小特集 4.【地域】異次元・異領域の人材をつなぎ,未来の地域新事業を創る

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デザインイノベーション――専門や業種を超えた課題解決に向けて――

小特集 4.

【地域】

異次元・異領域の人材をつなぎ,未来の地域新事業を創る

Creating Innovative Business in Local Regions

齊藤義明

齊藤義明 (株)野村総合研究所未来創発センター

Yoshiaki SAITO, Nonmember (Center for Strategic Management & Innovation, Nomura Research Institute, Tokyo, 100-0004 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.7 pp.628-634 2017年7月

©電子情報通信学会2017

abstract

 (株)野村総合研究所2030年研究室では,2012年9月から,100人の革新者(ビジネスモデル・イノベーター)プロジェクトを進めてきた.「革新者」とは,様々な領域において従来とは異なる切り口で新たな価値創造に挑戦している人たちを指す.彼らは事業を通じて日本の社会課題解決にアプローチするソーシャルな側面も有している.2030年研究室では,これら100人の革新者たちによるイノベーションのエッセンスを抽出し,それらを生かした日本の地方創生のための独自のイノベーションプログラムを開発した.その適用第1号として北海道十勝地域において実験的展開を進め,2年間で五つの新会社設立,四つの新事業展開・新経営実験,三つの地域構想とそれらを主体的に推進するチームが生まれた.本稿では,100人を超える革新者たちとの対話から導出したイノベーションのキラースキル(最重要スキル)と,それらを活用したイノベーションプログラムの仕組みや特徴などについて述べる.また最後に,イノベーションプログラムが地域で有効に機能するための課題や将来方向についても考察する.

キーワード:イノベーション,地方創生

1.地方創生のドーナツ化現象
――自ら挑む事業主体性の欠如――

 現在進んでいる地方創生は中心が空洞の「ドーナツ化現象」を引き起こしている.つまり「意見する人」や「支援する人」は周りにたくさんいるのだが,自ら挑戦しようとする事業主体が圧倒的に足りない.言葉を変えれば,ドーナツの外側(支援制度や活性化計画など)は豊かだが,ドーナツの真ん中(挑戦する事業主体)が空洞化している.

1.1 地域金融機関による地方創生ファンドの課題

 例えば,全国各地で地域金融機関による地方創生ファンドが次々と設立されている.ところが地域金融機関や支援機関は口をそろえて次のように言う.

 「カネは用意したが,タマがない」

ファンドはあっても投資先がないという問題に陥っている.

 優れた事業計画に対して賞を与えたり,ファイナンスを付けたりするビジネスプランコンテストも最近よくある.しかし上から目線で待っているだけでは良いタマ(投資先)は出てこない.ビジネスプランコンテストでどんどん新しいタマが出てくるのは東京だけであり,地方ではすぐに枯渇してしまう.

 何が言いたいかというと,地域金融機関や支援機関はただ支援制度(ドーナツの外側)を作って満足するだけでなく,一緒に事業プロデュースに乗り出す必要があるということである.新しい事業を共にゼロから作り込んでいく作業は非常に骨が折れるとともに,リスク(不確実性)が高く,出口までの「足が長すぎる」ため,商売につながらないという事情は分かる.だが従来のやり方では,何も変わらない.ドーナツの外側を豊かに見せているにすぎない.


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