巻頭言 出会いは新しい発見の場

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Vol.100 No.10 (2017/10) 目次へ

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 日々,いろいろな出会いがあり,いろいろな人と知り合いになります.楽しい人,気が合う人,少し気難しい人,などなど.出会った一人一人がいろいろな考えを持っていて,全ての物事に対して同じ考えの人に出会ったことはありません.そして,彼らの考えや言葉が,自分に対して何らかの新しい発見をもたらしてくれています.

 思い返せば,最初の出会いは幼稚園で一緒に時間を過ごした先生や友達だったかもしれません.これをスタートに,小学校,中学校,高校,大学,会社など,新しく環境が変わるたびに,その都度,新しい出会いがあり,様々な人と知り合うことができました.また,社会人になり,仕事を行う上で,他の会社の方,例えばビジネスパートナーや会合で同席された方など,様々な方と知り合いになることがあります.そして,それらの方々から,様々な発見をもらっています.今後も,一つ一つの出会いを,そして,それによって得られる新しい発見を大事にしていきたいと思います.

 年に1回,高校の同級生との同窓会に参加していますが,高校生活を共にした友人たちは今,様々な職種についていて,自分とは異なった分野,活動環境で生活しています.そのため,自分とは異なった考え,ものの見方をするところがあります.そんな彼らと話すことから得られる気付きは,時として想像もつかなかった大きな発見である場合があります.このように,自分と大きく異なった考えに出会うとき,より大きな発見があると思います.

 さて,この1年間,本会の企画理事という役割を務めてきて改めて感じたことは,会員の皆さんに新しい出会いの“場”を提供することが,学会の一つの大きな役割だということです.現在,学会では,研究会,セミナー,講演会,見学会など,新しい技術,知識に触れる“場”を提供しています.これらの“場”を通じて,本会の会員の皆さんには,新しい発見をして頂きたいと考えています.

 特に,総合大会,ソサイエティ大会は,様々なテーマの技術者,研究者が同じ場所に一堂に会する“場”であります.2017年3月の総合大会では,100超のセッション,2,200超の講演がありました.9月のソサイエティ大会では,4ソサイエティの大会ですが,70超のセッション,1,200超の講演が予定されています(8月15日現在).この大会を単に自分の研究成果報告の“場”とするのではなく,新しい出会い,新しい発見の“場”として考えて頂きたいと思います.

 先に述べたように,自分の考えと異なった観点で考えることができる人々との議論は,より大きな発見を与えてくれるかもしれません.「イノベーションのジレンマ」の著者である米国の経営学者クレイトン・クリステンセンは,イノベーションを「一見,関係なさそうな事柄を結びつける思考」と定義(朝日新聞,2013年12月5日朝刊)しています.つまり,イノベーションとは,0から新しい技術が誕生することではなく,既存の技術と技術が出会うことで,新しい技術が誕生することだと思います.様々なテーマが議論されている大会という“場”で,自分の専門分野のセッションだけに参加・聴講して帰ってしまうことは,この折角のイノベーションのチャンスを逃していることになると思いませんか.自分の専門分野から,ちょっと離れたセッションものぞいてみてほしいと思います.そこには新しい発見があるかもしれません.宝物が埋まっているかもしれません.気軽に,そして,少し勇気を持って,隣の会場のドアを開けて入ってみて下さい.

 また,大会期間中に開催される懇親会やウェルカムパーティーも,新しい出会いの“場”として活用してほしいと思います.セッション会場ではできなかった話や,全く関わりがなかった分野の方と話をするチャンスです.偶然,隣にいらっしゃる方が,新しい発見をもたらしてくれるかもしれません.思い切って,声を掛けてみて下さい.

 本会は,今後も技術と技術が出会える“場”を数多く提供し続ける役割を担っていきます.会員の皆さんには,これらの“場”を通じて少しでも多くの出会い,そして,新しい発見を体験してほしいと思います.


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