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ディペンダビリティとは,「サービスが正しく行われる性質」であり,定量的に評価できる信頼性だけでなく,人為的なミス,悪意のある改変などの要因による非定量的な性質も含む広義の信頼性を指す用語である.ディペンダブルコンピューティング(DC)研専は,LSI設計・検証・テスト,ディペダンブルシステム,ディペダンブルネットワーク,ディペダンブルハードウェア,ディペダンブルソフトウェア,フォールトトレランス,信頼性,安全性など,幅広い分野でディペダンビリティを扱っている.
人工知能,自動運転,IoTなど,情報技術の利用が拡大するとともに高度な安全性が求められ,ディペンダビリティへの要求がますます高まっている.このような状況での,DC研専で扱う研究分野の課題と抱負について述べる.
DC研専で活発に活動するコミュニティの一つがLSIテストである.LSIテストでは,省電力テスト,遅延テスト,圧縮テスト,組込み自己テスト,メモリテストなど多くの重要な技術がDC研専で議論されてきた.
最近では,経年劣化による信頼性低下の懸念,LSIレベルでのハードウェアセキュリティへの要求拡大を受け,信頼性やセキュリティのためのテスト技術の応用が期待されている.更に,機械学習を利用したテスト品質向上とテストコストの削減など,テストコミュニティが扱う分野や手法が拡張している.
DC研専では,鉄道をはじめとする交通システムの安全性,ネットワークのセキュリティに関しても活発な議論が行われている.人工知能の応用の拡大,自動運転の実用化,IoTの普及などに伴い,セーフティクリティカルな場面での利用拡大,個人情報など個人の権利を侵害する懸念,IEC61508,ISO26262など機能安全に関する国際規格の導入など,システムのセーフティ,セキュリティに関する研究成果への要求が高まっている.
前述したように,ディペンダビリティの研究の重要性が増している.DC研専の大きな強みは,LSI,交通システム,ネットワークとアプリケーションを超えて,ディペンダビリティに関して議論できる場であることである.
他の研究会との合同開催も盛んに行っており,SWoPP,デザインガイア,ETNETではハードウェアに関わる広い分野での議論を行っている.更に,平成26年度にはソフトウェアサイエンス(SS)研専,平成27年度には信頼性学会との共催を開始し,ソフトウェア,ハードウェア,システムのディペンダビリティに関して,より深い議論ができる場となっている.
今後も,アプリケーションを超えての議論を活発化させ,ディペンダビリティ強化のための新たな発想につながる場としてのDC研専の役割を担っていきたい.DC研専での議論が,日本そして世界を代表するディペンダビリティの研究成果につながることを期待する.
(平成29年5月19日受付 平成29年6月19日最終受付)
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