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Beyond 5Gを支えるフォトニクス技術とその展望
小特集 4.
異種材料集積を用いた光デバイスの最新技術動向
Latest Technology Trends of Photonic Devices Using Heterogeneous Integration
Abstract
Beyond 5Gといったワイヤレス通信技術の進展により通信量が増大し,2030年代には一つのトランシーバに要求されるデータレートが10Tbit/sを超えると予想されている.一方,光通信を支えてきた単一材料光デバイスにおいては,10Tbit/s級のデータ伝送に向けた広帯域化と低消費電力化の両立に限界が見え始めており,技術的なブレークスルーが求められている.光通信に広く利用されてきたⅢ-V族化合物半導体とシリコンフォトニクスのそれぞれの利点を組み合わせた異種材料集積光デバイスは,その有望なアプローチの一つとして期待されている.本稿では異種材料集積技術を紹介するとともに,それを利用した波長可変レーザについて報告する.
キーワード:Ⅲ-V族化合物半導体,Siフォトニクス,InP系能動領域/Si導波路ハイブリッド集積,波長可変レーザ
自動運転や遠隔医療,スマート農業に加え,AR(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)といった高精細映像を利用したIoTアプリケーションが提案され,実現に向けた取組みが進められている.従来に比べ様々な「もの」がインターネットに接続されることで利便性が大きく向上する一方で,それを支える通信システムには更なる技術の向上が必要とされる.このような背景の中,スマート社会実現に向けた通信網の一つとして,第5世代移動通信システム(5G)が既に導入されており,更にその先のBeyond 5G(あるいは6G)と呼ばれるモバイルシステムが検討されている.光通信においては,アクセスネットワークやデータセンタネットワークに関して,これまで以上の情報伝送容量が求められることになる.これに伴い,データ伝送を行う光トランシーバに要求される伝送速度は2025年には1Tbit/sを超え,2030年代には10Tbit/sを超えると予想されている.
これまで,光通信システムには,Ⅲ-V族化合物半導体であるりん化インジウム(InP)を用いた集積光素子(1)やシリコン(Si)フォトニクス素子(2)が利用されてきたが,10Tbit/s級のデータ伝送実現に向けては,現状,単一材料光デバイスの利用では困難であり,これらの多チャネル化により伝送容量を増大させることが一つの方法と考えられる.この手法は伝送容量の観点では利点となるが,素子の大形化,コストの増加,並列処理による消費電力の増大等が懸念される.最新のデバイス技術を用いた800Gbit/sの伝送速度に対応するディジタルコヒーレント伝送(用語)向け小形・低消費電力光トランシーバを使用した場合でも12チャネル以上が必要となり,トータルの消費電力は200Wを超えると試算され,抜本的な消費電力の低減が必要である.このように従来の光通信を支えてきた単一材料光デバイスでは,高速動作と低消費電力の両立に限界が見えてきており,技術的なブレークスルーが求められている.
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