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世の中では,ハードウェアは「硬いもの」,ソフトウェアは「柔らかいもの」というのが常識であろう.従来のハードウェアは,一旦設計・製作してしまうと変更が難しい.ちなみに,ノイマン形コンピュータの特徴の一つは,その構造並びに機能が固定的なことである.この固定的な構造・機能に従来のコンピュータが抱える問題の多くが起因しているという指摘が古くからなされ,適応性を求める各種の試みが行われてきた.
一方,FPGA(Field Programmable Gate Array)に代表される書換え可能なデバイスの発達とともに,1990年代初めからFPGAによる適応性を求める研究が続けられてきたが,ストリーム処理の分野で商用化が進むとともに,動的リコンフィギュラブルプロセッサなどの専用デバイスも登場し,更に応用分野が広がってきた.
研専名である「リコンフィギャラブルシステム」とは,FPGAや動的リコンフィギュラブルプロセッサに代表される,いわゆる「柔らかいハードウェア」の再構成可能という特徴を最大限活用し,アプリケーションに合わせてデータパスを含めたハードウェア構成を適応的に変更するシステムの総称である.言い換えると,問題の解法アルゴリズムをハードウェア化してユーザが柔らかいハードウェア上で直接実行することができる.これは専用ハードウェアを開発する方法と比べて柔軟であり,それぞれのアプリケーションに応じて最適な構成をとれる.このため,高い柔軟性と性能を兼ね備えるシステムとして大きな期待が寄せられている.
リコンフィギュラブルシステムの実現には,アーキテクチャ,デバイス,設計技術,CAD,システム技術,並列処理,アプリケーションなど広い範囲の研究開発が必要である.日本は早い時期から多くの研究開発が行われてきたのにもかかわらず,その研究成果はそれぞれの分野の研究会で個別に発表され,「リコンフィギャラブルシステム」という立場から議論し,技術交換を行う機会が多くはなかった.
そこで,定期的に研究会を開催して関連する分野の研究者に広く技術交換の機会を提供し,産業界と大学等研究機関の交流の機会を増やすことにより当該技術の発展を促進することを目的に,まずはコンピュータシステム研専所属の第二種研究会を2003年に発足させた.第二種研究会における実績は,年3回の開催において毎回の出席者数が約70~80名,発表件数は平均27件であった.
この第二種研究会の実績を基に積極的な活性化策を施す方針の下,リコンフィギャラブルシステム研専設立を申請し,2005年度からは第一種研究会としての活動をスタートした.活動内容は,定期的な研究会開催のほか,リコンフィギュラブルシステムの啓発普及を図るテキストの編集,和文誌と英文誌で交互に年1回の特集号発行,国際会議や産業界との連携などである.これらは12年間の研専活動において着実に達成された.
(平成29年5月8日受付)
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