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マイクロ波・ミリ波フォトニクス技術の新展開
小特集 3.
滑走路異物検知用
光ファイバ接続ミリ波レーダシステム
Millimeter Wave Radar System Connected by Optical Fiber for Runway Obstacle Detection
abstract
ミリ波帯レーダは車載利用では実用化されているが,空港滑走路や線路等,広いエリアをカバーする必要がある重要インフラの監視には,カバーエリアと検知精度の両立が困難であるため,実用に至っていない.そこで,広大な空港の滑走路を監視するため,大気減衰の少ない90GHz帯のミリ波とRoF技術の組合せにより,高い空間分解能で広いカバーエリアを実現できるシステムの検討を進めている.本稿では,システム開発の背景,システムの構成,空港滑走路での検知評価試験の概要などを報告する.
キーワード:ミリ波レーダ,光ファイバ無線,滑走路異物検知
2000年に仏国シャルルドゴール空港で発生したコンコルドの事故(1)以来,滑走路等上の異物(FOD)は非常に重要な空港安全の課題の一つとして認識が高まっている.また,バードストライクなどの突発的な事象は,FODの除去や滑走路の安全確認までに多大な手間と点検時間を発生させることになる.こうした事態は,航空機の離着陸を制限することから,空港の処理能力や運用効率を低下させる重大な要因となっている.このような背景の下,滑走路の状態を監視するシステムへの要望が高まり,世界的に様々なFOD検知システムが提案されている.FOD検知システムの性能は滑走路の安全性に関わる重要な設備であるため,米国連邦航空局(FAA)のアドバイザリーサーキュラー(AC)(2)や,欧州航空機器機関(EUROCAE)の最低航空システム性能規格(MASPS)(3)等にて,性能規格が定められている.FOD検知システムのセンサとして,ミリ波レーダは微小な金属製FODを検知するため有望であるが(4),(5),FODの検知精度や測定に掛かる時間を短縮する,一つのセンサで監視できる範囲を広げる等の要望があった(6).
当研究所では,空港運用者のニーズを踏まえ,単に異物の有無による警報を発出するだけでなく,その外形や特徴が認識可能な滑走路異物監視システムに関する研究を行っている.複数のミリ波レーダから構成されるレーダネットワークと超高感度ITVカメラネットワークによるハイブリッド異物センサを用いて,異物検知だけでなく,センサ情報からより確度の高い警報を生成するための技術を開発している.
本稿では,ハイブリッド異物センサシステムを構築するミリ波レーダを,光ファイバ無線を用いてネットワーク化した技術について紹介する.また,レーダと高感度カメラとを連接させ,成田空港にて実施した異物の検知性能試験を行った結果について紹介する.
滑走路などの広大な監視範囲をミリ波レーダで常時監視し,異物の発生をとらえ,その異物の形状が認識できるよう,自動的にその映像を表示するシステムを構築する.図1にシステムの概念図を示す.
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