電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
人工知能と知識処理研専並びに人工知能と知識処理研究会は,電子通信学会情報・システムグループ(委員長:野口正一教授(当時))から1985年12月10日に設立趣意書が提出され,その後設置,研究会は1986年度から(第1回研究会は1986年4月22日),今日まで継続的に活動を続けている.当時の背景として,1982年に(財)新世代コンピュータ開発機構(ICOT)が通産省(当時)主導で設置され,いわゆる第五世代プロジェクトがスタートした.本プロジェクトは,人間の能力を超えた知識処理,人工知能プログラムを目指した知識表現技術,高度推論を可能とする人工知能向けプログラミング言語の研究と,それを効率的に動作させる並列コンピュータ(第五世代コンピュータ)の開発を目的としていた.当時,既に人工知能に関する研究会としては,情報処理学会の「知識工学と人工知能」研究会(現:知能システム研究会)が発足していたが,こちらが知識工学などソフトウェア中心であるのに対し,本会では,ハードウェアを含めた人工知能システムや従来型処理(ここでは逐次処理)との融合なども含め,広く総合的に扱うとしている.また,AAAI,IJCAIなどの人工知能に関する国際会議の受け皿組織としての役割もうたっている.(なお,人工知能学会は,1986年7月に発足している.)研究会を運営する人工知能と知識処理研専の初代委員長として,上野晴樹東京電機大学教授(当時)が任命されている.
設立時は第二次の人工知能ブームであり,それまでのtoy problem中心の研究から,人工知能の応用システムと位置付けられたエキスパートシステム(医療診断,VLSI設計システムなど),知識表現,機械翻訳(自然言語処理),文字認識・画像認識や,そのプログラムを効率的に動かす専用マシン(例えばLISPマシン)や第五世代が目指す並列マシン(PSI/PIM)などの研究が盛んになった.この中で,本研究会で目指していた「アーキテクチャ・ハードウェア」の研究は初年度にはあるものの,その後は応用システムや知識表現・推論などの理論的基礎研究が中心となっている.開始から第五世代プロジェクトが終わる1992年まで発表件数も順調に増え,初年度の43件の発表が1992年には100件を超している.「エージェント」の名前が初めてセッションや論文タイトル中に現れたのもこの年で,共催の並列/分散/協調処理ワークショップにおいてであった.その後,発表件数自体はやや減少するものの,1996年頃から再び増加に転じ,Web検索,マイニング,機械学習,エージェントなど,現在でも盛んに研究されているトピックの研究が増えた.2000年前後には再び100件近辺の発表を維持する.しかし,2005年付近から徐々に発表件数が減少し,近年は年間50~60件程度となっている.これは,本会が当初研究対象とした人工知能用のハードウェアは商用化されている汎用マシン中心となったことや,人工知能の分野が広がりを見せ,その対象に特化・細分化した研究会が増加してきたことなどが要因と考えられる.
(平成29年5月2日受付)
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード