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本会信越支部は,長野県と新潟県の2県から成る組織で約450名の会員から構成されている.北陸新幹線のおかげで,長野は,富山,金沢とは近くなった一方で,新潟とは隣県ではあるものの,それほど交通の便が良いわけではない.また,この地域は学会によって所属支部が変わってくる.例えば,情報処理学会では長野県は東海支部に所属しているが,新潟県は関東と同じでどの支部にも所属していない.
さて,本会創立100周年記念ということで,昨年,信越支部でも「イノベーションによって地域でどのような産業が興るか」というテーマで記念フォーラムを行った.Society5.0におけるIoT,AI,ビッグデータなどのイノベーションが地域にどのような産業を興すのだろうか.技術革新の速さは目を見張るものがあり,少しでも油断すると置いていかれる.信越地区にも多くの中小企業があり,ICTによるイノベーションの波が押し寄せてきている.イノベーションに対応できる人材は重要であるが,地域の企業からは人材不足の話も聞く.毎年支部大会を開催し,200件前後の発表が行われるが,そのほとんどが大学・高専からの発表である.学会の研究会の中でも支部大会は比較的敷居の低い大会だと思われるので,多くの地元企業に参加して頂き,地域の産業に貢献できればいいのではないかと思う.学生の発表が多数を占めることもあり,新たな人材の発掘につながるかもしれない.
新たな産業を興すためには,人材育成も重要な課題である.信越地域のつながりで見ると,歴代の偉人では佐久間象山と小林虎三郎が思い浮かぶ.佐久間象山は幕末の英傑で松代藩(長野市)出身である.いち早く技術革新の重要性を認識し,日本最初の電気通信実験を行ったと言われており,長野市松代町には日本電信発祥の碑がある.その門下生である小林虎三郎は長岡藩の米百俵の話で有名である.藩救済のために贈られた米を教育のために投資し,人材育成に貢献し,有用な人材を輩出した.どちらも財政がひっ迫する中,未来を見詰め,教育・研究の重要性を説き,行動した.
地元の高等学校のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業の運営指導委員をやらせて頂いてる関係で,この夏は生徒の研究発表全国大会に参加した.研究内容は,例年理科が多く数学は少ないようだが,今年は数学の発表が増えたようである.新たな学習指導要領では,プログラミング教育が小学校から導入され,高等学校でもアルゴリズムなど情報科目が必修となり,今後SSH活動でも情報に関連するテーマがもっと増えるかもしれない.研究内容は,生徒自身の素朴な疑問や気付きから発生したものも多く,主体的に取り組んでいる姿が印象的であった.このような人材が,将来,日本の科学技術を支えるだけでなく,地方創成を支えて活躍することを期待したい.
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