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パターン認識・メディア理解(PRMU)研専では,その前身であるパターン認識と学習(PRL)研専が1972年4月に最初の研究会を開催して以来,2017年3月までの45年間に438回の研究会が開催され,8,584本の研究発表がなされた.現在,二日間の研究会を年8回開催し年間200本を超える研究発表があることから,2021年には設立50年,2024年には開催500回,発表論文10,000本に達する.
1972年に発足したPRL研専は,更に遡れば,1952年に発足したインホメーション理論研専と,1954年に発足した自動制御研専をその源流とする.この二つの研究会は1962年から緊密な友好関係にあり,1972年に,飯島泰蔵先生を委員長とするPRL研専と,福村晃夫先生を委員長とするオートマトンと言語(AL)研専とに改称再編された.情報の表現としての「パターン」と「言語」のうち,パターンを担うPRLと言語を担うALという整理であった.このとき,飯島,福村両先生によって書かれた檄文の一部を引いておきたい(1).
「貴重な研究業績を,単なる学問発展のために昇華させるというだけでなく,このことによって新しい技術を生み,新しい技術社会の招来に対して大きく貢献しようとするのでなければ,工学を以て任ずるところの当学界に対して,真の寄与をなしたことにならない」(飯島)
「情報技術者は,現在,家なき子である.だからこそ,実際という大地に根を下ろし,理論の骨格に支えられた,住み心地良い我らの巣が欲しい.そして,応用という広漠たる空間に自由に手をさしのべうる明日を築きたい」(福村)
その後,1986年にパターン認識・理解(PRU)研究会と改称し,「シーン理解,知識獲得,知識モデル化の研究,工業応用,医療応用,教育応用,文書理解,顔画像認識,動画像認識」へと対象を広げる.そして,インターネット,マルチメディアの興隆を背景に1996年PRMU研専と再度改称し,「情報を機械に取り込むためのセンサとして画像や音声を扱うこと」から「機械を通して情報を人間に伝えること,すなわち,インタフェースとしての画像や音声」へとそのスコープを広げた(2).
およそ半世紀にわたる本研究会の活動は,昨今の機械学習の興隆につながるパターン認識基礎理論と画像を基点として映像,音声,言語をも巻き込んだ広範な応用領域との間をバランス良く行き来したものであった.そして通常研究会以外に本分野の啓発,普及,発展を目的とした活動にも力を注いできた.本年で20回を迎え参加者700人を超えるまでに成長した画像の認識・理解シンポジウム(MIRU,情報処理学会CVIM研究会と共催),若手研究者の育成を狙い自主的活動を支援する若手プログラム,学部学生の教育を主眼としたアルゴリズムコンテストなどである(3).また同時に,時代の変遷を見据え,今後取り組むべき課題を再考し問題提起を行う取組みも行っている(4),(5).
(1) 飯島泰蔵,福村晃夫,“研究会名の改称と今後の方針について,”信学技報,AL, PRL72-1, pp.1-4, April 1972.
(2) 大田友一,武川直樹,横矢直和,全 炳東,萩田紀博,“「パターン認識・理解」から「パターン認識・メディア理解」へ,”信学技報,PRMU96-1, pp.1-8, March 1996.
(3) 内田誠一,藤吉弘亘,前田英作,“パターン認識・メディア理解研究会(PRMU)と画像の認識・理解シンポジウム(MIRU),”信学情報・システムソサイエティ誌,vol.21, no.3, pp.14-16, Nov. 2016.
(4) パターン認識・理解の新たな展開─挑戦すべき課題─,小川英光(編著),電子情報通信学会,1994.
(5) 鷲見和彦,内田誠一,佐藤真一,佐藤洋一,日浦慎作,福井和広,馬場口 登,“パターン認識・メディア理解の10大チャレンジテーマ,”信学誌,vol.92, no.8, pp.665-675, Aug. 2009.
(平成29年5月15日受付 平成29年5月23日最終受付)
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