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減災情報システム(DRIS)特別研専は,東日本大震災の経験と反省から,地域安全学会とともに,情報通信系と防災系の分野をまたいだ継続的な交流と情報交換・議論の場として合同研究会を開くために設立された.
東日本大震災において,研究者個人レベルによる支援はともかく,本会が主体的に減災活動に貢献した事例は,残念ながら余りなかった.これは,学会の組織として,何ができるのか,何が求められているのかが分からないという状態であったように思われる.そうならないためには,平時からの異分野交流が欠かせない.
本研専では災害対策の中で「減災」技術に重きを置いている.土木や建築といったハードが主体であった「防災」に比べ,被害拡大を軽減するのを目的とする「減災」では,情報通信技術が果たす役割が大きい.そしてその重要さは,計算機やインターネットの普及に伴い,この20年の間に格段に拡大してきている.元々道路・電気・ガス・水道を指していた災害時のライフラインに,情報通信網が加わったのは,東日本大震災からと言える.ただ,技術の進化や,はやり廃りの早い情報通信技術を,50年・100年のスパンで考えなければならない防災技術にいかに取り込むかという問題も同時に発生してきている.このような問題の解決のためには,防災研究者と情報通信の研究者が専門の垣根を越えて継続的に取り組む必要がある.
このような背景から,2014年に本研専が設立された.
設立後,まずは「“人”と“情報”を考える」というテーマでのワークショップを開催した.このワークショップでは,災害の現実を知る,ということで,被災地や災害救助の応援を担われた方々を代表される様々な方に講演頂き,その現実に対して技術で何ができるのか,ということの共有を試みた.御講演では,樋口正也氏(日本IBM)に,震災後の復興に向けたICTの活用事例と「SAHANA」の取組みについて,関治之氏(sinsai.info総責任者)には,sinsai.infoやOpenStreetMapによるクラウドソースによる情報収集システムについて,中村通子氏(朝日新聞社)には,報道の現場として災害をどう伝えたかについて,今井建彦氏(仙台市)には,東日本大震災と自治体ICTに関する話題を,林野幸栄氏(矢巾町役場)には,行政情報システムの復旧活動について,お話を頂いた.
その後,地域安全学会と本会,更には関連する他の学会を含めて広く発表を募集し,年1,2回のペースで通常の研究会を開催してきている.
主な研究発表テーマとしては,幅広く減災に資する情報通信技術や防災技術,防災訓練の支援技術などが取り上げられることが多い.例えば,SNSの利用や分析,あるいはスマフォなどを使ったアプリ開発,災害時における通信の確保,災害被害のセンシングや分析,調査手法,災害シミュレーション,災害情報システムなどがある.また,純粋な技術だけではなく,情報ボランティアの組織化や地域における防災訓練・対策への支援など,分野横断ならではの話題も発表・議論されている.
また参加者も,両学会の研究者に加え,自治体の方や防災機関の方が聴講されていることもあり,幅広い議論が展開されている.
(平成29年5月17日受付 平成29年6月7日最終受付)
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