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コンピュータが宇宙開発に使われ,その信頼性が大きな問題となった.一般のコンピュータでも故障による経済損失が注目された.そこで電子部品の高信頼化とともに,冗長性を利用したシステム構成の考え方が取られるようになった.1950年代の符号理論の応用,多数決方式(von Neumann),多重化方式(Moore-Shanonn)といったFTC(Fault-Tolerant Computing)の理論的整備期を経て,1960年代では,三重化多数決方式がサターンロケットで,また,機能ユニットの多重化がベル研の電子交換機などで実用化された.その後,1970年代から1980年代に掛けてJPL-STAR,FTMP,SIFTなどのFTCコンピュータのプロトタイプのほか,商用のFTCコンピュータが続々と開発された(1).
1962年のSymposium on Redundancy Techniques for Computing Systemsを皮切りにFTC研究の気運が高まり,1969年,IEEE Computer SocietyにTCFTC(Technical Committe on FTC)が設けられ,1971年からFTCS(FTC国際シンポジウム)の開催が始まった.FTCSは,その後,発展を続け,2000年にはDSN(Dependable Systems and Networks)Conferenceと名前を変え,複数の傘下会議を抱える巨大な国際会議になっている.
当初,FTCSは米国内であったが,FTCS-5から米国外にも出るようになった.当時イリノイ大にいた古賀義亮(防衛大助教授)は日本開催の可能性を模索していた.当麻(東工大教授)がそれを引継ぎFTCS-6で1980年の日本開催を正式に提案し,FTCS-8で日本開催が最終的に決まった.それに備え,1979年頃から樹下行三(阪大教授)を中心に有志がボランタリーなFTC研究会を始めた.これは現在も続いている.
京都でのFTCS-10の後,次の日本開催に備え樹下,矢島修三(京大教授),当麻らによるFTCS国内委員会が本会に設けられた.これを公的な常設組織にすべく,1985年4月に本会の情報・システム研究グループの下にFTS研専が設置され(注1),年4回の研究会が催されることになった.ここからFTS研専の有史時代が始まったのである.
一方,1980年9月,IFIP TC-10にWG-10.4(Dependable Computing and Fault Tolerance)が設けられ,1995年J.C. LaprieによりDependabilityの概念と用語が提唱された.Dependabilityの概念は我が国にもいち早く紹介され(2),FTS研も2002年4月からディペンダブルコンピューティング(DC)研専と名称を改め現在に至っている.
(1) 当麻喜弘,“フォールトトレランスの歴史,”信頼性の歴史,pp.44-54,日本信頼性学会,Nov. 1993.
(2) 当麻喜弘,“ディペンダビリティに関する諸問題,”1996信学総大,no.TD-1-1, March 1996.
(平成29年3月21日受付 平成29年6月7日最終受付)
(注1) すぐ後にこのグループは情報・システムソサイエティと改組された.
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