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解説
時をつなぐ
――網同期技術とその国際標準化動向――
Technology and International Standardization of Network Synchronization
abstract
網同期技術は世界各国の通信事業者のネットワークサービスを支える基盤技術である.近年のモバイルブロードバンドサービスの高度化に伴い,端末間や基地局間の絶対時刻を高精度に一致させる同期技術への必要性が高まるとともに,従来のGPSに加えて有線網同期技術の適用領域が大きく拡大している.また電力・スマートグリッド,金融・証券取引,IoT等の多様なサービスの出現に伴う大量のネットワーク接続デバイスの高度な監視制御等,新たな分野への適用の動きも見えはじめている.本稿では,高精度な網同期を実現する技術の概要,ITU-Tを中心とした国際標準化の動向,更なる高精度化や適用領域の拡大に向けた取組みについて解説する.
キーワード:網同期,時刻,周波数,国際標準化,ITU
通信網の同期技術は1980年代のSDH(Synchronous Digital Hierarchy)伝送技術とともに発展してきた(1).SDH等の時分割多重技術を用いた電話や専用線等のネットワークサービスにおいて,データ送受信時の正確な信号多重分離のためにネットワーク内装置間のクロック周波数を一致させる,網同期を確立する必要があった.網同期技術は,ネットワークサービスを支える基盤技術として長年にわたりITU-Tをはじめとした国際機関で標準化が進められ,各国の通信事業者に広く利用されてきた.その後,SDH技術の成熟とともに網同期技術への関心は薄れていたが,イーサネットやIP等のパケット伝送時代になって,パケット網での高精度な時刻・位相及び周波数同期技術に関心が集まるようになった.
近年では,装置間の周波数同期に加えて,時刻・位相同期が必要となるアプリケーションが登場してきたことで,網同期技術の適用領域が拡大している.時刻・位相同期技術は,大容量化,高機能化する次世代モバイル通信分野に加えて,あらゆる‘もの’がつながるInternet of Things,エネルギー分野におけるスマートグリッドの蓄給電タイミング合せや,金融・証券分野における高頻度取引,高精度時刻スタンプ,高度交通システムの自動運転補助等にも利用が見込まれており,これからのネットワークにおける重要技術として世界中の通信事業者に注目されている.本稿では,通信網同期の概要と実現技術,国際標準化動向と今後の展開について解説する.
時刻,位相及び周波数同期の概念図を図1に示す.周波数同期とは,二つの時計の針の進む速度が一致しているが,その位相差については拘束しない.位相同期とは,周波数に加えて位相も合っている状態であり,更に,時刻同期はUTC等の世界統一時刻に合っている状態である.
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