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解説
Public Safetyに向けたブロードバンド移動通信技術の発展動向
The Development Trend of Broadband Mobile Communication Technologies for the Public Safety
abstract
近年,Public Safetyの分野を中心に,周波数利用効率の向上,ブロードバンドへの対応,エコシステムの構築等を目指して,公衆通信で用いられているLTE技術の利用が国際的に検討されている.
大規模災害などでコアネットワークと基地局間が遮断された場合や,基地局がダウンした状況で端末間通信を確保できる機能,緊急情報の同報機能,広い通信カバレージと通信容量の確保,災害に強いインフラの構築,過酷な環境でも使用可能な堅ろうな端末など,様々な要件が次世代緊急無線通信システムとしてPublic Safety LTE(PS-LTE)に求められている.本稿では,注目を集めているPS-LTEについて,海外の政府・関係機関,標準化組織,技術開発等新たな動向と今後の展望を解説する.
キーワード:Public Safety,LTE(Long Term Evolution),3GPP(Third Generation Partnership Project)
米国では,警察・消防・救急といったPublic Safety(公共安全)に関わる人々はFirst Responders(第一応答者)と呼ばれる.これらの作業に業務用無線システムによる連絡・指令は不可欠である.また,事案によって複数の機関・地域の連携が必要であり,業務用無線システム間の相互運用性が求められる.従来は緊急音声通信(Mission Critical Voice)が主であったが,より高度な情報収集・提供を行うためには,データや画像伝送のためのブロードバンド化が求められている.2001年9月11日(9.11)の同時多発テロ以降,米国ではPublic Safety LTE網の検討が加速された.また,韓国では2014年4月の大型貨客船セウォル号の沈没事故を機に,政府部内にタスクフォースが設置されPublic Safety LTE網の検討が開始された.Public Safety分野へのLTE技術の活用は,欧州も含め世界的な取組みとなっている.一方,2011年3月11日(3.11)の東日本大震災後,我が国では商用携帯電話網の強じん化の議論はあったが,Public Safety LTE網の議論は全く行われなかった.
Public Safetyは,通常,「公安」と訳されている(国家公安委員会.National Public Safety Commission).本稿では,警察・消防・救急という狭義のPublic Safetyに加え,運輸,鉄道,企業のBCP(事業継続計画)等の民間活動も含めた,より広めの概念として「公共安全」と訳している.Public Safety Networkの概念は必ずしも定義されたものではないが,自営無線通信サービスを想定した場合,そのユーザを区分して捉えることができる.図1はそのユーザを公共安全の優先度に応じて区分している.ユーザ群は警察,消防,救急等の優先アクセスユーザ,鉄道,航空,運輸等の公益ユーザ及び企業BCPの商用ユーザに,優先度の高い順に三区分することができる.これらのユーザに対して,全国公共安全共用網を提供するネットワーク事業者が公共インフラを提供する.そのサービスは通常,平時のサービスは均一に提供されるが,緊急時にはその優先度を考慮したサービスが提供される.
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