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解説
次世代SIMの活用可能性
The Potential of Next Generation SIM
abstract
2016年3月に日本政府が策定した新たな観光ビジョンでとりわけ注目を集めたのは,訪日外国人旅行者数の政府目標を大幅に前倒ししたことである.訪日外国人旅行者の観光満足度向上のためには,場所に応じた情報提供技術や翻訳技術などの活用が必要となるが,ネットワークの環境整備は重要な課題の一つとなっている.そうした中,現在注目されているのが携帯電話網とSIM(Subscriber Identify Module)の活用である.SIMはスマートフォンや携帯電話が通信するために電話番号等の情報が書き込まれたカードであるが,本稿ではSIMカードの機能を多面的に捉え,活用され始めた事例について紹介する.
キーワード:ポータブルSIM,訪日外国人観光客,スマートフォン
日本政府は,観光先進国への新たな国づくりに向け,2016年3月に新たな観光ビジョンを策定している(1).とりわけ注目を集めたのは,訪日外国人旅行者数の政府目標を大幅に前倒ししたことである.訪日外国人旅行者の観光満足度向上のためには,現地での消費行動を促進するための場所に応じた情報提供技術や,現地でのコミュニケーションを円滑化するための翻訳技術など,様々なICT技術の活用が必要となるが,ネットワークの環境整備は重要な課題の一つである.
観光庁では「Japan. Free Wi-Fi」の普及促進を図る施策等(2)を通じ,日本全国いつでもどこでも利用できる通信環境の整備に取り組んでいる.しかし,大都市圏ならまだしも,とりわけ中核都市等では,面的なカバーをどこまですればよいのか,Wi-Fiアクセスポイントのメンテナンスコストを中長期的に誰が負担していくべきなのか等,依然として様々な課題が残されている.
そうした中,注目されているのがSIMの活用である.SIMはスマートフォンや携帯電話が通信するために電話番号等の情報が書き込まれたカードであるが,最近では各地の空港等で自動販売機を使ったプリペイドSIMを販売するようなサービスも出始めている.
そんな中,SIMカードの機能を多面的に捉え,活用してみようという取組みがなされつつある.2014年6月,NTTドコモは世界で初めてSIMベースの小形認証デバイス「ポータブルSIM」を開発した.「ポータブルSIM」は携帯電話のSIM(注1)を内蔵しており,スマートフォン・タブレットと接続することで,回線認証を行い,電話やメールなどの携帯電話機能が利用できるようになる機能を具備している.これにより,SIMカードが入っていない端末,つまりは訪日外国人旅行客が用いる携帯端末でも日本国内でネットワーク接続が可能となる(3).訪日外国人旅行客に貸し出す場所の問題などサービス運用上の課題はある一方で,国内観光の環境整備の助けの一つになる可能性がある.本稿では,NTTドコモの開発者のインタビューを通して把握できた取組みについて少し触れてみたい.
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