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小特集
高臨場感映像・音響が創り出す新たなユーザ体験の評価技術
編集チームリーダー 菊間一宏
2018年12月,現在の地上波デジタル放送で採用されているハイビジョン映像の約16倍の解像度を持つ8K映像の実用放送が開始される.超高精細映像が注目を浴びがちであるが,音響も22.2マルチチャネル方式の導入で臨場感を高めており,2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックでは,多くの競技が臨場感あふれる映像・音響で観戦できることが今から楽しみである.
「高臨場感」を目指した研究開発は,エレクトロニクス技術やメディア信号処理技術などの発展とともに常に行われてきた.目指す臨場感は時代とともに高度化し,現在では「実際にその場に居るような感じ」は視聴覚では随分と再現されてきているのではないだろうか.近年では,本物に近付けるという意味での臨場感だけでなく,情報を誇張/加工することにより,従来の「臨場感」を超越した「超臨場感」を得る技術にも注目が集まっている.
これらの高臨場感映像・音響技術を用いたシステム/サービスを実現する際,人間が感じる臨場感などの高次の感覚を定量的に捉え,効果的・効率的なサービス設計に資するユーザ体感品質(QoE: Quality of Experience)/ユーザエクスペリエンス(UX: User eXperience)の評価技術が重要である.本小特集では,高臨場感映像・音響システム/サービスの将来像と,今後必要となるQoE/UXの評価技術の最新研究動向について紹介する.
まず,高臨場感映像・音響に対するQoE/UX評価に先立ち,第1章では高臨場感・超臨場感通信サービスに関するこれまでの取組みと将来像を,廣瀬通孝氏,榎並和雅氏に紹介頂く.第2章では髙田英明氏に高臨場感コミュニケーションの最新技術動向と臨場感評価に向けた課題について,第3章では鈴木陽一氏,トレビーニョ ホルヘ氏,坂本修一氏に高臨場感空間音響技術の最新動向と将来展望を紹介頂く.また,第4章では行場次朗氏に,感性心理学的な観点から本物らしさに対応する感性と臨場感の心的特性について議論頂く.
次に,高臨場感映像・音響に対するQoE/UX評価技術として,第5章では大出訓史氏,小野一穂氏に三次元マルチチャネル音響方式の要求条件と基本的な評価項目と評価法について解説頂く.第6章では谷口高士氏に音響コンテンツのマルチチャネル再生における特徴量を用いたユーザの聴覚的臨場感の評価モデルについて紹介頂く.第7章では江本正喜氏に高臨場感映像システムに対する臨場感評価に加え,映像酔いや動画像品質に対する評価事例などを紹介頂く.
臨場感などの高次の感性を対象とした評価では,顕在化している意識を心理評価により定量化することに加え,人間の無意識な反応を捉えていくことも重要である.第8章では山田光穗氏に眼球/頭部運動を活用した高臨場感映像の評価事例について紹介頂く.第9章では安藤広志氏に高臨場感映像の心理・脳活動・行動計測に基づく解析・評価事例を紹介頂く.また,高臨場感の生体安全性の観点からの評価も重要となり,第10章では氏家弘裕氏,渡邊 洋氏に映像酔いやバーチャルリアリティ酔いの生体影響計測法とそれらの軽減指針について解説頂く.
最後に,多忙な中,執筆の御尽力を頂いた執筆者の皆様,本小特集の企画に多大な協力を頂いたコミュニケーションクオリティ研究専門委員会委員長の広島工業大学 林 孝典氏,並びに学会事務局の方々に深く感謝する.
小特集編集チーム
林 孝典 菊間 一宏 小泉 健吾 今村浩一郎 川喜田佑介 髙橋 清隆 豊田 雅宏 芝 宏礼 中台 光洋 本間 寛明 大須賀 徹 小林 崇春 齋藤 恵 菅原 真司 杦浦 維勝 西本 研悟 増野 淳 岡田 啓 川西 直
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