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福祉情報工学研究専門委員会
カラーユニバーサルデザイン
カラーユニバーサルデザイン(以下「CUD」)とは,色覚の多様性を考慮し,全ての人が視覚情報を等しく認識できるようにするデザイン手法である.特に公共空間や情報伝達の分野で,その必要性が高まっている.対象者は多数色覚型と少数色覚型の両方である.多数色覚型とは眼科学会でいう「正常色覚」であり少数色覚は「色覚異常」に当たる.ここでは当事者や保護者などの意見から差別感の少ない呼称で示している.その少数色覚型は先天性と後天性があり,赤と緑の識別が難しいタイプが多い.日本国内では男性の約5%,女性の約0.2%が該当し,世界全体では2~3億人に上るとされる.
「CUD」という言葉は,2004年に設立された特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構(以下「CUDO」)による造語である.このような試みについて歴史的には1953年のJIS安全色Z9101にも「『色覚異常』の人にも見分けやすい色」という記述がある.1990年代からメディアのカラー化の進展に伴い,この問題への関心が徐々に高まった.「CUD」は「誰にとっても『わかりやすい配色』」を目指すものである.
「CUDO」は「カラーユニバーサルデザインの三つのポイント」を公開している.
これらのポイントを通じ,全ての人が使いやすいデザインを目指すのが「CUD」の基本方針である.
人間の色覚には進化や遺伝,生理的要因による多様性がある.主な先天的な色覚型は眼科医の論文用語では正常色覚と色覚異常(2色覚と異常3色覚)に分類され,色覚異常は1型2色覚,2型2色覚などに分類される.先述の「CUDO」では,人類の色覚は進化の結果の多様性だとして異常正常と呼ばずにC型,P型,D型,T型などの呼称で分類している(詳細は「CUDO」HP参照).また加齢や白内障,緑内障などの疾患により後天的な色覚の変化も生じる.これらの違いを考慮した配色設計により,全ての人が正確な視覚情報を得られる環境を整えることを目指しているのが「CUD」である.
図1のように目には暗いところで働く桿体と明るいところで色を感じるための錐体細胞があり,それぞれの特性で色の見えは変わる(図1).
この特性の差によりある人には赤色が暗く,緑や灰色に近い色に見えることがあり,赤と緑を見分けに用いた情報提示は機能しないことがある.例えば,図2のP型とD型の強度にそのようなことが起こる.また加齢によって視機能は低下し,色覚減弱が起こることもあり,白内障や緑内障,黄斑変性症などの疾患によっても感じられる色は変わってくる.これらの色覚の違いに配慮した配色設計が行われることにより,多様な色覚を持つ全ての人々が視覚情報を正確に理解できる環境が実現する.
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