特集 4. 大規模災害時における臨時通信システムとしてのドローンを用いた自営無線ネットワーク

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通信インフラの災害時対応及び防災・減災に向けた通信技術
――令和6年能登半島地震を風化させないために――

特集

大規模災害時における臨時通信システムとしてのドローンを用いた自営無線ネットワーク

Self-managed Wireless Networks Using Drones for Emergency Communication Systems during Large-scale Disasters

岡田 啓

岡田 啓 正員:シニア会員 名城大学理工学部電気電子工学科

Hiraku OKADA, Senior Member (Faculty of Science and Technology, Meijo University, Nagoya-shi, 468-8502 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.5 pp.433-439 2025年5月

©2025 電子情報通信学会

abstract

 ドローンを用いた自営無線ネットワークの展開による,大規模災害時における臨時通信システムの提供に関する研究・開発について紹介する.本システムでは自営無線として2.4GHz帯無線LANや920MHz帯LPWAを用いている.平野部において2.4GHz帯無線LANを用いたドローン間通信(空対空通信路)及びドローン―地上間通信(空対地通信路),山間部において920MHz帯LPWAを用いた空対地通信路の伝送実験を行い,電波伝搬特性・伝送特性を調べたので報告する.

キーワード:臨時通信システム,ドローン,2.4GHz帯無線LAN,920MHz帯LPWA

1.は じ め に

 大規模災害が発生したとき,人々の安否確認や被災地の被災状況の把握など,様々な情報を交換することが必要である.そのためには通信手段の確保が重要であるが,災害による通信インフラの破壊や通信施設の機能停止による通信の断絶,通信需要増大による通信の混雑など,通信障害をもたらすことが想定される.そこで,通信手段の確保のための一つとして,ドローンを用いた臨時通信システムが検討されている(1)

 その一環として,無線通信システムとして免許不要で容易に利用できる2.4GHz帯無線LANや920MHz帯LPWA(Low Power Wide Area)などの自営無線を使用し,ドローンにより上空に臨時通信システムを構築することを目指している.電波が直接届かない場所へもドローンに搭載された中継機を介して遠隔地との通信を確保する.上空に中継機を確保することで通信機間の見通しを確保し,建物などの障害物の影響も避けることができるため,地上の場合と比べ通信距離を延ばすことができ,被災地を効率良くカバーすることができる.一方,ドローンは風により揺れることや地上からの反射波などの影響により,電波伝搬環境は地上とは異なる特徴を持つことが予想される.安定した通信システムを実現する上で,ドローン間通信(空対空通信路),ドローン―地上間通信(空対地通信路)における電波伝搬特性・伝送特性の把握が重要である.

 そこで,本稿ではドローン間またはドローン―地上間の通信特性の実測結果について紹介する.まず初めに,地形の影響が少ない平野部において,2.4GHz帯無線LANによる電波伝搬測定の結果について述べる(2),(3).このとき,風によるドローンの揺れが電波伝搬特性に与える影響についても評価する.次に,山間部における920MHz帯LPWAを用いた伝送実験の測定結果について述べる(4).山間部では地形の起伏が激しく,通信路の見通しが確保できる場合と確保できない場合が発生する.伝送特性は見通し内/外で大きく変わるため,これを考慮して伝送特性を評価する.


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