Vol.100 No.2 小特集 FPGAを用いた計算処理の高速化技術 編集にあたって

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Vol.100 No.2 (2017/2) 目次へ

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小特集

FPGAを用いた計算処理の高速化技術

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 弘中哲夫
サブリーダー 三好健文

 FPGA(Field Programmable Gate Array)とは,ASIC(Application Specific Integrated Circuit)と同様に特定の用途に合わせたディジタル回路を実現するために使用する半導体デバイスです.両者の違いは,ASICは半導体デバイス製造工場から出荷された時点で回路機能が固定されているのに対し,FPGAは機能が決定されていない状態で出荷されている点にあります.出荷されたFPGAは個々のユーザの手に渡ってから内部構成を決定するプログラミングが行われ,それによって初めてユーザの希望する機能を持つディジタル回路になります.このユーザの手に渡ってから特定の機能を持つという性質は,特定の機能を持たずに出荷されるCPUがプログラミングにより特定の機能を持つことと同じ性質であるということができます.

 このFPGAの登場に加えて,ディジタル回路の設計のためのハードウェア記述言語(HDL: Hardware Description Language)であるVerilog-HDLやVHDLからのディジタル回路合成技術により,大規模なディジタル回路であっても個人で設計できるようになりました.例えば,ユーザがパソコンでHDLで記述したディジタル回路をその場でFPGAにプログラミングすることで簡単に特定の機能を持つ半導体デバイスとして利用できます.この結果,CPUをプログラミングして計算結果を得るのと,FPGAをHDLでプログラミングして専用の処理ハードウェアで演算結果を得るのとでは使い勝手がそれほど変わらなくなりました.

 しかし,FPGAは様々な回路を構成できるように柔軟性を持たせた代わりに,動作周波数は構造に柔軟性の小さいCPUに比べて原理的にどうしても遅くなります.そのため,FPGAは,ひたすら高速に逐次処理を行うアプリケーションが苦手です.FPGAの演算性能を引き出すには,様々な粒度の並列性をアプリケーションから引き出し,それらが並行に処理されるように工夫することで,動作周波数の差を補う必要があります.簡単ではありませんが,用途に合わせた的確なアルゴリズムを使用することで演算性能においてCPUを大きく凌駕することもできるため,様々な用途でFPGAを演算デバイスとして用いることが注目されています.

 本小特集では,このような背景を踏まえ,CPU以上の処理性能を達成する手段としてのFPGA活用に注目した小特集を企画しました.第1章ではFPGAによる高速化実現事例を示すとともに,画像処理用プロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)の演算性能を汎用的な計算処理に使用することで高速化した場合との違いなどを紹介します.次いで第2章では本技術が実用的な技術として産業界においてどのように活用されているかを紹介します.最後に3章ではFPGAを用いた計算処理をより身近に感じてもらうために,近年普及し始めたC,Java等の一般的なプログラミング言語を用いたFPGA設計環境を紹介します.そして,新しくFPGA設計を始める人への道しるべになることを期待し,リコンフィギャラブルシステム研究会がFPGAとその設計技術の普及のために行っているFPGAデザインコンテストを紹介します.デザインコンテストではCPU,GPU,FPGAが同じ土俵で性能を競っており,FPGAの可能性を感じてもらえるのではないかと思います.

 最後に,多忙な中,原稿の執筆を御快諾頂いた執筆者の皆様,企画について御協力頂いたリコンフィギャラブルシステム研究専門委員会の皆様,及び,学会事務局の方々に深く感謝致します.

 小特集編集チーム

 弘中 哲夫  三好 健文  小野 智弘  石川 真澄  井口 寧   高野 光司  高野 了成  中嶋 秀治  待井 君吉  水野 洋  


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