15歳からの実践教育

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コラム 15歳からの実践教育――高専と電子情報通信学会の未来構想―― Practical Education from Age 15:The Future Vision of KOSEN and IEICE 伊藤 尚

伊藤 尚 正員 富山高等専門学校電子情報工学科

Nao ITO, Member (Department of Electronics and Computer Engineering, National Institute of Technology, Toyama College, Imizu-shi, 933-0293 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.4 pp.363-366 2025年4月

©2025 電子情報通信学会

1 は じ め に

 高等専門学校(以下,高専)は,15歳からの専門教育を通じ,実践的な技術力を備えた人材の育成を目指している.高専では専門技術や知識を重視し,早期から特定分野での知識と技能を磨く機会を提供している.この独自の教育体制は,産業界からも高く評価されており,工業立国である日本において高い付加価値を生み出す土台となっている.

 しかし,少子化が進行する中,産業界や学術界における人材不足が深刻化しており,企業と高専の連携強化がますます求められている.また,情報技術の急速な進展やグローバル化の影響もあり,教育の現場でも国際的な視点や最新の技術動向に対応した人材育成が必要とされている.こうした背景を踏まえ,本稿では,高専教育の現状と特徴を概観し,企業や電子情報通信学会(以下,信学会)との相補的な成長と発展を実現する一つの方法を提案する.

2 これまでの高専教育の特徴

 高専では専門技術や知識を重点的に学び,一般教養よりも専門科目に多くの時間が割かれている.これにより,学生は自分の専門分野を深く追究できるだけでなく,理論にとどまらず実務に役立つスキルや知識を習得することができる.実験や実習といった実践的な教育手法が豊富に盛り込まれ,近年は産学連携も強化され,企業や地域との協力を通じて,産業界のニーズに即した教育や研究が進められている.その結果,学生は社会で求められる実践的な力を身につけられる環境にある.

 教育体制としては,1クラス当りの定員は40名と比較的小規模で,担任制を採用する高専も多いため,教員が学生一人一人と密に関わり,個々の能力や興味に合わせた指導が行われている.これらの教育体制は1年次から卒業年次まで一貫しており,学年が進むごとに専門分野への比重も増していく.こうした独自の教育体制が高専を他の教育機関と差別化し,産業界で高く評価される人材を育成する土壌となっている.

3  近年の高専教育の特徴

3.1 課題発見型インターンシップ(1)

 課題発見型インターンシップ(Theme-Finding Internship,以下TFI)とは,従来の「指示された業務をこなす」タイプのインターンとは異なり,学生が主体的に問題を発見し,解決策を提案・実行する経験を重視するものである.

 富山高専は,工学,国際ビジネス,海事工学といったユニークな学科構成となっている.この富山高専の強みを生かすため,異なるバックグラウンドを持つ3人の学生で学生チームを編成しTFIプログラムに参加している.従来のインターンシップに参加した学生は,その専門分野の中で各自の意見やアイデアを発展させる.すなわち,同じ学科の学生チームは暗黙知の中で意見やアイデアを共有する傾向がある.一方,異なるバックグラウンドを持つ学生から編成されたチームは,学生のアイデアが個々の専門分野にとどまらないようにすることに重点を置き,学生間だけでなく学生と企業の間でも明示的な専門知識を共有することになる.更に,教員が学生と企業の議論から科学的視点で課題をサポートし,研究テーマとなり得る技術課題を抽出できるようTFIプログラムをデザインしている.


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