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IDCの調査では,地球上で1年間に生成されるデータは,2020年には44ZByteになると予想されており,世界のビッグデータ市場は,年平均11.7%の二桁成長が続いて2020年には2,030億ドル(20兆円)の規模になると言われている(1).データ工学研専などを中心とするコミュニティでは,ビッグデータというキーワードが使われるようになるはるかに以前から,データ量の爆発的な増加に着目してきた(2).
ディジタル世界全体に対するIoT端末の割合は,2013年には2%であったのに対し,2020年にはこれが10%に達すると見られている.人間が読み書きできるデータ量は限界があるが,もはやデータを生成するのもデータを直接利用するのも,人間ではなくコンピュータ機器であるケースが増えてきており,そうなると人間の限界には縛られない.データ工学研専が主催するDEIM Forum 2017において,発表数が多かったトピックの上位は,情報検索・推薦,情報抽出・要約,データマイニング,テキストマイニングなどであった.これらの研究は,コンピュータがデータを解析して情報を抽出するための試みである.このようなフレームワークで扱えるハードやソフトの限界までデータ量は増加し続けるものと予想され,またその限界を引き上げるための研究が進められるであろう.
データ工学研専の対象とする研究内容は拡大を続けている.現在,情報処理分野全体で最も注目を浴びている研究領域は人工知能であると言える.人工知能の今回のブームは,表面的には深層学習の技術開発が進められ機械学習の正答率が飛躍的に向上した点などが注目されるが,実際のところは大量のデータをコンピュータで扱うことが容易になった点が根本的な要因となっている.その点でデータ工学研専が扱っている研究は,周辺領域との融合が進んでいると考えられる.WebやSNSなどのトピックに関しては,既にデータ工学研専に融合したと言える.
またデータ処理を行う基盤システムについても現在,ハード・ソフト共に大幅な進化が見られており,これらの研究に関しては,コンピュータシステム基盤の研究領域との融合が進むものと考えられる.従来そちらの研究領域で開催されてきたイベントの流れを組む会議xSIG(http://xsig.hpcc.jp/ )にデータ工学研専が協賛するなど,周辺領域との連携を増やしつつある.
(1) IDC, “Double-digit growth forecast for the worldwide big data and business analytics market through 2020 led by banking and manufacturing investments, according to IDC,” Press Release, March 2016.
(2) 喜連川 優,“情報爆発のこれまでとこれから,”信学誌,vol.94, no.8, pp.662-666, Aug. 2011.
(平成29年5月20受付 平成29年6月10日最終受付)
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