特集 4-4 長距離無線技術

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Vol.100 No.8 (2017/8) 目次へ

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阿部順一 正員 日本電信電話株式会社NTTアクセスサービスシステム研究所

豊嶋守生 正員:シニア会員 国立研究開発法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター

三浦 周 正員 国立研究開発法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター

Junichi ABE, Member (NTT Access Network Service Systems Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Yokosuka-shi, 239-0847 Japan), Morio TOYOSHIMA, Senior Member, and Amane MIURA, Member (Wireless Networks Research Center, National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, 184-8795 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.8 pp.819-824 2017年8月

©電子情報通信学会2017

abstract

 代表的な長距離無線技術である衛星通信は,今後のIoT時代を迎え,つながるユーザ局の数が飛躍的に増える時代には広域性を生かして海洋域や航空域,地上,宇宙空間に適用領域を広げていく.その実現には,多数のユーザ局を収容するための中継器技術,高効率伝送技術,光衛星通信技術などによる衛星回線のブロードバンド化や,無人航空機のような新たなサービスをはじめとする様々なプラットホームに適した地球局の実現技術,IoTにおける大量の小容量データの収容や5G端末を直接利用できる伝送技術などIoTや5Gとの親和性の高い衛星通信を実現するための技術開発が課題である.

キーワード:衛星通信,ブロードバンド,地球局,IoT,5G

1.背     景

 代表的な長距離無線技術である衛星通信は,広域性,同報性,耐災害性といった特徴を生かして従来から利用されてきた.今後は,多くの物と物がつながる“‘もの’のインターネット(IoT)”時代を迎えようとしており,また,移動通信分野における第5世代移動通信(5G)では,多様な無線技術を連携してトラヒックを収容することを目指している.こうした状況において,将来は地上通信網ではカバーし切れない様々な新しい通信ニーズが登場すると予想され,それらを収容する衛星通信サービスの重要性は高まっていく.また,そうしたサービスを実現するための技術課題の解決が求められる.

 以下の章では,2.において衛星通信の現状を主に高速・大容量化と移動体通信を実現する静止衛星と,低遅延で利用の活発化が予測される周回衛星による衛星コンステレーションの観点から俯瞰する.その後,3.において将来の衛星通信の利用形態を海洋域,航空域,地上,宇宙空間の各領域について述べる.更に,4.においてそれらの利用を実現するための技術課題や現在までの取組みについて記述する.5.はまとめである.

2.衛星通信の現状

2.1 静止衛星通信の現状

 衛星通信は,従来からVery Small Aperture Terminal(VSAT)等の固定通信においてKuバンドを中心として利用されてきたが近年,周波数のひっ迫やビット単価低減の観点からKaバンド等の高周波数帯を利用したハイスループット衛星(HTS)と呼ばれる大容量通信衛星の開発と利用が世界的に進んでいる(1).HTSは大容量化のため数十~百ビーム程度の多数のマルチビームと多数のベントパイプ(用語)中継器を装備し,ゲートウェイ局(用語)を複数利用するシステムである.我が国では,技術試験衛星である超高速インターネット衛星(WINDS)(2)でKaバンドの高速通信技術が実証されている状況である.

 衛星通信の移動体通信への適用においては従来からL/Sバンドを利用して狭帯域で衛星携帯電話を中心とした利用がなされてきた.我が国では技術試験衛星Ⅷ型(ETS-Ⅷ)(3)で衛星携帯電話を含む移動体通信技術が実証されており,実用衛星としてはN-STAR衛星によるサービスや国外事業者が運用するシステムが運用されている.最近では,2000年代に移動衛星業務(MSS)システムと同一周波数帯で地上系を補完的に利用する統合MSSシステムが登場し,我が国でも研究開発が行われた.

 また,近年では,固定衛星通信と移動衛星通信の垣根が低くなり融合が進展している.これまでもKuバンドでは船上地球局(ESV)と呼ばれる固定衛星業務(FSS)バンドで移動体通信を利用するサービスが実用されてきたが最近では国際電気通信連合(ITU)の主催する2015年世界無線通信会議(WRC-15)において“移動する地球局(ESIM)”と呼ばれる,航空機や船舶,陸上移動体を対象に,Kaバンドの一部のFSSバンドへの移動体通信サービスが認められ,次回2019年のWRC-19に向け更なるバンドの拡張が審議されている.

 更に,比較的新しい技術として高速大容量化や通信の秘匿化を特徴とする光衛星通信技術が進展し,観測衛星のデータ中継用途等での利用が始まっている.

2.2 衛星コンステレーション

 近年,複数の非静止の小形衛星でグローバルに通信サービスを行う衛星コンステレーションの構想が世界各国から台頭してきている.低高度軌道(LEO)や中高度軌道(MEO)を用いることにより,衛星―地上間の伝送距離が短くなり低遅延で送信電力も低く抑えられることなどから搭載機器の小形化に適しており,また様々な小形衛星技術が軌道上実証され利用可能となってきたことも拍車を掛けていると考えられる.一例として,Space Exploration Technologies Corporation(Space-X)は約5年で全4,425機の小形衛星を打ち上げ,地球規模の高速通信網を構築する計画である(4)

 一方,最近,我が国で50kg級の超小形衛星で世界初の光通信の宇宙実証がなされたことや(5),電波を使う衛星通信システムでは無線局免許として周波数を確保する必要から国際調整に多大な時間と労力を要するのに比べ,光通信は無線通信規則における規定周波数外のため国際調整が不要であることから,衛星コンステレーション構想へ光通信を適用する動きが活発化している.(例えば,米国Laser Light Communicationsによる12機のMEO衛星を用いた通信容量7.2Tbit/s級の光通信サービス(6)など.)

 以上の状況下で,光通信に関してはシステム間の相互接続性を確保して開発を行うことが急務であり,宇宙機関間の標準化の場である宇宙データシステム諮問委員会(CCSDS)で議論されている.また,電波に関してはITUで様々な組織から周波数申請がなされるとともに,他業務との共用条件などが議論されている.

3.将来の利用形態

 IoTが実現する世界では,あらゆる機器がネットワークを通じてつながり,情報を交換することになる.そのようなシーンでは通信の範囲は地球上の至る所や上空,宇宙空間に広がるため,人がいない場所でも通信を提供する必要があり,衛星通信を活用する領域は拡大していく.また,5Gにおいては異種無線の連携によるトラヒック収容が想定されていることから衛星通信もその特性を生かして一定の役割を果たしていくと考えられる.今後,衛星通信が活用されると考えられる海洋域,航空域,地上,宇宙空間の利用形態の将来像を図1にまとめる.

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 海洋域はブロードバンド化が遅れてきたが,将来は海洋資源の調査のために大容量のデータ伝送が行われたり,船内で当たり前にスマートフォンを利用してLong Term Evolution(LTE)や5Gの高速サービスが利用されると考えられる.海洋ブロードバンドが整備されることで,港湾やシーレーンでの交通整理に役立つ船舶の自動管制や自律航行のための制御情報が衛星経由で伝送され,より安全で低コストでの運航が可能となる.また,海上ブイのような広域に設置される大量のセンサ局から情報が収集され津波の早期警戒や気象観測に活用される.

 航空域においても船舶と同様,乗客向けサービスとしてスマートフォンでLTEや5Gが当たり前に利用されるようになるとともに,運行管理情報の伝送に衛星通信が活用されオートパイロットや機体のヘルスチェックが可能となると考えられる.最近急速に進展している無人航空機では地上からの見通し外でも衛星経由で制御や通信が行えるようになり離島などのデータ収集が可能となる.

 地上通信では,災害時の臨時回線や通信事業者のバックホール回線の利用に衛星通信が活用されるだけでなく,平常時においては自動車の自動運転や,農業・インフラ監視等のセンサ情報収集に衛星通信が活用される.

 宇宙空間では,観測衛星からのデータ収集や宇宙探査のニーズが今後ますます増え,いわゆる宇宙ビッグデータを伝送するために衛星通信が利用される.

4.技 術 課 題

 3.で述べたIoT/5G時代とその先における衛星通信の利用形態を実現するためには,衛星回線の更なるブロードバンド化や,無人航空機のような新たなサービスをはじめとする様々なプラットホームに適した地球局の実現,多数の小容量データを伝送するIoTや地上系の5Gとの親和性の高い衛星通信を実現するための技術が課題となる.技術課題や現在までの取組みを以下に述べる.

4.1 衛星回線のブロードバンド化

4.1.1 中継器技術

 衛星中継器技術については,HTS技術を更に進展させ,大容量かつ広域のカバレージを実現する搭載中継器技術(マルチビーム形成やオンボードプロセッシングなどによるカバレージ,電力,周波数の有効利用)が鍵となる.これらは比較的狭帯域のL/Sバンドで実用化されてきたが,Kaバンド等の広帯域化に伴う技術課題を克服する必要がある.これまでに,広帯域なディジタルビームフォーマ(DBF)/チャネライザの機能確認モデルの開発が行われた(7).また,宇宙基本計画において次期技術試験衛星の打ち上げが平成33年度に計画され,大容量化とフレキシビリティを主眼とする衛星通信技術の実証を目的として,現在,研究開発が進められている(8)

4.1.2 高効率伝送技術

 大容量化のための伝送技術については,地上系では5Gで非直交多元接続(NOMA)やMassive Multiple Input Multiple Output(MIMO)技術が提案されており,衛星通信においてもより高効率な伝送技術の開発が課題である.高効率伝送技術の一つとして高効率グループモデム(高効率GM)(9)やスペクトル分解伝送技術(10)の研究開発が行われている.

 高効率GMは,基地局に1台設置し複数の地球局を一括収容できるマルチキャリヤモデムである.また,FFTフィルタバンクにより各サブキャリヤ任意の周波数帯域に配置できるため,周波数軸上に散在する未使用帯域を有効利用できる.

 しかし,既に運用中の衛星通信システムへ本装置を導入する場合,モデムのみならずネットワーク構成の変更も生じるため,導入は容易ではない.そこで既存の設備を有効利用して周波数利用効率を向上できるスペクトル分解伝送が検討されている.

 スペクトル分解伝送は,図2に示すように既存のシングルキャリヤモデムとアンテナの間に「アダプタ」を挿入する.送信側のアダプタでは,既存モデムが出力する変調信号をFFTフィルタバンクで複数のサブスペクトルに分割,分散配置して送信する.受信側ではFFTフィルタバンクでサブスペクトルを抽出し変調信号を復元,既存モデムへ出力する.

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 高効率GM,スペクトル分解伝送共に,今後の市場導入を目指し,実用化開発の検討が進められている.

4.1.3 光衛星通信による大容量化技術

 光空間通信(用語)は,電波に比べて本質的に飛躍的な大容量化が可能であることから衛星通信においてもその適用に向けた技術開発が世界で行われてきている.我が国は世界初の衛星と光地上局間の光空間通信実証(技術試験衛星VI型:ETS-VI,1994年打上げ)(11)や,光衛星間通信実験衛星(OICETS,2005年打上げ)(12)による世界初の双方向GEO(静止軌道)-LEO間レーザ通信実験,LEO-地上間のレーザ通信実験などで世界に先行してきた.また,2015年には50kg級超小形衛星から世界初となる光地上局との光通信実験に成功している(5).更に,新たな宇宙基本計画に光データ中継衛星を平成31年度を目途に打ち上げることが明記され,我が国の光データ中継衛星システムの開発が開始され,プロジェクトチームが発足している(13)

 光衛星通信の将来動向としては,データ伝送速度と機器の搭載性の観点から,二つの方向性がある.数Gbit/sクラスの大容量高速通信のHDR(High Data Rate)シナリオと,低速通信であるが搭載リソースに制限がある超小形衛星等に搭載できるようなLC(Low Complexity)シナリオの二つの方向性である.HDRシナリオは光データ中継衛星のための高速な通信手段として,また,LCシナリオは手軽な小形衛星へ利用できる光通信の応用方向として国際標準化の場で分類され,通信方式の議論がなされている.HDRシナリオは,WDM技術(用語)等の適用によって更に将来伝送速度が向上されると見込まれる.一方,LCシナリオについては,50kgクラスの超小形衛星でも光通信が宇宙実証されたことにより,搭載の容易性を優先する超小形衛星分野への利用拡大が期待される.

4.2 様々なプラットホームに適した地球局技術

4.2.1 船舶

 船舶では従来のLバンドやSバンドを利用した移動体衛星通信サービスに加え,KuバンドFSSの帯域を用いたESVが利用されている.Kuバンド衛星は静止軌道上において2度間隔で配置されているため,移動する船舶上では高精度な衛星追尾アンテナを使用する必要がある.また,移動に伴い別の衛星のサービスエリアに移動した場合でも通信を継続するため,使用する衛星を切り換える衛星ハンドオーバを行う.更に,要求多元接続方式による回線割当・開放や,各回線のスループットをモニタし回線接続中に伝送速度を調整するBoD(Bandwidth on Demand)を活用し,周波数資源を有効利用している(14)

 また,近年,日本近海での海洋資源の存在が明らかとなり,その活用が期待されているが,海洋資源の調査においては大容量の調査データや遠隔制御用高精細カメラ画像の伝送のために海洋上から数十Mbit/s以上の高速通信が必要であり,海洋上のブロードバンド環境の実現が求められている.洋上環境(波による揺れ等)への対応及び小形船舶や無人の洋上中継器への搭載を想定した地球局の小形低消費電力化・メンテナンスフリー化などが課題である.最近,船上地球局(図3)の開発(15)とWINDSによるKaバンドのブロードバンド衛星回線を用いた実験が計画されるなど,技術開発が進んでいる.

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4.2.2 航空機/無人航空機

 航空機内で乗客によるインターネット等の接続の要求は今後ますます高まると予想される.将来,機内において乗客の持つ端末がそのまま使えるようになるには,機内に5Gでの採用技術で検討されているモバイルフェムトセル(またはモバイルリレー)を配置して運用する技術の確立が課題である(16).乗客が持つ端末が5Gのプロトコルに対応していれば,機内のモバイルフェムトセルから衛星バックホール経由でインターネットに接続することが可能となる.また,航空機地球局は,航空機への搭載性の観点からより小形化,薄形化が求められる.現在の航空機地球局アンテナには機械駆動式アンテナと電子走査アレーアンテナがあるが,機械駆動式はアンテナ体積に制約があり小形化に限界がある.電子走査アレーアンテナは薄形化が可能であるがRFモジュールや導波管ネットワークの小形化が更なる薄形化の課題である.

 無人航空機システム(UAS)は近年,技術の進展により民間への普及が進んでおり,その提供するサービスは配達,観測や監視など様々な分野で新たなアプリケーションとして注目されている.無人航空機(UA)においては安全性を確保する通信システム及び運行方法の確立が課題であり,安全な運航管理のための制御情報を伝送するための無線通信技術が重要である.特に,見通し外(BLOS)通信においては衛星経由での制御が必要である.WRC-15でKu/Kaバンドの衛星バンドへのUA向け業務の新たな周波数分配が認められたが詳細な運用方法は今後の課題となっており,既存の他システムに干渉を与えることなく,かつ信頼性の高い制御回線の構築が課題である.また,衛星回線の利点である広大なセルサイズを活用し,UAの効率的な自動操縦や衝突回避等のため広範囲に存在する大量のUAの位置情報を取得したり一斉に指示を与える仕組みも有効と考えられる.航空機と同様,UAにおいても搭載アンテナの小形化,薄形化が求められる.最近,UA搭載用の機械駆動式アンテナ(図4)が開発され,評価実験が行われている(17)

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4.2.3 災害通信

 従来,災害時の避難場所に特設公衆電話などの臨時回線に用いる地球局を設置する場合,無線技術者が現場に急行し衛星アンテナの指向方向と送信電力の調整を行う必要があり,緊急時の人員の確保が難しい課題があった.

 そこで,これらの課題を解決する小形衛星通信地球局(18)が開発された(図5).開口径75cmのオフセットパラボラアンテナを有し,トランクケースに分解・収納できる.アンテナの組立・分解には工具が不要で,2名の作業員により約5分で完了できる.また,ボタン操作一つで所望の衛星を2分程度で確実に捕捉でき,無線技術者が遠隔地から送信電力を調整できる.これにより無線知識がない作業員でも15分程度で設営から運用開始まで実施できる.

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 WINDSによるKaバンドのブロードバンド衛星通信回線を用いて災害通信の研究開発や回線提供が行われている(19).東日本大震災における通信回線の提供や,その際の課題を踏まえて通信途絶の回避に活用するため,緊急対応組織が移動しながら最新の被害状況をリアルタイムで収集・伝送できる小形車載地球局(図6)や専門技術者の不要なフルオート地球局が開発された.小形車載地球局は65cmの反射鏡アンテナと20W級の増幅器,ジンバルを装備し,時速100kmで走行しながら24Mbit/sのデータ通信が可能である.

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 以上のように災害通信においては,緊急時に専門技術者が不在でも利用できるよう,小形で設置性・運用性の高い地球局が求められており,加えて,移動中にも利用できる地球局など,利用用途が拡大している.今後も,利用用途に合わせた使いやすい地球局が求められる.

4.3 IoT/5Gとの親和性の高い衛星通信技術

 将来のIoT時代において地上のセンサ情報やコネクテッドカー,あるいは船舶,航空機,UAなどの移動体の運行管理情報の伝送用途に衛星通信が利用されると,大量・小容量の情報収集のためのアクセス方式や,低速信号伝送のために高い周波数安定度かつ低位相雑音の衛星回線の実現が課題となる.一方地上系が5Gとなる時代には,地上系とより親和性の高い衛星通信を実現する技術開発も重要である.例えば4.2.2で述べた航空機や船舶で5G端末を利用するためのモバイルフェムトセル技術の実現は重要と考えられる.更に,より将来的な技術としてはSoftware Defined Network(SDN)技術により衛星ノードを地上網と統合することも考えられる.また,周回衛星による衛星コンステレーションは静止衛星に比べて低遅延であることから5Gとの親和性が高い.各国のコンステレーション計画の動向が注目される.

5.ま  と  め

 IoT/5G時代とその先を見据えた衛星通信の利用形態とその実現に向けた技術課題や現在までの取組みを述べた.近年,衛星通信は固定通信と移動通信の融合が進み,また,低軌道周回衛星システム(用語)が多数計画されるなど変革期を迎えていることと,IoT時代を迎え,つながるユーザ局の数が飛躍的に増える時代には衛星通信は広域性を生かして海域や空域,地上,宇宙空間に適用領域を広げていくことを述べ各領域の利用形態を説明した.また,その実現には,大量のユーザ局を収容するため中継器技術,高効率伝送技術,光衛星通信技術による衛星回線の大容量化,無人航空機のような新たなサービスをはじめとする様々なプラットホームに適した地球局の実現,更にはIoTや5Gとの親和性の高い衛星通信を実現するための技術開発が課題であることを述べた.

文     献

(1) “High throughput satellites: On course for New Horizons,” A Euroconsult Executive Report, Nov. 2014.

(2) 超高速インターネット衛星(WINDS)特集,情報通信研究機構季報,vol.53, no.4, pp.1-118, 2007.

(3) 技術試験衛星VIII型特集,通信総合研究所季報,vol.49, nos. 3/4, pp.1-249, 2003.

(4) http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-01-17/elon-musk-and-spacex-plan-a-space-internet

(5) Y. Munemasa, H. Takenaka, D. Kolev, N. Iwakiri, M. Akioka, Y. Koyama, H. Kunimori, Y. Takayama, and M. Toyoshima, “Initial overview of satellite-ground laser communication experiment using small optical transponder (SOTA),” 信学技報,SAT2015-32, pp.75-79, Oct. 2015.

(6) http://www.laserlightcomms.com/

(7) 三浦 周,織笠光明,仙波新司,高橋 卓,豊嶋守生,“次世代ブロードバンド衛星通信用広帯域DBF/チャネライザの機能確認モデルの試作,”信学技報,SAT2016-50, pp.95-100, Aug. 2016.

(8) 三浦 周,秋岡真樹,吉村直子,岡田和則,鈴木健治,若菜弘充,山本伸一,高橋 卓,川崎和義,菅 智茂,小園晋一,西山大樹,加藤 寧,坂井英一,須永輝巳,久保岡俊宏,布施哲治,國森裕生,小山善貞,宗正 康,竹中秀樹,ディミタル コレフ,カラスコカサド アルベルト,豊嶋守生,金指有昌,石田博樹,谷口将一,林 俊彦,塚原克己,迎 久幸,“ニーズに合わせて通信容量や利用地域を柔軟に変更可能なハイスループット衛星通信システム技術の研究開発(1)―研究課題と計画―,”2016信学ソ大,no.B-3-20, Sept.2016.

(9) 山中勝彦,山下史洋,小林 聖,“衛星中継器の利用効率を向上させる高効率グループモデムモジュールおよびターボ符復号化モジュールの開発,”信学技報,SAT2015-48, pp.7-12, Nov. 2015.

(10) 阿部順一,須﨑皓平,宮武 遼,増野 淳,中平勝也,杉山隆利,“スペクトラム制御衛星通信システム実証実験~スペクトラム分解伝送技術~,”信学技報,SAT2015-8, pp.43-48, May 2015.

(11) 技術試験衛星VI型(ETS-VI)通信実験特集,通信総合研究所季報,vol.43, no.3, pp.363-547, 1997.

(12) 光衛星間通信実験衛星(OICETS)特集,情報通信研究機構季報,vol.58, nos.1/2, pp.1-138, 2012.

(13) 山川史郎,“光によるデータ中継衛星:新たな宇宙通信インフラの構築,”2016信学総大,no.BI-1-2, March 2016.

(14) 廣瀬貴史,岡田一泰,“Ku帯船上地球局による海洋ブロードバンド衛星通信システムの現状と今後,”2009信学総大,no.BT-2-3, pp.SS-84-SS-87, March 2009.

(15) 吉村直子,高橋 卓,三浦 周,辻 宏之,若菜弘充,豊嶋守生,“調査船搭載用プロトタイプ衛星地球局の開発,”2017信学総大,no.B-3-6, March 2017.

(16) F. Haider, M. Dianati, and R. Tafazolli, “A simulation based study of mobile femtocell assisted LTE networks,” 7th International Wireless Communications and Mobile Computing Conference (IWCMC2011), pp.2198-2203, Istanbul, Turk, July 2011.

(17) 辻 宏之,“航空機搭載用衛星追尾アンテナの開発と展望,”信学技報,AP2016-60, pp.129-132. July 2016.

(18) 今泉 豊,廣瀬貴史,吉田英邦,“小型衛星通信地球局の開発~次期災害対策用衛星通信システム~,”信学技報,SAT2012-11, pp.19-23, July 2012.

(19) T. Takahashi, B. Jeong, M. Okawa, A. Akaishi, T. Asai, N. Katayama, M. Akioka, N. Yoshimura, M. Toyoshima, R. Miura, and N. Kadowaki, “Disaster satellite communication experiments using WINDS and wireless mesh network,” 16th International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communications(WPMC2013), Atlantic city, U.S., June 2013.

(平成29年2月24日受付 平成29年3月27日最終受付)

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()() (じゅん)(いち) (正員)

 平16東工大・工・情報卒.平18同大学院修士課程了.同年日本電信電話株式会社入社.以来,衛星通信における変復調技術の研究開発に従事.現在,同社NTTアクセスサービスシステム研究所研究主任.平24年度本会学術奨励賞,平25,27本会衛星通信研究専門委員会衛星通信研究賞各受賞.

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(とよ)(しま) (もり)() (正員:シニア会員)

 平6静岡大大学院修士課程了.同年郵政省通信総合研究所(現情報通信研究機構)入所.以来,衛星通信の研究に従事.現在,同機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター宇宙通信研究室長.博士(工学).平24,26,27本会衛星通信研究専門委員会衛星通信研究賞受賞.著書「地球近傍レーザ通信」.

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()(うら) (あまね) (正員)

 平10東北大大学院博士課程了.同年郵政省通信総合研究所(現情報通信研究機構)入所.以来,衛星通信,アンテナの研究に従事.現在同機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター宇宙通信研究室主任研究員.博士(情報科学).平15年度本会学術奨励賞,平27年度通信ソサイエティ優秀論文賞各受賞.

用 語 解 説

ベントパイプ
衛星通信の中継器の代表的な方式で,地球局からの送信信号の中継器内での再生や交換を行わず,周波数変換と出力の増幅のみを行い送信する.
ゲートウェイ局
衛星通信において,衛星と地上ネットワークの間の関門となる地球局のこと.
光空間通信
光波を用いて光ファイバ中以外の空間を伝送する通信手段であり,自由空間や流体中では伝送媒体中の遮蔽,吸収,散乱,屈折率変動等により信号変動の影響を受ける.
WDM技術
光通信において,波長の異なる複数の光信号を重ねて多重化することにより,大容量通信を行う波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing)技術のこと.
低軌道周回衛星システム
高度が約700~2,000kmと低い低高度軌道(LEO)を周回する通信衛星システムで,全地球をカバーでき,通信の遅延が少ない.例としてイリジウムが運用されている.


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