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情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)はスマートフォンの普及をはじめ日常生活に欠かせぬ仕組みとして活用されている.国際的なディジタルデータ量は2010年からの10年間に40倍に拡大すると予測されているが,その利用が最も期待されているのは医療や健康の分野である.我が国の健康,検診,医療,介護のディジタル情報総量は先進国の中でも最も大きいことが知られている.現場では個人の情報が受診施設ごとに独立し,分断されている.分野や領域をまたいで情報をつなぐことができれば個人の生涯にわたる切れ目のないサービスが可能となるばかりでなく,危機的疾病の早期発見や健康と治療に直結する新しい手立ての創出も期待される.今,我々は開かれつつある未知の大きな世界の扉の前に立っている.
世界は,その時々の社会の最も大きな疾病負荷に正面から挑み,様々の解決を見いだしてきた.世界保健機関(WHO: World Health Organization)が1948年に設立されてから今日まで最も力を注いだ取組みは「感染症克服と低栄養対策」であった.この中心テーマの見直しが2011年に国連ハイレベル会合で行われ,生活習慣の改善や早期発見・治療により改善が可能な冠動脈疾患,がん,慢性呼吸器疾患,糖尿病などの非感染性疾患(NCD: Non-Communicable Disease)に国際社会が協力して取り組むべきだとする国連宣言を採択した(1).
今やNCDは全世界の死亡原因の60%を占め,その世界的な負担と脅威が21世紀における開発上の大きな問題であるとの認識から,WHOはその対策にパートナーシップを含めた世界における多分野の協働が必要と宣言文に述べている.NCD対策は健康問題にとどまらず開発課題を内包することから今後20年間に47兆米ドルというばく大な経費が掛かるとの予測もある.NCDの提唱と同時にマイクロソフトはWHOと協働して発展途上国によるコンソーシアム・アライアンスを形成し問題解決に向けて走り出した.
我が国の医療は,国民皆保険(1961年発足)を基軸に様々の社会基盤が整備されてきた.この間平均寿命の延伸は著しく2007年に65歳以上の高齢者が人口の21.5%を超え,世界に先駆けて超高齢社会を迎えた.国民医療費は年々増加傾向にあり,今日では1日1,000億円を超している.国は,医療費を含む社会保障費のバランスをとるため2025年を目標に「自助・互助・共助・公助」の地域包括ケアシステムや地域医療構想など計画的整備に乗り出した.2012年には世界に向けて革新的医薬品・医療機器創出のための“医療イノベーション5か年計画”が始まった(2).
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