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Beyond 5Gを支えるフォトニクス技術とその展望
小特集 5.
超高速直接変調半導体レーザ
Ultra-fast Directly Modulated Semiconductor Lasers
Abstract
直接変調レーザは,Beyond 5G時代に求められる低消費電力・低コスト・高速変調という要求を満たすことが可能な送信機用光源として期待されるが,高速化には大きな課題があると考えられていた.本稿では,近年注目されている光フィードバックを用いた,緩和振動周波数を超える変調帯域を持つ直接変調レーザについて紹介する.活性層への光閉込め係数の増大を目的とした,熱酸化膜シリコン基板上,及びSiC基板上メンブレンレーザに光フィードバックを適用することにより,低消費電力な超高速直接変調レーザを実現することが可能となる.
キーワード:直接変調半導体レーザ,メンブレンレーザ,光フィードバック,フォトン―フォトン共鳴
Beyond 5Gが実現する2030年頃には,あらゆる情報が通信機器を通じて集められ,フィジカル空間とサイバー空間が高度に統合された環境になると予想される.これを実現するには,現在と比較して桁違いの光トランシーバ容量が必要になり,送受信素子の高速化が必須になる.もちろん送受信素子数も桁違いに増えると予想されることから,低消費電力化,低コスト化も同時に実現しなければならない.
送信素子は,要求される伝送距離,容量,コスト,消費電力から直接変調レーザ,化合物半導体EA(Electro-absorption)変調器,マッハツェンダ変調器を使い分けている.現在,データセンター内の比較的距離の短い領域やスーパコンピュータの中で直接変調方式の面発光レーザが広く利用されていることから,Beyond 5G時代になっても,低消費電力・低コストな直接変調レーザは,継続してキーデバイスとして期待される.
では,直接変調レーザの課題は何であろうか? まずは要求される変調速度を満たせるのかが課題である.これは2000年代に入って,直接変調レーザの変調帯域が30GHz程度で頭打ちの状態であることから,課題として認識されている.次に,仮に高速化が達成できたとしても,低消費電力な直接変調レーザの特徴を維持できるかである.詳細は次章で述べるが,高速化する際に直接変調レーザのバイアス電流は,周波数の2乗で大きくしなければならないからである.これは消費電力の問題だけでなくレーザの信頼性に関連する問題でもある.
本稿では,これらの問題の解決に向けた最新の直接変調レーザの研究開発動向について,光閉込め係数増大のためのメンブレンレーザの検討(1),(2),光フィードバックによる高速化(3),(4),更に高熱伝導率基板SiCを用いたメンブレンレーザの高速化(5)について紹介する.
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