特集 2-5 障害のある方の社会参加を支えるICT

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Vol.101 No.5 (2018/5) 目次へ

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2. 働き方改革を支えるICT 
【多様な働き方を支えるICT】

特集 2-5

障害のある方の社会参加を支えるICT

Enabling Persons with Disabilities through ICTs: A Study Focusing on a Universal Approach

小林有里

小林有里 日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所

Yuri KOBAYASHI, Nonmember (IBM Research-Tokyo, IBM Japan, Ltd., Tokyo, 103-8510 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.5 pp.481-485 2018年5月

©電子情報通信学会2018

abstract

 障害者が社会に参加して活躍するためには,今後も従来のアプローチに基づいて,個々人の障害特性と要望に応じた専用の支援機器を活用できるようにすることは重要である.同時に,例えば企業が全社的な業務効率改善や生産性向上のために導入する一般ユーザ向けのICTサービスをそのまま利活用することで障害者の就労支援に寄与できるのであれば,こうしたユニバーサルなアプローチは投資対効果,実現性,持続性の観点から,今後の障害者の社会参加を後押しするものとなることが期待される.

キーワード:障害者,就労支援,ICT,モバイル,アクセシビリティ

1.は じ め に

 平成28年4月から施行された「改正障害者雇用促進法」では,雇用に係る障害を理由とした差別の禁止や合理的配慮の提供義務など,障害者の雇用における平等の確保に向けた一層の努力が事業主に求められるようになった.また,平成30年4月には精神障害者(発達障害・てんかん含む)が法定雇用率の算定対象に加えられたことにより,従業員に占める障害者の割合の基準が引き上げられている.こうした背景を踏まえて,事業主は障害者の積極的な採用はもちろん,定着,昇進に向けた支援方法の模索を迫られている.こうした中,ある調査ではモバイル端末を活用したWebサービスの技術こそ,障害者の社会参加に最も寄与する技術であるとして注目を集めている(1).障害特性に応じた支援機器の活用に加えて,世の中一般に普及し始めているモバイルやWebベースの情報通信技術(ICT)によって支えられた障害者の社会参画への期待が高まっている(2)

2.就労支援機器を活用する
「従来のアプローチ」

 従来の障害者雇用におけるICT利用は,視覚障害者向けのスクリーンリーダや点字ディスプレイ,上肢障害者向けのジョイスティックやトラックボールに象徴される「就労支援機器」の利活用であった.これらは障害者の特性に応じて業務を遂行する際の制約をできるだけ取り除く,または「代替手段を提供する」ことを目的として設計・運用されている.障害者を雇用する事業主や事業主団体は,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から,無料(原則6か月以内)でこうした支援機器を借りることも可能である.しかし6か月を過ぎて恒久的に必要と判断された支援機器については企業側が負担し購入・導入・運用することが求められるため,こうした特定の障害に特化して提供されているICTは拡張性(スケーラビリティ)の限界とそれに伴うコストの課題が指摘されてきた.本稿では,こうした障害特性に応じて設計された支援機器を必要に応じて対象者に適用することを「従来のアプローチ」として定義している.


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