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2. 働き方改革を支えるICT
【生産性向上を支えるICT】
特集 2-7
遠隔会議で高臨場感を実現するAV及びネットワーク処理技術
Audio, Video and Network Processing Technologies for Immersive Video Conference
abstract
昨今,働き方改革の取組みが求められる中,ビデオ会議の導入が増えている.これは,ビデオ会議の大幅な品質向上に加え,広帯域インターネット接続サービスが普及し,通信料を気にせず安価に利用できるようになったことが大きい.しかし,一般に安価な接続サービスは帯域保証のないベストエフォート形であるため,ネットワーク混雑時には音切れや映像の乱れが発生するという課題があった.本稿では,ベストエフォート形のインターネットにおいても,高い臨場感を実現するための音声,映像及びネットワーク処理技術について解説する.
キーワード:テレビ会議,エコーキャンセラ,コーデック,帯域推定,QoS
働き方改革の一環として,会議や出張を見直し在宅勤務やテレワークを取り入れる動きに伴い,遠隔地とのコミュニケーションにビデオ会議の導入が増えている.
ところが,安価で帯域保証のないインターネットを用いると,データ損失によりビデオ会議の映像音声が乱れる課題があった.これに対し,回線状況に応じて動的に映像音声の符号化・通信制御を行うことで,臨場感のある自然な会話が可能になっている.本稿では,この安定したビデオ会議を支える技術について解説する.
ビデオ会議には,PCなどをクラウド経由で接続するWeb会議と,ビデオ会議専用端末を用いるものがある.前者は自席や外出先から一人で手軽に参加できるのに対し,後者は何人かで部屋に集まり遠隔地と臨場感を共有できる.
パナソニックでは後者として,高いAV品質,安定した通信,簡単な接続を特徴とした「HD映像コミュニケーションユニット(HDコム)」を市場展開しており,モバイル無線網(WiMAXやLTE)利用時でも安定した通信を実現している.
以下では,本システムに搭載している技術を中心に,ビデオ会議で必要なキー技術について紹介する.
臨場感のある遠隔コミュニケーションを実現する上で重要な音響技術として,音響エコーキャンセラと音声コーデックがある.以下,本技術について紹介する.
音声通話システムを構成するには,双方の地点で,音声を伝えるためのマイクと,相手地点からの音声を聞くためのスピーカが必要である.しかし,このようにマイクとスピーカを設置すると,一方の音声が相手地点のスピーカで拡声され,その音をマイクで集音し,元の地点のスピーカで拡声されることになる(山彦現象).このようにスピーカ音をマイクで集音した音声を音響エコーと呼び,コミュニケーションの阻害要因となる(図1(a)).この音響エコーを除去する技術を音響エコーキャンセラと呼び(図1(b)),これまでに数多くの研究がなされている(1).
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