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デザインイノベーション――専門や業種を超えた課題解決に向けて――
小特集 5.
【学会】
ストーリーとしての研究開発
Making Stories for Research and Development
abstract
ICTの「日用品化」が進みつつある.このような局面においてこそ,「面白いストーリー」が必要となる.どのように(how)実現するのかではなく,何を(what)行うのかに,より重きを置いて社会をデザインしていかなければいけない.本論では,ストーリーとしての研究開発がICT分野において必要となることを,建築学,インベンションとイノベーション,汎用技術とフィールド志向,初島会議での議論模様も踏まえながら紹介する.
キーワード:ストーリー,イノベーション,汎用技術,フィールド志向,デザイン思考
研究開発の在り方が問われつつある.
長年の研究開発は,性能の向上を目指すものがほとんどであった.できるだけ情報量の少ない映像符号化方式の開発,より高速な通信技術の開発,より高速かつ低消費電力の半導体素子の開発など,定量的な性能指標が軸となる研究開発が多かった.
ユーザ自身が性能を求めていたためである.性能を良くすることが,新たなユーザ体験の創出につながり,事業にもつながっていった.
製品の品質を検討する枠組みの一つに狩野モデル(1)がある(図1).顧客満足度を垂直軸に,性能特性を水平軸に取ると,顧客の反応は「当たり前品質(壊れないテレビ)」,「性能品質/一元的品質(画質の良いテレビ)」,「魅力品質(テレビを常につけておきたいほどに新しい使い方を顧客に提供しているテレビ)」の三つに分類できるとしている.
この狩野モデルの枠組みからICTの研究開発を眺めると,長年の研究は「当たり前品質」や「性能品質」を満たすためのものであったと位置付けられよう.
しかしながら,諸先輩方のたゆまぬ努力により,ある程度の性能は入手できるようになった.1Gbit/sでの移動通信も視野に入りつつあるし,スマホに組み込まれているCPU性能は筆者が学生の頃の大形コンピュータを凌駕している.30年前,20年前の状況に鑑みると,隔世の感がある.
このようなICTの進展は,研究開発の目的が「性能品質」の実現から「魅力品質」の実現に移行しつつあることを示唆していよう.‘もの’も,性能品質の訴求だけでは売れなくなってきている.
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