すると見られている.一例として高精細な動画像を情報端末に配信するような超広帯域・近距離無線通信サービスを実現するためにはバックホールの転送速度を飛躍的に増加させる必要がある.


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