記念特集 2-2-7 看護の現場で期待する情報通信テクノロジーー

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Vol.100 No.11 (2017/11) 目次へ

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浅香えみ子 獨協医科大学越谷病院

Emiko ASAKA, Nonmember (Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital, Koshigaya-shi, 343-8555 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.11 pp.1258-1263 2017年11月

©電子情報通信学会2017

1.は じ め に

 看護師の職務は看護師保健師助産師法が定める療養上の世話と診療の補助業務である.看護師の就業場所の6割強が病院であることから,疾病を有する人いわゆる患者を対象に看護を提供する印象が一般的である.しかし,健康問題を有する人には回復を支え,健康な人には健康の保持増進を支援する.すなわち,全ての方々の健康に関わる業務内容が看護師の職務である.

 医療はますます高度化していくのに対し,医療の作業は手工業のままのような印象が実感としてある.それでも,やらなければならないと自分の身を削りながら働くスタッフをどうにか助けたいと思いながらも,業務内容を工夫するだけの方法には限界があり,うまい手立てが見つからない.もし,我々の現場で使える何かの技術があり,ほんの少しの変化をもたらすだけでも看護の現場は大きく変わると思う.

 本稿では,看護師が活動する場ごとに区分をし,業務内容の紹介とともに,そこにある電子情報への期待について述べる.その際,超高齢社会にある本邦が構築した地域包括ケアシステムによる看護師の活躍の場の変化を予測した上での見解も含める(図1).

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2.看護師の就業状況

 看護師の就業者数は76万7,807人(2000年)から99万1,886人(2015年)と20万人を超える増加がある.一方,病床数は164万7,253床(2000年)から156万5,968床(2015年)と10万床近くが減少している.病床100床当りの看護師数は46.6人(2000年)から63.3人(2015年)と増加した.

 現在の内訳は病院や診療所に81.3%,介護老人施設(居宅を含む)8.7%,訪問看護2.6%,社会福祉施設1.7%,教育機関1.2%,保健所・市町村2.7%,事業所0.7%,その他0.1%である.病院や診療所の医療機関が大部分を占めている.

 医療介護の需要が確実に増加し,団塊世代が後期高齢者になる2025年に向けては,高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的の下で,可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)整備が進められている.この背景と同時に病院機能の再構築も進められ,患者の視点に立って,どの地域の患者も,その状態像に即した適切な医療を適切な場所で受けられることを目指し,介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療等の医療・介護施設の拡大が見込まれている.

 看護師の就業場所は医療機関から在宅等の地域へと拡大していくことが必要とされている.

3.病院機能における電子情報への期待

3.1 病院機能

 医療機関である病院・診療所においては病院が占める割合が高い.その病院も機能別に高度急性期,急性期,回復期,慢性期と区分があり,それぞれに提供する医療が異なる(表1).これらはそれぞれが対応する患者の状態が異なることを意味し,当然看護の体制も異なってくる.

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 主な相違は,診療の補助業務と療養上の世話の量と質に表れている.診療特性の違いとしては,身体侵襲度(用語)の高いものや最先端の医療技術を必要とする高度急性期機能においては,緻密な計画・実施・評価を必要とする.この実践においては,専門性の高い多職種のチーム連携により正確な実施が求められる.この対象となる患者の重症度や医療依存度は高く,多くのリソースを活用した診療が行われる.

 急性期機能においては,変化率が大きい病態を速やかに安定させるために,標準的な医療を適切に実施することが求められる.傷病の発生直後から急性病態の安定化には効果的かつ効率的な診療が行われる.

 回復期機能においては,治療を終え元の生活を再獲得するための診療が行われる.診療の介入量は高度急性期また急性期と比して格段と少なくなる.

 慢性期機能においては,回復過程が緩徐な傷病や完治が望めない,若しくは,徐々に悪化を余儀なくされる病態を診療する.

 このように病床機能から俯瞰すると,診療の補助のウェイトが多く療養上の世話が少ない超急性期から,診療の補助が少なく療養上の世話が多い回復期,慢性期といったイメージがある.業務割合としては事実であるが,超急性期にはこれに特有な療養上の世話があり,慢性期に特有な診療の補助業務が存在している.そのため,看護業務の実践の在り方は病床機能区分ごとに違いが生まれる.

3.2 看護業務における情報収集と解釈のサポート

 病床機能区分に示したように,看護の在り方は多様に存在している.その中で筆者の所属する病院機能から見える電子情報への期待を整理する.

 診療とともに,患者の治療を安全に進めるにあたっては,身体情報を迅速かつ的確に把握し,判断する.この情報収集に際しては,病態変化の予測に応じた内容を必要なタイミングを判断して行う必要がある.何の情報をいつ収集するのか?の答えは,全看護師が入職直後から持っていない.患者個々の病態,治療内容によって変化するために,患者の病態,治療内容が理解できなければ,必要な情報は収集できない.また情報収集できなければ病態,治療内容を理解することもできない.

 現状は,新人看護師として入職後から看護師の院内教育やOJTにより,学習と経験を重ねて判断力を養うことによって対応している.本来は看護師国家資格を有する者であれば習得しているべき能力であると考えられるが,基礎教育の学習がそのままの形で臨床活用できるものではなく,経験を基に使える知識として再構築が必要になるからである.

 この育成プロセスは,看護師の業務負担の要因となっている.看護師自らが看護業務を行いながら,経験の浅い看護師の教育を行うことは簡単なことではない.また,教育の成果はすぐには表れないため,経験の浅い看護師の業務をも抱えることになり,業務負荷が高くなることもある.

 現在の情報収集の方法は看護理論などを基に,患者の全ての情報を記載する形式がほとんどである.それらには病態に関連して変化する患者情報から患者の容態を解釈する機能は含まれていない.学習などの技術を用いて,経験を有する看護師が行う情報収集時の思考,すなわち標準的知識の活用と経験による情報の取捨選択の判断を患者の状態の変化に合わせてカスタマイズし,経験の浅い看護師も間違った判断をしなくてもよくなるような実践的なツールを作ることはできないだろうか.経験を有する看護師の思考パターンを学習できれば経験の浅い看護師も,患者ごとに適切な情報収集力や解釈の能力が育成され,結果として看護師全体の業務量負荷を軽減できるかもしれない.

 このツールの活用にあたっては,実務の状況に適応した形式を期待したい.分厚い教科書や専門書を常に傍らに置くことは現実的ではないし,また,タイムリーに活用できるものが有用であろう.また,患者の命に関わることなので,間違った情報を提供することも避けてほしい.昨今デバイスを用いたツールも存在しているが運動量の多い看護師が携帯しやすいことや,患者安全の視点から感染防止の考慮も必要な要素である.

3.3 院内の多職種との情報連携

 医療職の専門化が進むとともに,これらが有機的に連携することで効果的かつ効率的な成果を上げるためにチーム医療が推奨されている.量と質共に多くある業務を分担し,そして統合して医療サービスにつなげるものである.何をどのように分担し,その過程と結果をいかに統合するかがポイントになる.

 課題別に職務特性を基に役割を分担することは比較的容易である.問題は過程と結果の統合である.専門職者が一堂に会してディスカッションをすることで,診療報酬による支払いが保証されている部分もあるが,多職種(用語)が集合し,短時間で目的を果たすことは非常に難しい.そこで,その過程を各職種からの情報提供として共有したい.そして,過程を共有することで結果の統合であるディスカッション時間の効率化を期待したい.電子カルテシステムがその機能を持っているが,カルテとして記録したものは全て正式文書として残ることから,リアルタイムであるが確実な裏付けがない情報は入力されない傾向がある.

 これに対し,自由度のある情報共有としてクラウドを用いた運用を聞くことがある.ただし,患者の個人情報保護の観点からはセキュリティに十分な注意が必要であり,現状においては,我々看護師が患者情報を安心してアップできるシステムはない.高いセキュリティとプライバシー保護が保証され,かつ患者を取り巻く多職種の人とも患者の情報共有ができるイントラネットの中で掲示板のような形式の情報共有の場が作られると多職種の有機的なつながりが促進されるのではないかと期待する.

3.4 患者の家族,キーパーソンとの情報連携

 医療の提供は,患者自身の意思決定による同意をもって行う.未成年者や意思決定が困難な場合はその家族等の代理意思決定によって行う.意思決定をする患者本人の意思が最優先されるものの,家族やその他の入院過程を支えるキーパーソン(用語)の意思決定も医療実践のチームメンバーとして重要である.そのため,患者の家族,キーパーソンとの情報共有が必要になる.

 患者の家族,キーパーソンは患者や医療関係者と異なり,常時病院内にはいないため共有できる時間や情報量が限られている.また,一般には医療に関する知識はないため,我々医療者からしても,彼らに対し,分かりやすい言葉で端的に状況を共有することが難しい.一方,我々も,家族等が持つ情報を収集し,医療者の中で情報の共有を行っている.しかし,現状は,患者の家族,キーパーソンは十分な情報共有をしているとは感じていないと思われる.時に,医療者さえも家族から提供される患者情報の不足に気付くことがある.双方に不足を感じたときに速やかに補える場がないのが現状である.

 医療に関連する情報は,患者自身の個人情報であり,身体的,社会的,精神的あらゆる側面において患者個人に大きな影響を及ぼす特性から,間違いが生じないように,漏えいしないようにと厳重に注意をして扱う.その観点から“いつ,誰から,誰に,どのような意図で,どのような内容が”情報として提供されたかを確認する.そのため,患者家族,キーパーソンからの情報は病院に来院した際の面談を通して行うことがほとんどである.そのため情報共有の時間は少なく限られており,ともすると入院時の情報収集以降の追加がなされないことさえある.

 患者家族,キーパーソンは就業していることが多く,病院が機能する時間帯に来院することは難しいのが実情である.それぞれの生活を営みながら,患者の療養を支えることを医療者は考慮するべきであることは分かっているが医療者も24時間を通して対応が可能な体制にはない.そこで,誰もが持っている端末を利用して,自宅や職場からでも病院に接続でき,家族と医療関係者双方が必要な情報を共有できるシステムはできないだろうか.可能な限り顔を合わせたコミュニケーションが患者家族等との情報共有に必要であることは十分分かっている.しかしながら,核家族や独居者が多くを占める時代に,ましてタイムリーな情報共有が求められる医療場面においては,情報共有の在り方も同時に考えてもらえると非常にありがたい.

3.5 地域連携

 2025年に向けて医療は在宅場面に大きくシフトすることになる.患者が病院医療の場から自宅という地域に帰る際には,多様な連携が必要になる.病床機能区分が進み,医療依存度を残したまま退院し,在宅医療を継続する場合や,生活支援を要する中で,生活支援が始まる場合など様々な状態を地域に連携していく.地域との連携先は訪問看護師(訪問看護ステーション),在宅医(開業医),薬剤師(薬局)等の多職種,多くのサービス提供事業者と連携される.この情報連携が円滑であるほど利用者の満足度は上がるとされている.地域における情報の扱いは,一定の組織内における活用ではなく,多種の事業所間で連携される特徴がある.介護保険や医療保険の制度等による仕組みの違いはあるものの,情報が患者の医療や生活を地域につないでいる.

 このような業種の垣根を超えて,患者の情報を共有できるシステムは作れないだろうか.このときの課題も,これまで同様高いセキュリティを前提として,必要な情報を必要な業種につなげるということである.介護保険の中でケアマネージャが情報のコーディネーションをする場合であれば,情報の効果的な連携が可能になるが,そのような介入がなければ,個々の事業所ごとに連携を図る必要が生まれる.同じ情報を複数個所と連携を図ることは非効率である.連携に関わる所定の関係者が患者情報にアクセスできる仕組みと情報をどの業種の人が見ても,間違いや誤解が生じないように情報の標準化が必要だと考える.

 個人情報が守られつつ,必要なところで効果的に活用されるシステムを期待したい.病院から事業所に向けて連携情報を整理するのではなく,集約された患者情報を必要に応じて事業者が活用していくシステム,すなわち情報の一元化が可能なシステムを期待したい.

 この病院から地域連携に向けた情報システムが,逆向きに地域から病院へとつながることが可能になると,救急医療の問題である救急医療受診後の地域連携の問題(出口問題とされる,急性期治療後の転院先,退院先が選定できず,救急病床が埋まったままになり,救急診療が滞ることなど)の解消にも期待できる.

3.6 簡易な方法で情報入力できるシステム

 様々な情報は電子カルテを介して共有されている.有用なシステムである.ただし,その情報は医療者が収集したデータを収納されるべき枠組みの中に入力して初めて情報となる.この入力作業が医療者の業務量の多くを占める.データ入力の状況は,多様に発生する患者ニーズに対応しつつ,その間を縫うようにデータ入力に努力している.しかし,患者対応の優先実施により入力途中の中断が多く生じることと,そもそも入力時間の確保ができずに,患者受け持ち時間終了後に入力をすることが多くある.情報の価値はタイムリーな共有であり,このタイムラグは改善するべき課題である.

 データ入力がタイムリーに行えない原因は,その時間を確保する業務のマネジメント不足,情報として扱うデータの解釈不足,データ入力方法が看護業務の実施スタイルと合わないなどが考えられる.前者2項目は,データを扱う看護師の対応力の課題である.データ入力方法と看護業務実施のスタイルとの関係において電子情報システムへの期待が考えられる.そこで,データ入力方法と看護業務の実態について説明を加える.

 看護に関するデータ入力は,電子カルテが設置されるスタッフステーションで行われる.看護実践の発生場所においてデータが入力されるシステムも一部存在するが,多くの作業は看護実践が終わった直後ではなく,一連の業務終了後,若しくは一日の業務終了時にスタッフステーション内で入力されている.看護師の行動は,一つの目的行動ごとにスタフステーションと患者の間を往復するものではなく,複数の目的を持ってスタッフステーションから離れている.そして,担当する患者以外の対応も同時並行で行うといった特徴がある.その間の業務遂行は,体を使った援助行動であり一般人の早歩きの速度での移動を伴う.

 このような業務特性から,電子カルテへのデータ入力という椅子に着座し,パソコン画面に向かうという静の行動を組み込むことが非常に難しく,行おうとするときに,業務の効率が低下すると感じる.また,複数の業務終了後に記憶を想起しながらのデータ入力は時間軸の前後関係が曖昧になり抜けを生じる原因となっている.何よりも,時間を要し非効率的である.そこで,電子カルテを病室の近くに設置する方法が選択されることもあり,その成果を測定した調査もある.しかし,発生源でのデータ入力が可能になるものの業務の効率は上がらないことが確認されている(1).その原因は病室が患者の療養環境であり生活の場であることから,そこでデータ入力作業を行うことへの懸念が看護師にあることや,実施場所の近くに入力場所があったにしても看護実践の行動の流れに合わないことには変わりがないことがある.

 この課題の解決に期待できる取組みとして,看護師の行動である会話や動作を拾い上げ,情報に自動変換されるシステムがある(2)が,まだ実用には至っていない.看護行為を妨げないことがコンセプトであり,現在のデータ入力システムとは全く異なる視点であり,現在の問題を的確に捉えた取組みとして,実務運用できるレベルへの開発を期待したい.

4.看護師育成のためのツール

 看護師は所定の基礎教育を履修後,国家試験を通り臨床に立つ.基礎教育で習得した知識や技術を多様な臨床の状況に適応させることは容易ではない.多くの新人看護師が大きな壁に当たることになる.その状況が新人の早期退職の原因となり,2009年に厚労省から「新人看護職研修ガイドライン」が提示された(2014年に改訂(3))徒弟制度式の指導体制は,教授設計に基づき体系的に学習課題が設定されたプログラムに変更された.“教え込む”から“学びを支援する”育成方法にシフトし,新人看護師の離職率は大幅に減少している.

 離職が減少し,職員が定着した結果,看護実践の質は向上したか?の問いの答えは,必ずしも“Yes”とは言えない.職員の定着は多忙な看護実践の場において望ましいことである.しかし,定着した職員の自立の遅れが著明であり,臨床全体として看護実践の質は上がらない状況がある.

 学びの支援として,学びやすい環境や研修プログラムの開発と導入は,徐々にではあるが確実に浸透してきている.一方で,学習支援の対象者である新人看護師を含む臨床で勤務をする看護師の主体的な学習力は身に付いている者といない者とが両極端に存在する.もちろん,学習力を身に付けた自立した学習者の方が確実に能力を向上していく.自立した学習者としての能力の習得状況の差異は,新人看護師のみならず,管理職の層にも存在している.この相違が生じる原因は,自らのキャリアビジョンすなわち明確な自己目標の有無,経験から学ぶ学習力の有無に大きく影響しているようである.専門職者として生涯学び続けることが必要な看護師として成長するためには,学び方を習得する必要がある.

 そこで,自らのキャリアステップをイメージしプランするツールはできないだろうか.学習の足跡をまとめるポートフォリオ(データ入力で運用するeポートフォリオ)が我々のイメージに近い機能である.自らの目標と計画が記され,その実施結果が記録されるいわゆるポートフォリオ機能とともに,その実施結果を振り返り,自らの経験の意味を記せる機能を持つツールである.目標に向かった経験を振り返ることで,自らの学習過程やキャリアステップをリフレクションすることができる.

 このリフレクションの過程において,本人以外の他者からの助言,評価が記載でき,そのコメントに対する返答を記載する構造を持つことで,どのようにするか,すなわちゴールベースの行動計画を考える思考を誘導できる.自らの行動をどのようにするかを目標に向かい計画するという主体的学習姿勢を誘導することが可能になるものと考える.継続的な学習支援とは,学び方の方法を学ぶファシリテーションであることを構造化したツールに期待したい.

 このツールを活用として,個人のみが管理する部分と複数の共有が可能な部分があること,そして,いつでもどこからでもアクセスできることが求められる.これは,看護師の勤務特性として,24時間体制の交替勤務があり,活用できる場所と時間が限定されることで,活用度が上がらないことが想定できる.また,女性が多いことから,出産や育児に伴う長期休暇を取得する時期の活用性を高めるためにも,看護師のいる場所に依存することなくシステムにアクセスできる方がよい.

 新人看護師の時期から,経験を重ねる過程を通して,専門職者としての育成が支援されるツールは,多様化する看護師の就業体制の中にあっても,個人の学習支援に対応できると考える.

5.ま  と  め

 看護師の業務内容は,多様な条件により様々である.いずれにおいても,多忙であることには変わりがない.看護を囲む環境は超高齢社会の中で,多様な連携が必要とされている.我々は,その機能を現状の体制の中で行うには業務量負荷が大きい.その情報をいかに効果的かつ効率的に運用できるシステムを持てるかが,看護の質の保証につながるものと考え,情報共有の観点から電子情報技術への期待を述べた.

 また,専門職育成には,経験を生かした学習が必要である.既存の教育方法の量と質の限界が見えている中で,自立した学習者としての看護師育成をサポートする技術についても,期待したい.

文     献

(1) 鳥山亜紀,渡辺玲奈,中山茂樹,筧 淳夫,山下哲郎,“「パーソナル看護拠点」およびその他の看護拠点の機能と配置に関する研究―医療・患者情報の電子化と急性期病棟計画の再検討その2―,”日本建築学会計画系論文集,vol.73,no.625,pp.527-533,March 2008.

(2) 桑原教彰,野間春生,鉄谷信二,萩田紀博,小暮 潔,伊関 洋,“ウェアラブルセンサによる看護業務の自動行動計測法,”情処学論,vol.44,no.11,pp.2638-2648, May 2003.

(3) 厚生労働省,“新人看護職員研修について,”http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000050213.html(2017年6月30日閲覧)

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(あさ)() えみ()

 平17東京女子医科大大学院実践看護学クリティカルケア領域博士前期課程了.獨協医科大越谷病院,榊原記念病院,日本看護協会看護研修学校にて勤務.平20から獨協医科大越谷病院看護副部長.著書「看護に活かすインストラクショナルデザイン」(医学書院).

用 語 解 説

身体侵襲度
物理的な外力による身体への影響の度合い.ここでは,手術や検査などの医療行為によって生じる影響の度合いを示す.この度合いは,程度の低い低侵襲から,程度の高い高侵襲まである.ただし,その程度区分の明確な指標はない.
多職種
現在の医療は,多様な職種が医療チームの構成により実施されている.広義には,国家資格を有する専門職のみならず,事務職や清掃員等も含む医療実践場面に関わる全ての職種を示す.ここでは,院内に勤務する医療関連の国家資格を有する多種の職種を示す.
キーパーソン
医療選択の意思決定は患者本人が行うことが原則である.しかし,本人が何らかの理由でその意思決定ができない場合にその決定を代行したり,一部支援する役割を持つ人を示す.家族がこの役割を担うことが多いが,家族や親族以外の場合もある.


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