電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
講座
Sパラメータ特論[Ⅲ・完]
――基準インピーダンスの設定――
Advanced Concepts in S-parameters[Ⅲ・Finish]: Defining Reference Impedances of Measurement Planes
目 次
[Ⅰ] 反射係数の二つの定義(5月号)
[Ⅱ] Sパラメータの諸性質(6月号)
[Ⅲ・完] 基準インピーダンスの設定(7月号)
本連載第1回と第2回は,Sパラメータの諸性質について,理論的な側面から詳しく考察した.Sパラメータには,電圧進行波を基に定義されたものと,電力波と呼ばれる仮想的な量を基に定義されたものとの二系統がある.測定で出てくるSパラメータは前者である.
Sパラメータの測定にはベクトルネットワークアナライザ(VNA)を使う.VNAで被測定物(DUT: Device Under Test)を測る前には,「キャリブレーション(校正)」を行う必要がある.キャリブレーションには以下の二つの役割がある.
①測定基準面の位置を定めること.
②測定基準面の基準インピーダンスを定めること.
今回は,VNAのキャリブレーションについて説明する.2ポート測定だけを考えることとし,式をたどりやすくするため大幅な単純化は行うが,考え方のエッセンスをつかんで,基準インピーダンスが決まるからくりを理解できるようにしたい.考え方さえ理解できれば,実際のキャリブレーションは式が大仰になるだけの違いだ.また,本稿で説明することの多くは,キャリブレーションだけでなくディエンベディング(de-embedding(1))にも当てはまる.本稿は文献(2)を基にしており,読者はVNA測定に関する基礎知識をお持ちのものと想定した.
VNAのキャリブレーションは「測定の一種」である.では,キャリブレーションにおける「被測定物」は何か?
キャリブレーションの作業内容には,キャリブレーションキットに含まれる複数の校正基準器(calibration standards)をVNAで測る,という操作が含まれる.最近は複数の校正基準器を取っ替え引っ替えする代わりに,図1に示すように電子的に複数の特性を作り出す校正基準器Ecal(cは小文字)(3)を使うことも多いが,原理的には同じことだ.キャリブレーション後の測定基準面は,ケーブル先端のコネクタ端面になる.では,キャリブレーションにおける「被測定物」は校正基準器かというと,それは違う.なぜなら,校正基準器の特性は基本的に既知だからだ.ついでに言えば,キャリブレーションが済んでいない「生の」状態で図1のような測定をしても校正基準器の特性は分からない.つまり,校正基準器は被測定物ではない.では,被測定物は何か?
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード