小特集 4-6 無線電力伝送システムとその動向

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次世代を切り開く情報通信エネルギー技術
4.様々な情報通信エネルギー技術の動向

小特集 4-6

無線電力伝送システムとその動向

Wireless Power Transfer System and Its Trends

関屋大雄

関屋大雄 正員:シニア会員 千葉大学大学院工学研究院

Hiroo SEKIYA, Senior Member (Graduate School of Engineering, Chiba University, Chiba-shi, 263-8522 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.4 pp.382-386 2018年4月

©電子情報通信学会2018

abstract

 世の中の多くのものが「無線化」される中,残された有線システムが電力の送配電である.その中で,「置くだけ充電」に代表されるように,無線電力伝送が様々な形で社会に浸透し始めている.通信の例を見ても明らかなように,無線化による機器のモビリティの獲得は,様々なアプリケーションを生むきっかけとなり,社会構造を変革させるほどのインパクトを与え得る.本稿では無線電力伝送について,その伝送方式及び現在検討されているアプリケーション例を幾つか紹介する.その上で無線電力伝送が真に社会に受け入れられ,定着するために必要と思われる課題を指摘する.本稿を通じて無線電力伝送が紡ぎ出す未来を少しでもイメージして頂ければ幸いである.

キーワード:無線電力伝送,送電方式,ワイヤレス給電,走行中給電,宇宙太陽光発電

1.は じ め に

 電力を無線で送ることを可能とする無線電力伝送(Wireless Power Transfer)は,スマートフォン向け「置くだけ充電」の普及により,一般の人にも多く知られるところになった.通信システムを例にとっても明らかなように,無線化によるモビリティの獲得は電子機器の利便性を格段に向上させる.送配電は最後まで残った有線システムであり,その無線化は通信の無線化と同様に社会に大きな影響を与えるのではと期待している.

 無線電力伝送は約120年前のニコラ・テスラによる「地球システム」にその原型を見ることができる.その後,身近なところでは電動歯ブラシの非接触充電など,幾つかの実用例が現れたが大きな進展を見ることはなかった.そこにブレークスルーを与えたのは,2007年に報告されたマサチューセッツ工科大学による,送電距離2.1m,電力60Wの伝送実験成功(1)であることは衆目一致するところであろう.この発表をきっかけとして,国内外で無線電力伝送関連の研究開発が一気に盛り上がり,本日に至っている.無線電力伝送と一口に言っても,その送電方法は複数存在する.それぞれに送電の物理的メカニズムから違うため,異なる技術と見る方が自然である.また同じ送電方法であっても,送電距離,電力レベルによって多様な応用や技術的課題が存在する.

 本稿では,存在が一般的に広く認知され始め,市場が大きく成長しようとしている今,改めて「無線電力伝送」の諸技術について整理する.無線電力伝送について,その伝送方式についてまとめ,現在検討されているアプリケーションを幾つか紹介する.その上で今後の課題を述べたい.

2.無線電力伝送における伝送方式

 「無線電力伝送」は広義な技術用語であり,伝送距離やその目的により「無線(Wireless)」を「非接触(Contactless)」と表現し,「電力伝送」を「給電(Power Supply)」,「充電(Charging)」と表現することもある.また,無線電力伝送はその伝送方式でグループ化することもできる.図1に無線電力伝送における伝送方式とその特徴を示す.無線電力伝送は図1のように四つの方式に大別されることが多い(2)


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