特集 3. ドローン無線中継システムを用いた災害時における携帯通信エリアの臨時復旧

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通信インフラの災害時対応及び防災・減災に向けた通信技術
――令和6年能登半島地震を風化させないために――

特集

ドローン無線中継システムを用いた災害時における携帯通信エリアの臨時復旧

Temporary Recovering Mobile Communication Areas Interrupted by Disasters Using Drone Wireless Relay Systems

藤井輝也 江田紀一 米田 進

藤井輝也 正員:フェロー 東京科学大学工学院電気電子系

江田紀一 米田 進 ソフトバンク株式会社基盤技術研究室

Teruya FUJII, Fellow (School of Engineering, Institute of Science, Tokyo, 152-8552 Japan), Norikazu EDA, and Susumu YONEDA, Nonmembers (Technology Research Laboratory, Softbank Corp., Tokyo, 135-0064 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.5 pp.424-432 2025年5月

©2025 電子情報通信学会

abstract

 携帯通信サービスはライフラインであり,その中断は日常生活に大きな支障を来す.そのため,大地震や台風などの自然災害で携帯通信サービスが中断した場合,迅速に復旧する手段が強く求められている.そこで,ドローンに無線中継装置を搭載し,中断している携帯通信サービスエリアを迅速に復旧させるドローン無線中継システムを開発した.本稿では,開発した“災害対応ドローン無線中継システム”の概要を説明する.

キーワード:災害,携帯通信,ドローン無線中継システム,有線給電

1.まえがき

 携帯通信サービスは全国民のライフラインであり,その中断は日常生活に大きな支障を来す.そのため,大地震や台風などの自然災害で携帯通信サービスが中断した場合,迅速に復旧する手段が強く求められている.

 それを解消する手段として,マルチコプタードローン(以下,ドローン)に5G/LTE/LTE-Advanced等の無線中継装置を搭載し,中断している携帯通信サービスエリアを迅速に復旧させるドローン無線中継システムを開発した(1),(2)

 本システムは,無線中継元装置(親機)と無線中継先装置(子機)で構成され,ドローンにより子機を上空100mに停留飛行(ホバリング)させることで,郊外地では半径3~5kmの携帯通信サービスエリアを構築できる.

 ドローンは搭載したバッテリーで飛行することが一般であるが,一回当りの飛行は30分程度であり,30分ごとに地上に降ろしてバッテリー交換をするとその間は携帯通信ができなくなる.そこで,地上からドローン及び子機に有線ケーブルで電力を給電する“有線給電ドローン無線中継システム”を開発した.これにより,長期間の連続運用が可能となった.また,現地に迅速に有線給電ドローン無線中継システムを搬送できるように装置の小形化,軽量化を図り,ワンボックスカー1台に収容した(2)

 本システムは,まず親機が周辺の携帯基地局と接続し,その電波を子機に中継する.子機は中継された電波を増幅して携帯端末へ送信する.しかし,大規模災害では多くの携帯基地局が倒壊し,周辺基地局が見つからずに,無線中継を行えない場合がある.そこで,基地局に代わって衛星通信経由で親機と接続するドローン無線中継システムを開発した(3)

 更に,現地に運用担当者がとどまらずに長期間の運用を実現するために遠隔地から無線中継装置の親機,子機を制御・監視する遠隔制御・監視システムを開発した.また,ドローン飛行操縦者も現地にとどまらずに長期間のドローンの飛行操縦するためにドローン搭載のカメラ映像により遠隔地からドローン飛行操縦や自律飛行を行うドローン遠隔操縦システムを開発した.

 これらの開発により,災害現場に到着後,1時間以内で臨時携帯中継サービスの運用を開始することを可能とするとともに,運用担当者やドローン飛行操縦者が現地にとどまることなく長期間の連続運用を実現した.

 ソフトバンクでは災害時の携帯通信エリア確保として,本システムを2022年度7月から全国の主要拠点に順次配備している(4)

 本稿では,開発した“有線給電ドローン無線中継システム”の概要を説明する.


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