解説 自律飛行ドローンのための衛星・セルラ通信動的切換システムの開発

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Vol.108 No.10 (2025/10) 目次へ

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 解説 

自律飛行ドローンのための衛星・セルラ通信動的切換システムの開発

Development of a System for a Dynamic Switching between Satellite and Cellular Networks for Autonomous Flight Drone

小此木謙一 鈴木理基 田上敦士 大河亮介 志田裕紀 佐藤隆司 松ヶ谷篤史

小此木謙一 正員 (株)KDDI総合研究所ネットワーク部門

鈴木理基 (株)KDDI総合研究所ネットワーク部門

田上敦士 正員:シニア会員 (株)KDDI総合研究所ネットワーク部門

大河亮介 志田裕紀 佐藤隆司 KDDI株式会社コア技術統括本部

松ヶ谷篤史 KDDI株式会社経営戦略本部

Kenichi OKONOGI, Member, Masaki SUZUKI, Nonmember, Atsushi TAGAMI, Senior Member (Network Division, KDDI Research, Inc., Fujimino-shi, 356-8502 Japan), Ryosuke OKAWA, Yuki SHIDA, Takashi SATO, Nonmembers (Core Technology Sector, KDDI Corporation, Tokyo, 102-8460 Japan), and Atsushi MATSUGATANI, Nonmember (Senior Assistant to CSO & CDO, KDDI Corporation, Tokyo, 102-8460 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.10 pp.984-988 2025年10月

©2025 電子情報通信学会

A bstract

 山間部や海上など,セルラ通信の利用が想定されていないエリアでもドローンの利用が想定されている.ドローンの安全航行のために,セルラ圏外でも通信の継続性を担保し制御プラットホームと通信することを目的とした衛星回線とセルラ回線の動的切換システムの開発を行った.本稿では,開発したシステムの概要と開発システムの評価のための実証実験について解説する.

キーワード:衛星通信,セルラ通信,ドローン,切換システム

1.は じ め に

 現在,配送や災害対応をはじめ,様々な分野で無人航空機(以下,ドローン)の活用が注目されている.特に,物流業界では人手不足の解消に加え,離島や山間部といったエリアでも,迅速かつ効率的な配送が可能になるため,ドローンは物流インフラの新たな選択肢として期待されている(1).ドローンの制御では,ドローンの正確な位置把握や飛行ルートの修正,ドローンの速度調整のために,ドローンのリアルタイムな位置情報等のテレメトリーデータや映像データを用いて自己位置を把握し,飛行中は常に無線通信を通じて制御プラットホームと情報をやり取りする必要がある.しかし,海上や山間部といったセルラ通信圏外では,ドローンと制御プラットホーム間の通信が途絶するリスクがある.こうしたリスクに対応するためには,例えば,ドローンにセルラ通信モジュールと衛星通信モジュールを搭載し,通信状況に応じて動的に通信手段を切り換えることで,通信が途絶えることを防ぐ必要がある.

 そこで,筆者らは,ドローンにセルラ通信モジュールと衛星通信モジュールを搭載し,通信を途絶えさせないための切換技術の有用性検証のために,衛星通信とセルラ通信を活用したドローン飛行の実証実験(2)を行った.本実証実験では,衛星通信モジュールとして,ドローンに搭載可能なサイズで,重量の軽いSkyLink 5100(3)を使用した.SkyLink 5100の衛星回線は,上り22kbit/s/下り88kbit/sとネットワーク帯域が小さいため,映像データのような多くの帯域を必要とするアプリケーションを伝送することが困難である.そのため,図1に示すように,衛星回線利用時は,テレメトリーデータのみを伝送し,セルラ回線利用時は,映像データとテレメトリーデータを伝送する.また,時間とともに変化する衛星・セルラ回線品質を測定し,通信圏外・圏内を事前に予測し,通信の途切れを未然に防ぎ,衛星回線切換前に映像データを停止することで,衛星回線への切換に伴い縮小化された帯域の中でもドローンの自律飛行の安全性を考慮することが必要である.そこで,ドローンがセルラ圏外・圏内を移動しても,ドローンと制御プラットホーム間の制御通信を維持するために,以下の三つの機能を有した衛星・セルラ通信動的切換システムを開発した.


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