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グローバル科学社会シリーズ──インド編──
小特集 1.
インドの科学技術情勢
――IT人材育成を中心に――
Science, Technology and Innovation Trend in India: Human Resource Development in Information Technology
abstract
近年,欧米企業でインド人材の活躍が目立つなど,インドは多くの優秀な人材を輩出している.本稿ではインドで優秀な人材が生まれる背景としてインド工科大学(IITs)の事例を中心に記述しており,特に寮での生活や社会とのつながりを意識した活動による影響について言及している.その一方で,インドにはインフラの未整備の問題等の課題も残されていることを指摘した上で,バンガロールを中心に発展するIT分野を含めたインドの経済や社会の現状についても整理している.
キーワード:IT人材育成,インド工科大学,IT産業,バンガロール
昨今,GoogleのCEOにインド人のピチャイ氏が就任し,MicrosoftのCEOにナデラ氏が就任するなど,欧米の著名な企業のトップにインド人が就任することが増えている.このような形でインド人材は注目されており,経済も成長しつつあるが,インドという国全体を見てみると,まだ発展途上国の段階であると言える.
更にインド政府は2016年11月に,ブラックマネー対策として突如として高額紙幣(1,000ルピーと500ルピー)の廃止に踏み切り,新たに2,000ルピー(後に新500ルピー)紙幣を発行した.国民に銀行口座を持たせタンス預金による不正な現金取引を防ぎ,お金の流れをつかむことで脱税を防ぐことや偽札の撲滅が目的とはいえ,インド国内は大混乱に陥った.その一方で,インド社会のキャッシュレス化が一気に加速することが期待されている点は見逃せない.このように日本では到底考えられないような大胆な政策を実施してしまうのもインドの特徴であろう.
そしてインドという国を見る場合,留意しなければならないこととしては,29州と七つの連邦直轄領で構成されていることであり,それぞれ言語,人種や文化に違いがあったり,税制度に違いがあったりと,まるで別の国であるかのような印象すらある.つまり日本から見るとインドは一つの国に見えるが,実際には29の国が集まった連合国家のようなイメージの方が近く,EUのようなイメージの方が近いのかもしれない.
宗教については,2011年の国勢調査によれば,人口のうちヒンドゥ教徒が8割近くを占め,イスラム教徒は15%弱を占めるにすぎないが,インドは人口が12億人を超えており,そのうちの15%といっても2億人弱のイスラム教徒がいることになる.そのためインドネシアやパキスタンに次いでイスラム教徒が多い国であるとも言われている.
2013年の国連統計によれば,インドの人口は約12億5,214万人であり世界第2位である.日本と比べると10倍近い大きさであるが,それに加えて注目すべきなのが,若者の人口が多いことである.インドでは0~29歳の人口が全体に占める割合は約56%であり,日本が約28%であることから考えるとかなり大きな割合であると言える.(図1,2(1).横軸が約10倍違うことに留意する必要がある.)
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