小特集 1. 住まいの快適性とエネルギー

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テクノロジーが創る快適

小特集 1.

住まいの快適性とエネルギー

Comfort Environment and Energy in Home

田辺新一

田辺新一 早稲田大学創造理工学部建築学科

Shin-ichi TANABE, Nonmember (School of Creative Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, 169-8555 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.7 pp.593-598 2017年7月

©電子情報通信学会2017

abstract

 住宅を快適に保つために多くのエネルギーを消費している.日本が「パリ協定」で約束した26%の二酸化炭素排出量の削減を守るためには,住宅分野では40%の削減が必要とされている.その実現のためにゼロエネルギーハウス(ZEH)の実現が求められている.一方で,超高齢化社会を迎える日本では,住宅の快適性や健康性を向上させる必要がある.先進国の中でも日本の冬の住宅の寒さは際立っている.熱的快適性や住宅の健康性に関して述べるとともに,エネマネなどの情報利用に関してその可能性に関して概観した.

キーワード:住宅,熱的快適性,睡眠,浴室・脱衣室,ゼロエネルギーハウス

1.は じ め に

 我々は多くの時間を住宅で過ごす.住まいは雨,風,寒さ,暑さなどの厳しい自然から人間を守ってくれるシェルターであるが,同時に仕事などで疲れた体を休める場所でもある.その室内環境を維持するために,多くのエネルギーを消費している.エネルギーを消費することによって温室効果ガスを排出する.快適性を保ちながらできるだけ温室効果ガスを排出しないで暮らすことが必要になる.

 フランス・パリにおいて,COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が開催された.「パリ協定」では,世界共通の長期目標として2℃目標のみならず1.5℃への言及があった.日本は,2030年までに2013年比26%の二酸化炭素排出量の削減を約束した.この数字は決して甘いものではない.住宅分野では実に2013年から40%の削減が求められている.一方で,日本は超高齢化社会を迎える.エネルギー消費削減しながら,太陽光などの創エネルギーを行い,快適性や健康性を向上させるという大きな課題に挑戦する必要がある.そのためには,人間がどのようなときに快適に感じるのか,健康的な影響があるのかを知ることは重要である.

2.住宅の省エネとZEH(ゼロエネルギーハウス)

 住宅部門では日本全体の14%のエネルギーが使用されている.それでは,典型的な住宅の一次エネルギー消費量を見てみよう.最新の統計データから,米国,英国,ドイツ,EU-28,日本の比較を行った(図1).日本に関しては,実績値と平成25年基準に適合する6地域の120m2の戸建住宅で間欠空調を行う場合の基準値を示した.日本は実績値においても,計画値でも暖房エネルギー消費量が少ない.気候の要素もあるが,一般的に主居室しか暖房しておらずなお間欠で暖房を行っているためである.

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