解説 ワイヤレスグリッド技術の新展開

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Vol.101 No.7 (2018/7) 目次へ

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解説

ワイヤレスグリッド技術の新展開

Novel Development Activities of the Wireless-grid Technology

児島史秀

児島史秀 正員 国立研究開発法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター

Fumihide KOJIMA, Member (Wireless Networks Research Center, The National Institute of Information and Communications Technology, Yokosuka-shi, 239-0847 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.7 pp.667-672 2018年7月

©電子情報通信学会2018

abstract

 本稿では,複数の無線端末が網目(グリッド)状のトポロジーで動作するワイヤレスグリッド構造の一形態として,スリープ期間を活用し端末同士で通信の中継を行う,省電力マルチホップ通信方式の研究開発を述べる.本方式では,各端末が時間同期を取りながら間欠的待受けを行う省電力スーパフレームによりトポロジー全体の消費電力が軽減され,単3形乾電池3本程度で10年以上の動作が可能である.更に,農業分野における水管理業務への提案方式適用について検討し,圃場水位等の情報の省電力センシングと,ポンプ等の農業用機器の低遅延制御の両立動作を実証した.

キーワード:SUN,省電力,MAC,農業

1.は じ め に

 2020年における導入が見込まれている次世代陸上移動通信システム(5G)では,従来の10倍以上に相当する10Gbit/s以上の高速伝送特性だけでなく,局面に応じて低遅延特性,多数接続特性等の要件が複合して要求される状況への対応可能性が特徴とされている(1).5Gは,これまでに存在しない多様な無線通信サービスの実現を示唆するものであるが,中でも最も高い需要が予想されるサービスの一つは,‘もの’同士の無線通信を想定するInternet of Things(IoT)分野におけるものであると考えられる.

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT: National institute of Information and Communications Technology)では,IoT分野において効果が期待される,複数の無線端末同士が網目(グリッド)状の接続トポロジーを構成し動作するワイヤレスグリッド構造の有効利用,及び社会展開について研究開発を行っている.本稿では,ワイヤレスグリッド構造を実現するための有望な技術の一つとして,省電力マルチホップ通信技術を提案し,基本動作性能の評価と,農業分野への適用実証について述べる.

2.ワイヤレスグリッド技術の概要

 本稿では,ワイヤレスグリッド構造の最も典型的な適用例の一つとして,世界的に注目を集めると同時に国際標準化も行われている無線システムであるスマートユーティリティネットワーク(SUN: Smart Utility Network)(2),(3)を挙げ,同システムの実現に必要とされる技術仕様について考察を行う.

2.1 システム概要

 SUNの概要を図1に示す.SUNは,無線機を搭載したスマートメータにより形成され,メータ自動検針,制御等を実現する無線システムである.図1に示すとおり,SUNはスマートメータシステムのみならず,センサネットワーク等の多様な用途への有効性が予想されている.

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